えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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2章 反董卓連合

汜水関攻防戦(破)

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 汜水関攻防戦において先陣を任されていた孫堅軍は極度の兵糧不足に陥っていた。連合軍からの支援物資が届かず。とても戦える状況ではなかった。
 孫堅「兵糧はまだ届かないのか?」
 孫静「兄上、このままではまずいぞ」
 孫堅「わかっている。袁術の奴め。我らを飢え死にさせるつもりか?」
 黄蓋「殿、勢い付いた胡軫軍の総攻撃により甚大な被害が」
 程普「殿、引き上げることも視野に入れるべきやもしれませぬ」
 韓当「殿、あちらから誰か来ます」
 孫堅「あれは」
 ピンチの孫堅軍の元に劉備軍が兵糧を持ってやってきたのだった。
 劉備「兵糧不足と聞き米ではなく動物の肉で申し訳ないですが運んで参りました」
 孫堅「おお、助かったぞ。劉備殿、この御恩はいずれ必ず」
 張飛「まぁ待ちな」
 張飛は慣れた手つきで皮を剥ぎ肉を下ろして、焼きやすいようにする。
 孫堅「これは凄い。お主は元肉屋か何かなのか?」
 張飛「おぅ。元肉屋で今は大兄者の末っ子の弟で張翼徳ってんだ。宜しくな」
 関羽「翼徳。失礼であろう。孫堅殿、義弟が失礼をした。某は関雲長と申す。兄者と翼徳と義兄弟の契りを交わした1人である」
 孫堅「劉備殿は良き義兄弟を得たようだな」
 劉備「まだまだ行き届かぬところもありますがご容赦くださると幸いです」
 孫堅「ハハハ」
 張飛は肉を焼くのに徹し、孫堅軍の将校や兵たちが食べる。
 張飛「おぅ。どんどん食べてくれや。まだまだあっからよ」
 孫堅の兵たち「うめぇ。こんなうめぇ肉食ったことねぇよ」
 甚大な被害が出たとはいえ、なんとか凌ぎ切った後の飯ということもあり皆の勢いもとてつもなくあっという間に肉が消費されたのだった。
 張飛「ハハハ。見事に食べ切ってくれやがって。嬉しい限りだぜ」
 義賢「張飛殿、肉屋やってる時は優しいんですね」
 張飛「なんでぇ。当たりめぇだろ。腹すかした奴が美味しそうに完食してくれんのを見るのは気分が良いだろ」
 義賢「成程。兄上、孫堅殿の壊滅を防ぐことができてよかったですね」
 劉備「あぁ、明日は胡軫軍を押し返すのに協力しよう」
 麴義「涼州の騎馬とは何度もやり合って、熟知しています。お任せください」
 張郃「董卓軍は精強と聞きます」
 劉虞「ワシは簡雍殿や田豊殿と後方支援を担当しますぞ」
 田豊「いかに董卓軍が精強といえど総大将の胡軫、華雄、徐栄と討てれば汜水関は落ちたも同然でしょう」
 義賢「待ってください!?ここに華雄殿と徐栄殿がいるのですか?」
 田豊「えぇ。お知り合いですか?」
 関羽「そうかあの男も董卓軍であったな」
 劉備「華雄殿には黄巾の乱の折に御助力を願ったことがあり」
 田豊「そうでしたか。それならば、捕らえて降伏を促すのも手ではありませんか?関羽殿であれば容易でしょう」
 関羽「簡単に言ってくれるな。お互い短い時間であったとはいえ肩を並べて戦ったのだ。手の内を知られていよう」
 張飛「めずらしいじゃねぇか兄者が弱気だぜ」
 関羽「翼徳よ。茶化すでない」
 義賢「兄上のピンチを救ってくださったこともあり、義に熱い関羽殿は躊躇しているのでしょう」
 関羽「うむ。義賢よ。お察しの通りぞ」
 田豊「敵となった以上躊躇すれば討たれるのはこちらとなりましょう」
 関羽「わかっておるが踏み切れぬ」
 義賢「関羽殿、華雄殿が殺されても構わないのですか?」
 関羽「!?」
 義賢「関羽殿が行かずとも孫堅軍は総攻撃を指示するでしょう。そうなった時、華雄殿も徐栄殿も孫堅軍に打たれるでしょう」
 田豊「劉丁殿の申す通り。腹ペコですら董卓軍を食い止めた精強な孫堅軍です。食事を摂り元気となった今、明日には汜水関は落ちるでしょう」
 関羽「わかり申した。この関雲長、覚悟を決め申した。華雄殿を一騎討ちにて捕縛する」
 張飛「じゃあ、徐栄の方は俺に任せてもらうとしよう」
 張郃「ここはこの張儁乂に譲っていただきましょうか」
 張飛「まぁたまには譲るのも良いかもな。孫堅軍の食いっぷりで兵糧も無くなったしな。俺は補給してくるぜ。張郃、任せたぜ」
 張郃「心得た」
 孫堅軍の野営地。
 孫堅「策を連れて来なくて良かったな」
 程普「若がいれば無鉄砲に突撃しておりましたな」
 黄蓋「でもびっくりしたぜ。殿が若に長沙城の留守居を命じるなんて。俺はてっきり連れてくもんだばかり」
 韓当「殿らしくないなと思ったのは事実だなぁ」
 孫堅「やはりわかるか?今日助けに来てくれた劉備の弟である劉義賢殿にな。『この先、反董卓連合に参加することがあれば妻子を袁術に預けるのはやめた方が良い』と言われたのだ。その時は何のことかわからなかったがいざ参加することになった時に思い出してな。策なら妻や権、翊、匡と守ってくれると思ってな」
 孫静「兄上が珍しく臣下の半数以上を留守居に命じたのもそういうことだったのですね」
 孫堅「あぁ。用心するに越したことはないと思ってな」
 祖茂「でも、殿にそんな助言をした劉義賢とやらはいったい何者なんですかね」
 孫堅「わからぬが。漢の皇室の流れを汲むもの。我々漢に尽くすものが守るべき存在であろう」
 孫静「兄上が前に娘を嫁にやりたい奴ってのは劉備殿の事だったのですね」
 孫堅「あぁ。劉備殿なら俺の娘をやってもお釣りがこよう」
 黄蓋「殿の娘ってことはじゃじゃ馬だろうぜ」
 程普「苦労する劉備殿が目に浮かぶな」
 韓当「案外、上手く行ったりしてな」
 孫堅「妻と同じことを言うのだな。ハハハ。だが今回の件でも誰よりも信頼足る人物である事はわかった。娘をやるのなら幸せにしてもらいたい。親の願いって奴だ」
 孫堅は暴れん坊と呼ばれていたぐらいの男だった。この場にいるメンバーの全てがその時の不良仲間。1番信頼している者たちであった。明日の総攻撃に向けて孫堅は静かに戦場を見渡すのであった。
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