おいしい毒の食べ方。

惰眠

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唐揚げ

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 僕は、無心で皿を洗う。
 あの味をなるべく思い出さないように。

 思い出さないようにとすると、赤いモザイクが脳内で踊るようだ。

 立ち眩みを覚えそうだが、目の前で食事をする微笑ましい彼女の姿を見て正気を保つ。

 皿を洗い終わり、僕は横に置かれた鍋に入った、少し冷めてそうな油溜まりを静かに見守る。

「ふう…。」

 僕は皿を洗い終わり、一通りの仕事を終えたような安堵感に、口から息が漏れた。

「量、多かったですか?」

「かもね。」

 心配そうなその顔に、笑顔で返す。

 彼女の愛情になにも文句はない。

 僕は、彼女の前の席に座り直す。

「テレビつける?」

「何か面白そうなのありますか?」

 僕は、新聞を手に取って番組一覧を見る。

 時間帯的に、ドラマかニュースぐらいしかしていない。

 お互い、ドラマをあまり見ていないので残る選択肢はニュースだ。

 ボーっと眺めると、目の端にとある歌番組を見つけた。

「歌番組してるみたいだよ。」

「どんな感じですか?」

「懐かしの歌とかしてるみたい。みてみる?」

「お願いします。」

「つけるね。」

 テレビのリモコンを手に取り、電源を付ける。

 いくつかの番組を切り替え、目的の番組にたどり着く。

 そこでは、ちょうど僕たちが十代や二十代前半ごろに流行った懐かしの曲が流れていた。

「懐かしいね。」

「ですね。」

「この曲知ってたの?」

 そこでは、彼女のイメージとはまた違ったアップテンポの刺激的な曲となっていた。

「友達が、好きでおすすめされてたの。それに、これ有名だったでしょ?」

「そうだったね。テレビでもよく紹介されてたっけ。」

「懐かしいですね。」

「だね。」

 気づけば、彼女は食べ終わり、皿を洗いに行っていた。

 シンクの水の流れる音と、テレビの音楽をBGMに小説を再び手に取る。

 ゆっくりと夜の日常を味わいながら、時間を無駄にした。

 しばらく、お互い静かに音楽を聴いた。

 そして、順番に風呂に入り寝る支度を整える。

 いつも、明日の早い僕に合わせて彼女は行動してくれている。
 感謝しかない。

 僕は、彼女を誘い、今日も眠りにつく。

 隣では、当たり前のように優しい顔をして、彼女が目を瞑っている。

 ゆったりと静かにベッドに体重を預け、夜を忘れた。
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