冤罪夫人は二度目で真実を知る

おりのめぐむ

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改稿前によりぐちゃぐちゃですいません。

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 来月でアラベルが16歳を迎える。ついにデビュタントする日が近づいた。
 準備の最終段階であろう日々を過ごすアラベルがいつもの慰問活動後に顔を出し何気に問う。

「……そういえばお義姉さまのデビュタントはどんなドレスだったの?」

 私にとってそろそろ2年前となるデビュタント。失敗ばかりのとても苦い思い出。

「アラベルは何もお義母さまから伺ってないの?」

 既にお下がりだったと揶揄されていると思っていたのに。

「ええ、何も。あたしは部屋で集まる時だけ断片的に話しているのを聞いてるぐらいだから。それに今、お茶会でもデビュタントが話題となっていて興味があるの」

「そう。でも私の話は役に立たないわ」

「どうして?」

「私のデビュタントドレスは生前お母さまが身に着けたものだったから」

「それは新調していないってこと?」

「ええ。申し出に不足があったみたいで間に合わなかったから私が悪いのだけれど」

 誤魔化すように笑うとアラベルはじっと見つめてくる。

「お義姉さま。あたし、そのドレス見てみたいわ!」

「とても古いものだから」

「お願い。お義姉さまのデビュタントドレス、見せて欲しいの♡」

「カーラ、出してもらえる?」

 目を輝かせるアラベルを見ていたら頷くしかなかった。

「ヒュード、手伝ってちょうだい」

 傍らにいたカーラは何気に指示を出す。
 あの怪我以来、ヒュードが何かと手助けするようになっていたから。
 最近ではカーラの補助としてヒュードと過ごすことが多くなっている。
 ヒュードもアラベルの世話役をしながら両立させており、その有能さは計り知れない。

「わあぁ、すごいわ」

 久しぶりにお披露目されたドレスは以前と変わっていなかった。
 乳白色の光沢を放ち、滑らかな手触り。
 きちんと手入れされ、保管されていた証。
 とても素敵なはずなのに着用した当時を思い出し、胸が締め付けられる。

「このドレスをお義姉さまが着用したのね?」

「ええ、そうよ」

 ばつが悪いように返事するとアラベルが突然、暗い顔をしてうつむいた。

「お義姉さまがとても羨ましい。こんな素敵なドレスを着れたのだから」

 思ってもない言葉が返ってきた。お義母さまには非難されたというのに。

「確かに素敵なドレスだけれど評価は良くなかったのよ」

「そうは思わないわ! このドレスはあたしのデビュタントドレスのよりずっとずっといいものだもの!」

「そんなことないわ。アラベルのドレスは王宮御用達のものを新調したと耳にしているもの。きっと話題になるわ」

 予想もしないアラベルの批判。一体、どうしたのかしら?

「……お義姉さまのドレスの方がずっとずっと素敵よ」

 そう言いながら泣き出してしまった。
 わけが分からなかった。カーラは驚いた様子でヒュードも顔を背けていた。

「……あたし、このドレスでデビュタントを迎えたいわ」

「な、何を言い出すの? このドレスはあまりよくないものなのよ」

 王城でお父さまとお義母さまに恥をかかせてしまったいわくつきのドレス。
 アラベルが着用なんてありえないわ!

「いいえ、このドレスのどこがよくないっていうの? お義姉さま、お願い。貸してちょうだい」

「ダメだわ。おそらく着ることさえ許されない」

「どうして? あたし着たいの! ……ううん、絶対に着るわ!」
 
「それは無理よ。もうアラベルのドレスは用意してあるし、お義母さまが必ず反対するわ。着ていくことはできないのよ」

「あたし、あんなドレス着たくないの。お義姉さまのドレスがいいわ」

 そこまでこのドレスに固辞する理由がわからない。

「わけを聞かせてくれないかしら」

「それじゃあ貸してくれるって約束してね?」

「わかったわ。貸すのは可能よ」

 汚点が生じたドレスなのにとしぶしぶうなずくと嬉しそうに笑う。

「こんなに思い入れのあるドレスだからあたし着たいと思ったの」

「思い入れのあるドレス?」

「ええそうよ。だってお義姉さまはお母さまから受け継いだドレスでデビュタントを迎えたのでしょう? あたしはお母さまからドレスを譲ってもらったことがないの。あんなにたくさん持っているのにいつも新調されるだけ。勝手に選んで作っただけのものよ。普段のドレスのようにいつの間にか用意されている。周りの評判とか自尊でしか判断してなくてあたしはただ着せられているだけ。誇示するための道具に過ぎないの。だからこのドレスは素敵だと思ったわ。しかもお義姉さまがデビューしたものを着ればもっと素敵だって!」

 アラベルはお義母さまに従順なのは手を挙げられているからで本当は自分の意思があった。
 もちろん、気持ちを尊重したい。でも……。

「でも着ようとすることが分かった時点でお義母さまに……」

「お義姉さま心配なさらないで! 絶対に着てみせるから貸してちょうだいね!」

 ぎゅっと手を握られ、目を輝かせていた。
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