タロウのひまわり

光野朝風

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タロウのひまわり5

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 タロウは種を植え終わると、どっと疲れが出ました。もう歩くことさえもできません。
 少しずつ冬が近づいてきているのが肌でわかりました。霜が大地に降りています。霜柱が輝いていました。冬の間は街に戻らないと、生きていけそうもありません。
 しかし、タロウの気持ちは寒さが近づいてきているというのに、ぽかぽかとあたたかいものがありました。
(もう、眠たいや……俺も、おばあさんや、ひまわりさんに、ちゃんとほほえみ返したかったな……)
 タロウはそのまま目をつむりました。その眠った顔は、とてもほほえみに満ちたものでした。
 雪がちらりちらりと降り、タロウの体を白く包み込みました。
 一面の銀世界が、タロウの気持ちの輝きを表しているようでした。
 やがて春が来て、夏が来ました。
 タロウが土に返った場所には一面のひまわりの花園ができていました。
 ひまわりの花園はまたたく間に街の人へと知れ渡り、多くの人が訪れるようになりました。
 そこへ少女を連れた親子連れが来ました。お父さんは少女を肩車しながら歩いていました。お母さんは少女に微笑んだり、お父さんを幸せそうに見つめたりしてひまわりの花園を歩きます。
 肩車された少女が犬を連れて散歩している人に指を指して言いました。
「ねえママ! かわいいわんこだよ! ねえ、うちでも飼おうよ!」
 お母さんは少女に答えます。
「ママね、もう犬は飼わないと決めているの。ママね、ずっと後悔していることがあってね、昔犬を捨てちゃったことがあったの。だからそのこと、ずっとね、謝り続けているの。あれから他の犬はね、もう飼いたくないの。わかって」
「ふーん。ママの捨てた犬はなんて言うの? みんなで探そうよ!」
 お母さんは悲しげに微笑みながら言います。
「もう、きっと生きていないと思う。その犬の名前はね、タロウって言うの……」
 お父さんは言います。
「タロウはどこかできっと生き続けているよ。大丈夫だ」
「そうね。タロウはきっと生き続けている」
 お母さんは一面のひまわりの花園を見ながら、ほほえんで言いました。ひまわりが太陽の光を浴びて輝いているようにも見えました。お母さんはその姿を見て、まるで自分にほほえみかけてきているように感じ、とても幸せな気持ちになりました。三人はひまわりの花園を見ながら心からほほえみます。
 まるで、ひまわりたちのほほえみを返すかのように。

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