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永眠侍女、犠牲と化す
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休暇から戻って十日余りでついにカーティスと私の婚約が大々的に発表された。
正直、社交界の様子が判らないのでどのぐらい話題になっているかは不明。
私はタウンハウスで婚姻に向けての準備を着々と進めるのみ。
婚約効果のおかげか侍女たちの嫌がらせはすっかり無くなり、侍女としての仕事は楽になった。
が、準備など手伝う気はさらさらないようなので避けられている傾向が強い。
都合上、取り次いではくれるもののほぼ丸投げで特別に用意された部屋で個人的に対応している。
もちろんアーデンが学園に通っている間に行なっており、次から次へと参考までの資料が舞い込んで読みこなすのが大変だ。
例えば歴代の公爵夫人はどのような装飾品やドレスを使用したとか、どこの商会なら品位が保てるのかとか私の立場での現状と比較しながらいろいろと選択が求められる。爵位によっての御用達なども複雑で本当に頭が痛い。
貧乏貴族だった私には縁遠い内容でつくづくもう少し興味を持っていれば良かったと思う。
だけど私にできることはしっかりとしないとここまで用意してくれたカーティスには申し訳ない。
只でさえ無理をしているのは目に見えてるから少しでも負担は減らしておくべきだ。
それと同時にアーデンの今後もきちんと導かなければいけない。
根本にあるのはアーデンの幸せ。何が何でもそれを忘れてはいけない。
「……王女殿下がお会いしたいそうだ」
学園から戻ったアーデンがぼそりと呟いた。アーデンの口から太陽姫の話題が出ている!
季節はもう雨季に入っており、時間が経つのが早い。
公表してから1カ月は経つがようやく資料を読みこなした状態で準備がほとんど進んでいない。
アーデンはマーデリンからの手紙を預かっていて渡してくれた。
読んでみれば数日後にタウンハウスへの訪問の伺いで急ぎなのでアーデンに頼んだということだ。
どうやらカーティスとの婚約発表の件で祝辞を述べたいらしい。
慌てて私は執事に確認を取り、了承を得る。王女殿下自ら来たいというならば断われるすべなどないだろう。
些かアーデン経由の伝手ということが引っ掛かるがブランディンは知っているのだろうか?
とはいえ筆頭公爵の現当主の婚約相手である私に会いたがっても仕方ないと納得してほしい。
発表からかなり時間が経っていて今更感も否めないがお待ちしている旨の返信を託し、その日を待った。
マーデリンが来訪するのは数年ぶり。ブランディンとは学園でほぼ毎日会っているようなもので定期的に会う必要が無くなったから。
公式の際はブランディン自らが王城へと赴いておりタウンハウスには来ていない様子。
私としても是非会いたい。表立っては発言できないものの、これまで影で支えてくれたお礼は告げたいのだ。
これまでボルト様経由でも伝わっていると思うが会えるのなら直接感謝は述べたい。
マーデリンが来訪となれば婚約者を立ててエスコートを依頼するしかない。
きっと今回限りだからと自分に言い聞かせて奮起し、頭を下げて回った。
渋々ながらもブランディンは執事経由でエスコートを受け賜わったようだ。
さすがに緊急ともなれば断れるすべがなかったのかもしれないが。
久しぶりとはいえ、お屋敷総出のお迎えは徹底している。皆整列し、今か今かと待っていた。
以前は端の端で頭を下げていたのに今は前方で待機。もちろんアーデンも横にいる。
二人の間にはずっとぎこちない不自然な空気感はあったままだが誰も気づいてはいない。
元々私がアーデンに対して干渉し過ぎた態度を取ってただけでアーデンは変わってないのだから。
一番最後にブランディンが不機嫌そう現れ、ギロリとこちらを睨みつけたのち、何も言わず正面で待ち構えた。
やがて到着の知らせと共に扉が開かれ、一斉に皆が頭を下げる。
「まあ、畏まる必要はないのに。本日は非公式の訪問なの。大げさすぎるわ」
