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 そういえば、ヤーラは以前会った時、リュシエルに何かかかっていると言っていた。単語が聞き取れずリュシエルには何のことか分からなかったが、あの時言っていたのはこのことだったのだろう。ヤーラはそれをクロードに伝えていたのだ。
  
「この前君に会わせたのはとある高名な魔法使い様でね。彼女がナーバ帝国に滞在していると教えてくれたのもヤーラ皇女だ。ただ事情があっておおっぴらに探すわけにはいかなかったから、秘密裏に探さざるを得なかったんだ」
「そんな……。そもそも、なぜそんな呪いが私に……!?」
「それはこれからわかるだろう。さあ、急いで支度をしてくれるかい? 王宮に、父上に会いに行かねば」

 まだ状況もしっかり飲み込めていない中、リュシエルは言われるまま急いで湯浴みをし、身支度を整えた。終わるとすぐさまクロードやエドガーたちと同じ馬車に詰め込まれ、王宮へと運ばれる。駆け足気味のクロードに引きずられるようにしてたどり着いた謁見室には、王だけではなく、側近である父や宰相、各大臣など、そうそうたるメンツが揃っていた。中には、久しぶりに見るハージェスとモルガナもいる。皆はリュシエルの姿を見ると、ハッとしたように息を呑んだ。

「お待たせしました。リュシエルが目覚めたので、連れてまいりました」

 クロードの言葉に、周りがざわめきたつ。

「リュシエル? あれが、リュシエル・ベクレル侯爵令嬢だと言うのか?」
「一体何があったんだ、以前の彼女とは全然違うぞ」
「リュシエルなのか……!? 本当に……!?」

 最後に言ったのはハージェスだ。その顔には赤みが差し、ぽうっと、まるで見惚れるようにしてリュシエルを見ている。そばにいるモルガナに苛立ったように袖を引いていた。

「来たか」

 玉座に座っていたヴァランタン王が重々しく口を開くと、途端に辺りはぴたりと静かになった。

「――皆、突然呼び立ててすまないな。いくつか重要な知らせがある故、許せ」

 それから王は、ゆっくりとクロードとリュシエルの方を見た。

「まずはいい知らせから行こうか。我が二番目の息子クロードだが、そこにいるリュシエル・ベクレル侯爵令嬢との婚約を許可する」
「ありがたき幸せ」

 クロードが頭を下げれば、パラパラと拍手が上がる。

「それから、リュシエル嬢に関してだが……」
「父上! あれは本当にリュシエルなのですか?」

 王の言葉を遮ったのは、どこか気色ばんだ様子で叫んだハージェスだ。
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