のんびり実話怪談

二階堂まりい

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幽霊マンション動画の話

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 断っておくが、筆者はスピリチュアル的なキラキラした話は好まない。
 ただ、自分と相性の悪い土地は本能で分かる。
 

 経験がある人も居るのではないだろうか。
 建物や土地を前にした時、いくら陽に照らされていても、賑わっていても、何かが足を竦ませる。
 そんな経験だ。
 

 面白いことに、この直感が画面越しにも発揮されたこともある。
 今回の話は、その一つ。


 お笑い芸人の方が「幽霊が出るマンション」を写真で紹介する、という動画を見ていた時のこと。
 マンション内の施設が順に映されていくのを、のんびりと眺めていた。
 外観、駐輪場、吹き抜け……。

 突然「火葬炉の扉」が映り、筆者はぎょっとしてしまった。
 マンションに火葬炉があるはずがない。

「このエレベーター」という言葉を聞いて、火葬炉に見えた物はエレベーターだったと認識出来たが、やはり違和感を感じた。
 生身の人間が現役で使っている雰囲気ではないのだ。


 筆者はホラーが平気なので、気の持ちようで恐ろしく見えたという訳ではない。
 恐怖というよりは嫌悪感に近い感情が湧いた。

 その後すぐ、「幽霊マンションのことを芸人仲間に話したら、彼がマンションに魅入られてしまった。
 エレベーターで上階に行って、柵の外に身を乗り出してからやっと正気に戻ったらしい」とお笑い芸人は語った。

 そこでやっと気付いた。
 飛び降りてしまう人を、このエレベーターは「死ねる高さ」へ運ぶ。
 これは一種の棺なのだ。
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