えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
165 / 821
3章 群雄割拠

情勢の変化

しおりを挟む
【許昌】

 献帝「良く来た。劉公叔よ。此度の偽帝袁術の討伐、大義であった。寿春と蘆江」
 曹操「ゴホン。行き違いがあったようだが徐州では申し訳なかった。そこでだ正式に徐州牧に任命しよう。袁術討伐で得た寿春と蘆江だが勿論、献帝様にお返しいただけますな」
 劉備「もち」
 荀彧「ゴホン、返す必要があるのですか?」
 曹操「横から急にしゃしゃり出てきて意見をするとは身の程を弁えよ」
 荀彧「これは失礼致しました。荀文若と申します」
 献帝「おお、そちがかの有名な王佐の才であったか。劉公叔を支えてくれて感謝しています」
 曹操「ゴホン。では、荀彧であったな。返さぬということか?」
 荀彧「いえ、曹操殿は袁紹との一大決戦を考えているのではないですか?」
 曹操「!?だとしたら何だ?」
 荀彧「南にも敵を作りたくはないでしょう」
 郭嘉「流石、王佐の才と謳われし荀彧殿ですね。ですが、我々と劉備殿は、無期限の停戦を結んでいる事を忘れていませんか?それに我らに弓を引くことは朝廷に弓を引くこと劉備殿にそれができるのかな?」
 荀彧「あくまで停戦であり同盟でもなければ傘下となった覚えもありませんが。それに我らは朝廷に対して弓など引きませんよ。あくまで弓を引くのは曹操殿に対してですよ。フフフ」
 郭嘉「朝廷を庇護しているのは我らが殿です。それに弓を引くということは朝廷に対して弓を引くことと同義。それがわからぬ荀彧殿ではないでしょう」
 荀彧「えぇ。ですが我々は袁術討伐の折、偶然これを手に入れましてね」
 荀彧は、懐から玉璽を取り出した。
 郭嘉「!?それは玉璽」
 荀彧「えぇ、郭嘉殿ならこれの重要さがお分かりなのでは?人望のない袁術なら取るに足らぬものでも。民からの人望の熱い我が殿がこれを用いたらどうなりますか?」
 郭嘉「あり得ない!?荀彧殿は、玉璽を使い劉備殿を皇帝にしようと。そういうつもりか?」
 荀彧「そういうやり方もあるって事です。そこでどうでしょう?この玉璽と交換で、寿春と蘆江の統治を認めていただくというのは?」
 郭嘉「(荀彧殿は、そこまでして劉備を支えると覚悟しているのか。しかし、確かにこの玉璽が劉備の手元にあり続けるのは、都合が悪いですね。袁術みたいな小物なら反乱の規模も小さいでしょうが黄巾の乱・反董卓連合・偽帝袁術の討伐で着々と名を上げつつある劉備がこれを用いれば反乱の規模は黄巾の乱をも上回るやもしれない)わかりました。その交換条件をお受けしましょう」
 曹操「郭嘉、何を言う。俺は」
 郭嘉は耳元で呟く。
 郭嘉「殿、ここは堪えてください。荀彧にしてやられました。玉璽が劉備の手元にあっては、都合が悪いのです。それに今は劉備との無期限の停戦を壊すことは、できません。南の劉表は袁紹の同盟相手。それを牽制する意味でも劉備の存在は欠かせません」
 曹操「グヌヌヌヌ」
 献帝「では、劉公叔よ。徐州牧の就任と寿春・蘆江の統治を認める。民のため政務を怠らぬように」
 劉備「はっ、漢王室のため粉骨砕身働く所存です」
 献帝「では、もう帰って良いぞ」
 曹操「荀彧と申したな。俺に仕える気は無いか?」
 荀彧「曹操殿も御冗談を言うのですね。我が殿は、劉玄徳と決めております。謹んでお断りいたします」
 曹操「そうか」
 曹操は、苦虫を噛み潰しながら見送ることしかできなかった。荀彧を追いかける郭嘉。
 荀彧「殿、後で追いかけますので、先に行っててください」
 劉備「わかった」
 荀彧「郭嘉殿、どうされましたか?」
 郭嘉「荀彧殿、かつて袁紹の元にいた私に殿を勧めたのは、貴方です。なぜ心変わりを?」
 荀彧「確かに曹操は、今や司隷・青州・兗州・豫州を治め、天子をも手中に治めています」
 郭嘉「それなら、荀彧殿も殿に手を貸すべきではありませんか?」
 荀彧「いえ、覇道を突き進む曹操は徐州の虐殺で、1人の英雄を台頭させてしまったのです。我が殿をね。今でも漢王室のやり方を許容できてませんよ。ですが我が殿ならそれを変えられるのでは無いか?そう思ったのですよ。真に王道たる民の安寧をね」
 郭嘉「何を言っても、私たちは分かり合えなくなったようですね。また貴方と酒を酌み交わしたかったのですがねぇ」
 荀彧「お酒は程々にしてください。私より先に逝けば天下は我が殿を支える私が貰っていきますので」
 郭嘉「全く、容赦ないですね荀彧は。良いでしょう。華北を制し、必ずや劉備の息の根も止めてやりましょう。荀彧もそうならないようにね」
 荀彧「肝に銘じましょう。何れ大きな戦いの戦場にて相見えましょう」
 郭嘉「えぇ、それでは」
 荀彧がしばらく歩くと劉備が待っていた。
 荀彧「殿、どうして?」
 劉備「臣下を心配するのはいけないことか?」
 荀彧「いえいえ、郭嘉からの仕官もお断りしました。曹操にも言った通り、私がお仕えするのは殿だけです。そう心配なさいませんように」
 劉備「いや、そのことは全く心配していない。寧ろ暗殺されないかそっちを心配していたのだが」
 荀彧「ハハハ。流石に曹操とて、大義もなく暗殺することはできません。例えば、殿の子がこの機に乗じて、曹操に反旗を翻すとか無い限りね」
 劉備「それは無いな。我が息子たちに学や道義を教えているのは、荀彧や丁だ。十中八九あり得ない」
 荀彧「そういうことです」
 劉備「では、帰るとしよう」
 荀彧「えぇ、もう劉丁殿も蘆江から戻っている頃でしょう」
 劉備「全く、我が弟ながら心配ばかりかけるな」
 荀彧「そうですね」
 ここに史実では曹操軍に仕えた2人の軍師が分たれる事になった。曹操軍において軍師祭酒ぐんしさいしゅという軍師最高位の位につく郭嘉奉孝。劉備軍において、王佐の才という王を補佐する軍師となる荀彧文若。しかし、この時、曹操の次男である曹丕に密かに接近している男がいた。その男の名を司馬懿仲達シバイチュウタツという。兄で先に曹操に仕えていた司馬朗伯達シバロウハクタツを通じて曹操に謁見したが奥底に垣間見える大きな野望を曹操に見抜かれ敬遠され、仕官を許されなかった彼は扱いやすい曹丕に接近し仕官した。かの有名な天才軍師最大のライバルが静かに動き始めていたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

処理中です...