ヒロインの、はずですが?

おりのめぐむ

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王立貴族学院 二年目

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 夕刻、スリイズ領から戻ったわたしをおじいさまが慌てたように出迎えてくれた。
 驚いたことに王城からわたし宛に贈り物が届いたらしい。
 う~ん? メラオン王子ならスリイズ領にいること知ってるのに、何故?
 昨日の今日での出来事なので何かあったのかな? と思いきや、差出人はなんと、フラン王子!
 いやぁ、彼は確か国王様と遊学してたっけ? わたしの事情を知らなくても当然か。
 とはいえ、随分とご無沙汰振りで何の用だろう?

 届けられたものは恭しいまでの豪華な箱と手紙。
 すぐさま手紙を開封してみると綺麗な文字が綴られていた。


 ーーー親愛なるシャル嬢へ

 お元気ですか? 僕は父上と共に諸外国を往来しながら周ってます。
 他国で見つけた珍しいお菓子を共有したくて日持ちするものを用意しました。
 いろいろありますので宜しければご賞味ください。

 昨日からシャル嬢はスリイズ領に居ると兄上から聞きました。
 何か新たなことを始めているらしいとのことで楽しみにしています。
 僕もこの一年間、役目を果たしたいと思いますがやっぱり口寂しくなってます。
 ずっと会えなくてシャル嬢のお菓子が恋しいです。
 ローネからは”どら焼き”を自慢されました。
 それに僕以外、シャル嬢のパンを頂いているとかで悔しい思いをしました。
 また明日から出発するので仕方なく役目を終えるまでは我慢します。
 だからご褒美として僕だけにお菓子を作ってください。約束です。
 その代わり、僕からはお土産をたくさん贈りますね。
 楽しみにしててください。では。

                         フラン・キングマーク


 箱を開けてみればいろいろな変わったお菓子が詰め合わせてあった。
 きっとこれまで訪れた諸外国のものなんだろうな。
 お菓子大好き王子が抜け目なくチェックしているところは感心するけど、それをわざわざわたしにも共有したいからって贈ってくるなんて申し訳なく思う。
 わたしなんて登城しないようにするためにはと苦肉の策で避けているのになんだかなぁ。
 ローネ王女はどら焼きもパンも食してるのにフラン王子はお預けを喰らってて可哀想な感じが。
 こんなに珍しいものを一方的に貰って返せないのも悪い気がするし。
 帰国した時にでもご褒美としてお菓子を作るのはいいけどバタバタしているみたいでいつ果たせるのかわからない様子。
 うん、そうだ! 一応、簡単に作れて持ち運びも楽で長持ちしそうなものをプレゼントしておこうかな。
 とりあえず今は夕刻だし、明日出発ということでまだいるようだし、急げば間に合うかも。
 そう思考を巡らし、決意した瞬間の行動は早かった。
 補習中に作れそうかなと考えてはみたものの、なかなか実践できなかったあずきキャラメル。
 材料はばっちりだし、そんなに手間はかからない。ただ力技が必要になるだけ。
 これが面倒で踏み切らなかっただけで頑張ろうかな。
 さっさと作り始めるとキャラメルだけでなく、ついでにべっこう飴まで作ってしまった。
 粗熱を取って冷ますまでの間、お礼の手紙を書き、王城へ届けるまでの手配をする。
 大方固まった後は食べやすいように四角く切ったものを一つずつ丁寧に紙へ包んだ。
 まあ、王族への贈り物だし、毒見のためにどのくらい残るのかわからないけど無事届けられることを祈っておく。
 もし受け取れなくてもちゃんと作るという約束は了承したという旨の返事は書いたし、それで納得してもらおう。
 完成したあずきキャラメルは味見がてらおじいさまや屋敷のみんなにも食べてもらい、喜んでもらえたし、よくできた方だと思う。
 帰宅直後だったけど馬車に揺られた乗り物疲れで身体が強張っていたから心地よい疲労感となってちょうど良かった気がする。
 あとはこれがうまくいけばいいんだけどと茶葉の乾燥を確認しながら抹茶への想いを馳せる。
 明日からはまた学校が始まるし、気持ちを切り替えて早々に寝た。


 翌朝、学園の廊下でメラオン王子から声を掛けられた。どうやら用があるらしい。

「殿下、先に入っておきますわね。ではシャルロットさん、ごきげんよう」

 一緒に登校していたセレーヌさんが気を利かせて教室へと向かい、わたしは王子と二人になった。

「昨日は気遣いどうもありがとう。早速、ローネと奪い合っていたよ。けれどほとんどフランが持っていったけどね。だから良ければまた……」

 言いかける王子にわたしは懐からすっと封書を取り出す。ただで済むはずはないと想定していたし。

「こちらに昨日のレシピがありますのでどうぞご利用ください」

 恭しく差し出すと王子が小さくため息をついた。

「はぁ……、きっとローネがうるさいだろうなぁ。分かった。確かに受け取ったよ、シャルロット嬢」

 交換するようにフラン王子から預かってきたというメッセージカードを受け取った。

「それじゃあ、教室へ向かおうか」

 王子がエスコートするように先導した。うう、恐れ多いかも。
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