ヒロインの、はずですが?

おりのめぐむ

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王立貴族学院 二年目

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「シャルロットさん、参りましょう」

 新入生の交流会が終わった翌日、わたしとアイネさんは図書館へ向かった。
 今日から本格的に授業が始まって通常日程になってからの放課後。
 結局わたしはまた司書係の仕事を継続することになっている。
 もともと代理で入ったこの係、その対象がもう卒業してからの延長戦。
 司書の先生からは今年度も是非よろしくねとニコリと微笑まれたが故、断れずに至る。
 自主性を重んじるから学年問わず誰でも引き受けられるけどあくまでボランティアという括り。
 もちろん用事がある時はそっち優先をしていいという緩い縛りの拘束。
 嫌なら嫌で断れるけども何となくズルズルとやってる形で過ぎていっただけ。
 といっても今後の学習面を考えてここにいて合間にでもちまちま勉強した方がいいのではと判断した結果だし。
 で、そういうつもりで元々今日から係として図書館に行くはずだったけど。

「シャルロットさん、私も司書係に立候補しようと思いますの」

 今朝、登校した途端、眼鏡を光らせながら決意したようにアイネさんがやってきた。
 司書係は司書の先生からの信頼と任命がないとなれない。
 わたしの場合は直のスカウトで即採用って形だったけど、真面目なアイネさんほど信頼される生徒はいないと思うから大歓迎と予測がつく。
 でも一応、わたしからの紹介って態が必要なんだよね。お貴族様ルールとして。

「大歓迎よ、グレイプさん。この書類に目を通して明日からお願いできるかしら」

「セレッサ先生、よろしければ本日から下見を兼ねて見学してもよろしいでしょうか?」

「ふふ、さすがグレイプさんらしいわね。ラペーシュさん、よければ先輩として見本をみせてあげてね」

 嘘っ。たった今、衝撃の事実が発覚!!!

「えええ~~~~っ!! わたし、今、先生の名前知りました!!!」

「あら、自己紹介してなかったかしら? ナタリー・セレッサというのよ」

 いつも黄色味掛かった髪をひっ詰めて黄緑色の瞳を持つ先生は驚いた顔を見せた。
 そう、スカウトされた時期は宰相くんのことに囚われていた頃だし上の空。
 それに約半年の間、何となく先生って敬称だけで済ませてたのもある。

「まあ、シャルロットさん。セレッサ先生のお名前をご存じなかったなんて失礼ですわ。私たちは学園でも社交を学んでおかないといけない身ですのよ。昨日の交流会でも必要不可欠でしたでしょう?」

 生真面目モードのアイネさんがキリリと言い切る。
 確かにそう。でもトマス先輩や建物内のことばかりで先生たちのことなんて頭になかった。

「シャルロットさんはいつも詰めが甘いのですから気を付けていただかないと。……けれど、これからも私が時折確認しておかないと不安ですわね」

「……ふふ、グレイプさんとラペーシュさんはとても仲良しなようね。それじゃあ、そろそろ混雑してきたようだし、あとはお願いね」

 先生はそう言うと奥の部屋から退出するよう促した。出てみれば列を成している。
 慌てて一人で対応していた司書係の令嬢と合流し、傍らにアイネさんを座らせて仕事を始めたのだった。

「お先に失礼しますわね、ごきげんよう」

 係の仕事もひと段落し、人が疎らになったこともあり、司書係の令嬢が帰っていった。
 そばにいたアイネさんは作業を把握したらしく、退出した令嬢の席へと移動し、早速仕事を引き受けていた。
 さすが優秀、問題ないとわたしはそっちを任せて返却された本を戻すことにした。
 春休み中は貸し出しがなかった分、ここ数日分の量で大したことが無い程度。
 あっという間に終わってカウンターへ戻ってきた時、濃紫色の髪を一つに纏めた後ろ姿がある!

「寄付本ですか? ありがとうございます!」

 山積みに摘まれた書籍の山を見て宰相くんに声をかける。

「アイネさん、もう教えることないし、帰っても大丈夫ですよ?」

 いい雰囲気になりつつある二人の様子を見てにっこりと微笑む。
 躊躇するアイネさんと戸惑う宰相くんへ強引に切り出す。
 ぎこちなく帰っていく二人を見送った後、奥の部屋にいる先生に寄付本処理の依頼した。

「これ、並び終えたら帰りますね!」

 貸し出し処理された書籍を受け取るとそう声をかけて奥の部屋から退出した後。

「す、すまないっ!! これらを返却したいんだが!!!」

 慌てた様子で分厚い本を数冊抱えてやってきたお貴族子息様!
 館内は既にひと気がなく、もう帰れると思った矢先になんてこった。
 セレッサ先生の負担を減らすためにも仕方なく返却処理を行い、あとは元に戻す作業だけ。
 さっさと終わらせて帰ろうと本を持って棚の方へと移動した。
 ところがそのジャンルがマニアックすぎたため、探すのに一苦労。
 ようやく戻せてホッとした矢先、ふと目に入った光景。
 奥の部屋へとノックするスーツを着た男性の後ろ姿。
 ドアを開け、その部屋へと入っていったのはなんとキルシェ先生だった。
 何か頼んでいた本が届いてたのかな?
 ……その時はそう思っただけだった。
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