えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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3章 群雄割拠

間話休題① 呂舞の過去(急)

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 スヤスヤと眠る呂舞の頭を軽く撫でる劉丁。
 劉丁「よく眠っている。良かった」
 呂舞「パパ・ママ。何処?何処に行ったの?」
 劉丁「大丈夫だよ。ここにいるから」
 呂舞「何処にも行かないで。ぐすっ」
 劉丁「そうだよな。辛いよな。この歳で親に売られたってことだもんな」
 何も知らない劉丁には、この時呂舞は両親によって金欲しさに誡拳に売られたと思われていた。
 呂舞「ふわぁ」
 劉丁「おはよう」
 呂舞「きゃっ。昨日のお兄さん?私、そっか眠っちゃってたのか」
 劉丁「よく眠れた?」
 呂舞「えーっと、あのその」
 劉丁「どうしたの?」
 呂舞「お兄さんの名前を名前を教えてください!」
 劉丁「ハハハ。そうだったね。これは可愛いお嬢さんに失礼しました。劉丁義賢と申します」
 呂舞「そのーあのー。私の名前は呂舞って言います」
 劉丁「可愛らしい名前だね。昨日は聞きそびれちゃったんだけどあんなところに1人でどうしたの?」
 呂舞「父が殺されました。母は目の前で凌辱されることを嫌い舌を噛み。うっうっ」
 劉丁「(何だって!?この娘は売られたわけじゃなく目の前で両親を殺されたって言うのか?こんな小さな子を手にするために親を殺したと?誡拳という男は、噂以上に厄介な相手だ)もう、安心して良い。そんな辛いことを思い出させてごめん」
 呂舞「でも兄が兄がまだ生きてるんです。私のことを心配しているはず。探さないと」
 劉丁「ダメだよ。昨日の奴らに見つかったら何されるか!」
 呂舞「昨日の奴ら?私を追ってきていた奴らがここにもきたんですね。劉丁さんは大丈夫でしたか?」
 劉丁「いや、その(そうだった寝てる間に片付けたのに僕の馬鹿、何口走ってるんだ)」
 そこに劉備ガハッ入ってきた。
 劉備「安心しなお嬢ちゃん。昨日の奴らなら1人残らず墓に送ってやったからよ」
 劉丁「兄上、もうちょっと言い方ってものが」
 呂舞「あんな奴ら死んで当然よ。思い出した。パパとママを殺したのもアイツらよ。顔を隠していた男がきっと」
 劉丁「顔を隠していた?」
 呂舞「はい。茂みに隠れていた時、見たんです。指揮を取っていた男が顔を隠していたのを」
 劉丁「顔を隠していたのは指揮官だけかい?」
 呂舞「そうです」
 劉備「へぇー暗がりで顔見られるような事もないと危機感が無かったのってことか?」
 劉丁「兄上、逆でしょう。絶対に顔を見られたく無かった。見られたら誰かわかるから」
 劉備「まぁそうとも考えられるな」
 劉丁「その日、何かおかしいことは無かったかい?」
 呂舞「そう言えば、お客さんが来てた。すぐに帰ったけど」
 劉備「じゃあ、そいつは除外だな」
 劉丁「いえ、その男がこの娘の両親を殺したのでしょう」
 呂舞「私は絶対に誡拳を許さない」
 劉備「誡拳か。噂には聞いてたがここまでやるとはなぁ」
 劉丁「欲しいものは何が何でも手に入れたいという欲望の塊のような男でしょう」
 劉備「だとしたら昨日の奴もヤバいかもなぁ」
 呂舞「全員殺したんじゃないの?」
 劉備「しまった!」
 劉丁「君と同じか娘を持つ人が率いていたんだけどね。兄上は、その人の瞳から並々ならぬ覚悟を感じ取ったみたいでね。話を付けるというその人を逃したんだよ」
 呂舞「そんな。じゃあ、私のことが誡拳に伝わっちゃう。追手がきちゃう」
 劉備「大丈夫だ。安心しな譲ちゃん。あの男は、裏切らねぇよ。寧ろ犯人に仕立てられて殺されねぇか心配だがよ」
 呂舞「でも、指揮官の男は顔を隠してたのよ。そいつだったかも」
 劉丁「いや、顔を隠していた理由はもう一つ考えられるんだ。君に顔を見られたと思っていたってね。恐らく、君のパパとママを殺した張本人こそが誡拳だよ」
 呂舞「あのキモい奴がパパとママを!許さない許さない」
 劉丁「復讐に囚われちゃいけないよ。君のパパとママは、君に人殺しを願う人だったのかい?」
 呂舞「!?パパ・ママ、ぐすっ。会いたいよ」
 劉丁「よーく思い出すんだ。パパとママが君にどう生きて欲しいって思っていたか」
 呂舞「私、パパと一緒に武器を作って『舞の将来は鍛治師だな』って褒められた。ママは、『舞が鍛治師なんて』って口では言ってたけど反対はしてなかった」
 劉丁「うんうん。そういうことならついておいで」
 呂舞「何処に行くの?」
 劉丁「今の君に必要なところかな」
 私は、この時6歳も年上の義賢に恋をした。パパとママを殺されてやさぐれていた私を優しく包み込み、復讐心から解き放ってくれた。いやきっと初めて会った時から私は彼に恋をしていたのだ。そして、彼は私の今後まで導いてくれた。
 ???「おぅ。劉丁じゃねぇか。珍しいなガキなんて連れてどうした?」
 劉丁「親方、この子を預っちゃくれませんか?両親を亡くして身寄りが無いのですが鍛治に興味を持ってるそうなんです」
 親方「へぇ、成程な。でも悪りぃが女に鍛冶場を任せられねぇ」
 呂舞「凄い凄い。これ西洋の武器だよね。確かハルバード」
 親方「!?譲ちゃん、詳しいねぇ。見様見真似で作ったが酷いざまの商品にならねぇもんさ」
 呂舞「ここをこうして。こうで。これでどうだ」
 話も聞かずに呂舞はそのハルバードを打ち直していた。
 親方「おい、何やってんだ。はっ嘘だろ?おい劉丁、このガキ、俺が後継者として貰うぞ」
 劉丁「はい。親方なら安心して任せられると思って、連れてきたんです」
 親方「全く、面白いガキだ。譲ちゃん、名前は。俺のことは親方って呼びな」
 呂舞「呂舞っていう。親方、よろしくお願いします」
 親方「おぅおぅ。俺の鍛治の知識を全て教えてやるよ」
 呂舞は目をキラキラさせていた。
 呂舞「劉丁様、ありがとう。私、パパとママに恥じない立派な鍛治師になる。そうしたら私と。ううん、なんでもない(付き合って欲しいはまだ早いよね)」
 やがて2年の月日が流れ劉丁が司馬徽の元に行くことになる。その日、御守りにと渡した弓と剣が一体化した鉄製のペンダント。これが後の悲劇につながることを呂舞は知らない。
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