ヒロインの、はずですが?

おりのめぐむ

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王立貴族学院 二年目

12

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 あの騒動から一夜明け、わたしは一人、茶畑に来ている。
 昨日の出来事が嘘のように静けさを取り戻していた。
 そんな中、わたしだけは居残ったのだからやるべきことを果たすまで!
 
 あれからオーラ組の面々は早々に帰宅することになった。

「シャルロットさん、メリッサが騒がせて悪かったわ。許してちょうだい」

 セレーヌさんは直接関係がないのにわたしに謝った。
 確かに気まずい状況になって誰かが切り出さないといけなかったんだよね。
 そこは公爵令嬢の威厳とやらでさすがだなって思う。
 本来なら二日間に渡っての作業工程に付き合ってもらう予定だったんだけど。
 怪我人が出てしまった以上、高位貴族さま方は付き添わせられないと判断して解散。
 といっても足をねん挫したらしいメアリ以外は無傷だったけど。
 メアリを運んだトマス先輩とラフレーズさんを運んだキルシェ先生たちに今回の騒ぎでスリイズ家の代表としてマリアが王都まで付いていくことになって残ったのはソフィアさんとわたし。
 もともとスリイズ領で一泊させてもらうことになっていたからそのまま滞在させてもらった。
 ソフィアさんはこの騒ぎの後始末に追われてバタバタしている。
 そして今に至る訳で。

 倒壊した被覆の箇所は撤去されていて残った箇所でせっせと新芽を摘み始めている。
 昨日摘んだものは酸化しないようにとその日にすぐ蒸して今は乾燥中。
 茶摘みどころじゃなくなったものの、少しとはいえ、摘んだ葉は貴重なもので無駄にしたくなかったもんね。
 手順として蒸す準備はしていたからさっさと実行したのみ。
 量も少ないからあっという間に終わったのもある。
 それからみんなを見送ったり、片付けたりとかしても問題なかったしね。
 蒸し終わったものを乾燥するために広げたものを見てちょっと落ち込んだ。
 摘んだ時は山のように見えても蒸したり乾燥したりするとすごく縮む。
 必死に摘んでたマリアとキルシェ先生のカゴが一番多かったのに何だかな、空しくなったもん。
 撒き散らされた新芽を回収しても大した量じゃなかったから人数の割に見込めなかったし、時間もなかったもんね。
 いや、それすら分かってたはずだけど、もめ事までは想定できなかった、うん。
 だからこれじゃちょっと少ないよなぁって思って摘むことにした。
 まあ、試作的なつもりだったから軽い気持ちの部分もあったけど、あれだけ大げさなことになってしまったからある程度は披露せざるを得ないと思う。
 失敗作だったとしてもそれすら提示しないと納得されない気がするしね。 
 余計なことを考えても仕方ない。黙々と摘みながら無心になるまでだ。


「シャルロットさん、食事よ!」

 ソフィアさんが目の前に現れて我に返る。どうやら昼を過ぎていたらしい。

「何度呼んでも気づかないのだから、全く。グズグズしていると帰れなくなってしまうわ!」

 確かに今日は王都に戻らないといけないんだった。
 ソフィアさんと二人、新芽を蒸している前でサンドイッチを食べる。
 一応、簡易的にテーブルセッティングされてるのが貴族らしいなぁ。
 きっとマリアとだったら敷物をしいて地べたに座って食べてるんだろうなと思いながら。

「……きちんと説明できてるかしら」

 先程から食が進んでなかったソフィアさんがぼそりと呟いた。
 メアリが怪我をしたからその件で向かったマリアのことだと察した。

「キルシェ先生やトマス先輩たちがついてるので大丈夫では?」

「そういえば補習の際もキルシェ先生に迷惑をかけたって。シャルロットさんもその場に居合わせたと聞いてるわ」

 髪の毛の件か。そういえば先生に袖口のこと聞くの忘れてたかも。

「……だから新しいものを贈るよう助言して手配しましたわ。マリアは慌てるところがあるから今回メアリさんのお宅で何事もなければいいけれど。……ここは私が同行した方が良かったのかしら?」

 マリアのドジっ子ぶりを理解しているソフィアさんはブツブツと洩らす。
 初対面での苛烈な雰囲気で物怖じしちゃってたけど、姉思いの妹なんだってよく分かった。
 今回の茶摘みだってソフィアさんのフォローがあってこそ実現できた。
 発端はわたしが言い出したことだったのにみんなに広がってもどうにか開催までこぎつけた。
 最後までわたしの面倒をみたり、マリアの心配までしてお節介焼きなんだね。
 ちょっとした騒動もあったけど何とか治まりをみせてこうやって過ごせてる。
 一番の功労者はソフィアさんなのかもしれないな。

「ソフィアさん、今回、いろいろ助かりました。本当にありがとうございました」

「な、何よ。急にっ」

「いえ、何かきちんとお礼を伝えてなかったなと思いまして」

「べ、別に何も言われる筋合いなんてないから。マリアが心許ないから仕方なくよ」

 プイッと横を向きながらサンドイッチをかじり出す。
 そうしてスリイズ領での時間を終え、乾燥中の茶葉を抱え、王都へと戻っていったのだった。
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