冤罪夫人は二度目で真実を知る

おりのめぐむ

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「ローザ様、お手紙が届いております」

 数日後、ヒュードから封書が手渡された。差出人はウォルター・レイクラック侯爵さま!
 つい先日、アラベルから名前を聞いたばかりだというのに。
 急いで中を確認すればアラベル対しての気遣いと私の体調の心配などが書かれていた。そして私とアラベルにドレスを贈らせてほしい、とあった。
 このような申し出は私の事情を知らなければあるはずがない。
 思い当たる節はアラベルしかなかった。ヒュードに言付けを頼み、アラベルの返信を待った。
 数日かかって書面で返ってくると思っていたのにその夜、こっそりと姿を現した。
 そしてレイクラック侯爵子息さまと会ったその日に私が体調が悪くなくても夜会に参加しない理由を秘密裏に話していたのだという。

「だって理由を知りたそうだったもの。だからのよ」

 屈託なく笑うアラベルは悪気はなく嬉しそうだった。諭したつもりのはずがこんな風に帰ってくるなんて思いもしない。

「でもあたしたちにドレスを贈ってくださろうとするなんて本当に優しい方ね、お義姉さま。だから侯爵子息さまのご好意を無下にしてはダメだわ。お受けしましょう♡」

 躊躇する私の手を握ってもうそのつもりかのようにとさらに続ける。

「ねえ、お義姉さま。レイクラック侯爵子息さまのことをどう思っているの? あたしは侯爵子息さまはお義姉さまに関心を持っているように思えるわ。そうであればお義姉さまの十分条件の合う相応しいお相手じゃないかしら」

 アラベルは目を輝かせながら力強く握りしめた。それが当然かのように。
 問われて胸の奥がぐっと掴まれたような気持ちになる。
 確かにウォルター・レイクラックさまは王宮に勤めるほど優秀で嫡男ではない方。
 それに誠実そうでお優しい紳士なのだから男性として惹かれる令嬢が多いだろう。
 
「けれども侯爵家のご子息なのよ。格上の方が伯爵家の婿養子になどなるはずもないわ」

 そう、望めば私より条件の良い相手が数多なのだから。わざわざ悪評のたった無能な令嬢の元を選ぶ必要がない。

「そうかしら? だったら確認してみてもいいと思うわ。ドレスを贈ってもらって夜会に出て直接会ってみてお話しするの。あたしも同行するから、ね。そうしてみましょうよ、お義姉さま♡」

 アラベルはすっかり乗り気になっている。気づけば夜会はひと月以上参加していない。
 これからもできない可能性の方が高い。それならと心が揺らぐけれども。

「……やはり不相応な要求は間違っているわ。失礼にあたるもの」

「もう! お義姉さまこそ、失礼にあたるわよ。男性が贈り物をしたいって伝えてるのだから受け取ってもらわないと恥をかかせることになるでしょ! 格上の方だったらなおさらありがたくお受けした方がいいのよ。それでもお義姉さまが不要だというのだったらあたしだけでも受け取るわ。だからそのようにお返事して、お義姉さま!」

 少し興奮した様子でアラベルが主張する。私とアラベルの二人に対してドレスを贈るということは新調できない私に対しての隠れ蓑なのかもしれない。
 それをアラベルだけの要求だけに応えてしまうとその好意を無下にしてしまうに違いなかった。

「わかったわ、アラベル。申し出をありがたくお受けすることにするわ」

「そうよ、最初からそうすれば良かったのよ、お義姉さま♡ そして夜会に行きましょう♡」

 アラベルがいる前ですぐに返事を書き、ヒュードに手紙を託す。

「ローザ様、こちらは明日の一番にお届けしますので」

「これでひと安心ね。それじゃあお義姉さま、おやすみなさい♡」

 二人は役目を果たしたかのように出ていった。

 数日後、老舗の商会が来訪し、レイクラック侯爵家の手筈ということで離れで私とアラベルの採寸が行われた。
 ハンスの目を縫ってヒュードが手を回し、お義母さまに気づかれることなくすんなりと終り、数週間にはグランシア伯爵家にドレスが届き、夜会へ参加することになった。


「早くレイクラック侯爵子息さまにお会いしましょう♡」

 今流行りのものだという新調されたドレスを身にまとい、アラベルとともに大規模な夜会へと赴く。

「そうね、すぐにでもお礼を伝えないと」

 久しぶりとなる夜会だけれども妙に気持ちが高ぶっていた。

「お義姉さま、あそこに!」

 アラベルが侯爵子息さまに気づき、歩き出す。私も慌ててその後を追う。

「レイクラック侯爵子息さま、ごきげんよう♡」

「アラベル・グランシア嬢、ローザ・グランシア嬢。こんばんは」

 私たちに気づいた侯爵子息さまは爽やかに微笑んだ。

「この度は大変な心遣いをいただき、アラベル共々非常に言葉では言い尽くせないような感謝しております。本当にありがとうございました」

「侯爵子息さま、本当にありがとうございました♡」

「そんな畏まらずに。私でお役に立てたのでしたら非常に喜ばしいことです」 

「そうだわ、お義姉さま。久しぶりの夜会ですもの。もしかすると体調を崩すかもしれないからどこかで休憩しましょう」

「……そうですね。腰掛けられる場所へと移動しましょうか?」

 そうして会場内のカーテンで仕切られた休憩スペースへと移動することになった。
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