鈴を転がすような声が響き渡り、太陽姫が登場。そしてボルト様の姿もあった。
正直、社交界の様子が判らないのでどのぐらい話題になっているかは不明。
私はタウンハウスで婚姻に向けての準備を着々と進めるのみ。
婚約効果のおかげか侍女たちの嫌がらせはすっかり無くなり、侍女としての仕事は楽になった。
が、準備など手伝う気はさらさらないようなので避けられている傾向が強い。
都合上、取り次いではくれるもののほぼ丸投げで特別に用意された部屋で個人的に対応している。
もちろんアーデンが学園に通っている間に行なっており、次から次へと参考までの資料が舞い込んで読みこなすのが大変だ。
例えば歴代の公爵夫人はどのような装飾品やドレスを使用したとか、どこの商会なら品位が保てるのかとか私の立場での現状と比較しながらいろいろと選択が求められる。爵位によっての御用達なども複雑で本当に頭が痛い。
貧乏貴族だった私には縁遠い内容でつくづくもう少し興味を持っていれば良かったと思う。
だけど私にできることはしっかりとしないとここまで用意してくれたカーティスには申し訳ない。
只でさえ無理をしているのは目に見えてるから少しでも負担は減らしておくべきだ。
それと同時にアーデンの今後もきちんと導かなければいけない。
根本にあるのはアーデンの幸せ。何が何でもそれを忘れてはいけない。
「……王女殿下がお会いしたいそうだ」
学園から戻ったアーデンがぼそりと呟いた。アーデンの口から太陽姫の話題が出ている!
季節はもう雨季に入っており、時間が経つのが早い。
公表してから1カ月は経つがようやく資料を読みこなした状態で準備がほとんど進んでいない。
アーデンはマーデリンからの手紙を預かっていて渡してくれた。
読んでみれば数日後にタウンハウスへの訪問の伺いで急ぎなのでアーデンに頼んだということだ。
どうやらカーティスとの婚約発表の件で祝辞を述べたいらしい。
慌てて私は執事に確認を取り、了承を得る。王女殿下自ら来たいというならば断われるすべなどないだろう。
些かアーデン経由の伝手ということが引っ掛かるがブランディンは知っているのだろうか?
とはいえ筆頭公爵の現当主の婚約相手である私に会いたがっても仕方ないと納得してほしい。
発表からかなり時間が経っていて今更感も否めないがお待ちしている旨の返信を託し、その日を待った。
マーデリンが来訪するのは数年ぶり。ブランディンとは学園でほぼ毎日会っているようなもので定期的に会う必要が無くなったから。
公式の際はブランディン自らが王城へと赴いておりタウンハウスには来ていない様子。
私としても是非会いたい。表立っては発言できないものの、これまで影で支えてくれたお礼は告げたいのだ。
これまでボルト様経由でも伝わっていると思うが会えるのなら直接感謝は述べたい。
マーデリンが来訪となれば婚約者を立ててエスコートを依頼するしかない。
きっと今回限りだからと自分に言い聞かせて奮起し、頭を下げて回った。
渋々ながらもブランディンは執事経由でエスコートを受け賜わったようだ。
さすがに緊急ともなれば断れるすべがなかったのかもしれないが。
久しぶりとはいえ、お屋敷総出のお迎えは徹底している。皆整列し、今か今かと待っていた。
以前は端の端で頭を下げていたのに今は前方で待機。もちろんアーデンも横にいる。
二人の間にはずっとぎこちない不自然な空気感はあったままだが誰も気づいてはいない。
元々私がアーデンに対して干渉し過ぎた態度を取ってただけでアーデンは変わってないのだから。
一番最後にブランディンが不機嫌そう現れ、ギロリとこちらを睨みつけたのち、何も言わず正面で待ち構えた。
やがて到着の知らせと共に扉が開かれ、一斉に皆が頭を下げる。
「まあ、畏まる必要はないのに。本日は非公式の訪問なの。大げさすぎるわ」
鈴を転がすような声が響き渡り、太陽姫が登場。そしてボルト様の姿もあった。
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