1 / 3
1
しおりを挟む今日は両親に決められた婚約者と初めての顔合わせだ。
この日のためにおろした服を着て、婚約者を出迎える。
「お初お目にかかります。ファリアス侯爵の娘のエミュリエルと申します」
「コロレンコ伯ハビエルです。どうぞよろしくお願いいたします」
ハビエルが頭を下げる。彼は艷やかな黒髪、白い肌と切れ長の瞳を持つ美男だ。
美しい人だなと私はつい見惚れてしまった。
「僕の顔に何かついていますか?」
「はっ、いえ、何もついてませんよっ!」
私は顔の前でバタバタと手を振って否定した。ぼーっと見つめてしまい、彼に失礼なことをしちゃった。と一人で反省。
その後、ハビエルと私、私の両親で食事をした。両親も交えてハビエルともお喋りした。
「ご両親と仲が良いのですね。羨ましいです」
食事を終えて、ハビエルが言った。
ハビエルの両親は他界しており、両親の遺した屋敷で今も暮らしているという。両親思いなのだなと思った。
「結婚したら、エミュリエルさんもそこに住んでいただきたい」
「はい。ぜひとも」
私が返したら、ハビエルは笑った。綺麗な笑顔だった。
結婚式は数カ月後。
それまで私は花嫁修業をする。家事は苦手だけれど、ハビエルのためだと思って頑張った。
「お裁縫が本当に苦手で」
「そうなんだ」
婚約してから一ヶ月。
私はハビエルとレストランに来ていた。彼に誘われて、食事をすることになったのだ。
「苦手な物を無理に頑張ろうとしなくてもいいんだよ。うちには家政婦がいる。苦手なものは人に頼んだらいいさ」
いつの間にかハビエルは私に敬語を使わなくてなっていた。
「そういうわけにはいきません!それに私はできない物こそできるようになりたいんです!」
「負けず嫌いなんだね」
「駄目ですか?」
「駄目じゃないよ。駄目じゃない」
ハビエルはひらひらと手を振った。
私としては、頑張ってねと言ってもらいたいのに。
私は初めて顔合わせをした日から、ハビエルのことをいつも考えるようになっていた。これが恋だと認めるのに時間はそれほどかからなかった。
好きな人に頑張ってねと応援してもらえたら、何だってできる気がするのに。
ハビエルは何も言わず、お酒を一口飲んだ。
食べ終わって、レストランを出る。
ハビエルは私を家まで送ってくれた。
◆
私にはメリメという友人がいる。彼女は公爵令嬢で、明るく美人な女の子。
彼女に婚約したことを報告すると。
「エミュリエルの婚約者?お会いしてみたいわ」
「それなら、紹介するわ」
ということで、三人で会うことになった。
三人の都合がつく日に、私の家にハビエルとメリメを呼んだ。
私はハビエルにメリメを紹介した。
メリメは初対面だというのにハビエルに臆することなく、話しかける。会話の中心はメリメだった。
話すだけ話して、ハビエルはメリメとともに私の家から帰っていった。
メリメはどんな人とでも仲良くなれるのだろうなと素直に感心した私はなんと愚かだったんだろう。
しばらく経ったある日、ハビエルとメリメが私の家に来た。
「あのね、エミュリエル。あなたとハビエルの婚約を破棄してもらいたいの」
メリメの言葉に私は驚いた。
「婚約破棄?何故?」
「ハビエルはね、私と結婚したいんですって」
「ハビエル様、本当なのですか?」
ハビエルの方を見る。
「ああ」
彼は頷いただけだった。
「あなたは私と結婚したいと思ってくれていたのではないのですか?」
「婚約者だからと思って優しく接していたが、あなた個人にそのような感情を持ったことはない」
そんなにはっきり言わなくてもいいんじゃないか。
こうして、私とハビエルの婚約は破棄になった。
好きだったのになと切ない気持ちを抱えて、早二ヶ月。
ハビエルとメリメが婚約したと友人から聞いた。
そうなのかと落胆した。
だけど、前を向かなくちゃいけない。
そんな時、お見合いの話が舞い込んできた。
相手は侯爵令息。私より二歳年上だそうだ。
お見合い当日。
相手と初めて対面した。
彼の名前はラルフ。
中性的な見た目をした綺麗な男性だった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
44
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる