エリートヤクザの訳あり舎弟

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弱点

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「あれ、凌雅は?」

「トイレ行ってくるって。」

「アイス溶けちゃうし、先に食べようぜ。」

三人分のクレープをトレーに乗せ、場所取りしてもらっていた席に着く。
ショコラは俺が、マンゴーは駿が注文。
中に入ったアイスの冷たさは蒸し暑い季節と遊び疲れた身体を癒してくれる。

「チョコの方も味見してみるか?」

「だったら、こっちも。」

「サンキュー!」
 
仲良くシェアしながら食べ進める。
今回は凌雅の奢りだから、財布を気にする必要もないし。

(…にしても遅いな)

ゲーム勝負、第一ラウンドのカーレースは駿と結託して凌雅の車体に甲羅を当てまくって勝利。
しかし、次のサバイバルシューティングでは仕返しと言わんばかりの差で敗北。
迫りくるゾンビをあっという間に駆逐し、血の海となった戦場と傷一つないHPにニヤリと歪めた口元を思い出す。
正直あの顔はゾンビより恐ろしかった。
 
「シューティング凄かったな。…最後のは下手くそだけど。」 

 「まさかリズム感が壊滅的だったとはね~。動画撮っておいて正解だったわ。」

そんな凌雅にも苦手なものがあった。
第三ラウンドは足元に敷かれたマットでダンスのようにノーツを叩く、いわば音ゲー対決。
ノリで一番難しい『MASTER』を選び、結果は惨敗。
連続するミスに最初は手加減してやってるのかもと様子を見ていたものの、だとしてもあまりに音楽とずれている。

「…クソが。」

(…あ、これガチでやってる)

50にも満たない最終コンボに舌打ちを零した辺り、本人的には真剣にやったつもりだが、モソモソとした不気味なステップは笑いを堪えるのも大変だった。
部下たちのグループLINEにも送ったし、どんな反応が来るか楽しみだ。

「やっと帰ってきた。…って、そのネコどうした?」

「近くにあったからついでだ。」

凌雅はネコのぬいぐるみを差し出し、「欲しかったんだろ?」と駿をからかう。

「…いや、俺が見てたのはそれじゃなくて」

「は!?」

「うん。ドヤ顔してるとこ悪いけど、お前の勘違いだよ。」

駿が羨ましがってたのはあくまで『家族』
このおっさんはそれをぬいぐるみの方と盛大に勘違いしてしまったらしい。
トイレと嘘をついてまで、わざわざ取りに行ったのは褒めてやるべきか。

「貰ってやってくれる?こんな可愛いネコちゃん、おっさんには似合わないから。」

「…し、しょうがねえな。」

頬を赤く染め、ぬいぐるみを抱きかかえた駿の素直じゃないところは少し凌雅と似ている。

「凌雅も機嫌直せ。甘いのが苦手なお前のためにツナマヨクレープ買ったんだぞ。」

「俺の金でな。」

「恨むなら音ゲーで負けた自分を恨め。」

平和な休日に、魔の手が忍び込んでいたことを俺は知る由もなかった。




「やっと見つけたぜ、霞流の弱点。」

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