えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

4章 三国鼎立

劉表の降伏

　襄陽城についた劉備軍は攻城戦に移ろうとしていたがどうも様子がおかしい。門が開門されたままなのである。空城の計かと思ったが行き交う民たちの往来がある。戦争中とは思えないほどマイペースな民たちの行き交い。拍子抜けしながらも襄陽城へと入ってきた劉備を劉表が迎え入れる。
　劉表「この度は、劉備殿に刃を向けてしまい申し訳ありませんでしたな。全ては、内部の反乱勢力を一掃するための策だったのじゃ。真に申し訳ない事をした。ゴホゴホゴホ。すみませんな。最近寒くなりまして、咳が止まらんのですじゃ。ゴホゴホゴホ」
　劉備「劉表殿、無理をなさらないでくだされ。それにこちらも侵攻を受け逆侵攻した立場。この荊州を攻め取ろうとしたのです」
　劉表「ハハハ。その裏表のない性格が劉備殿の良いところですなぁ。ゴホゴホゴホ。この荊州牧の印をお受け取りくだされ。この劉景升、劉備殿に降伏いたしますゆえ。ゴホゴホゴホ」
　劉琦「父上、無理をなさらずにゴホゴホ」
　劉表「劉琦よ。お前もじゃ。ゴホゴホゴホ」
　劉備「この劉玄徳、劉表殿の降伏を受け入れましょう。2人とも奥でお休みくだされ」
　劉表「そうさせてもらいますじゃ。ゴホゴホゴホ」
　劉琦「父上、こちらです。ゴホゴホ」
　劉表と劉琦が下がる。
　荀彧「何とか2年で荊州を抑えることに成功しましたね殿」
　劉備「あぁ、荀彧や我が義弟たち、それに身命を賭して戦った臣下たちの賜物だ」
　義賢「兄上、まだ官渡の決着が付いていないことも我が軍に有利に働いていると考えられます」
　劉備「そうだな丁」
　孫乾が血相を変えて、転がり込んできた。
　劉備「孫乾、どうしたのだ？」
　孫乾「良かった殿。いえ、襄陽城の制圧、お喜び申し上げます。危急の案件にて、急ぎこちらに参った次第。官渡にて袁紹討ち死にとのことでございます」
　荀彧「では華北は曹操の手に？」
　孫乾「いえ、劣勢ではありますが後を継いだ袁紹の三男袁尚を兄の袁譚・袁煕が支え前線を持ち堪えております」
　義賢「仲の悪いと評判の袁家の三兄弟が手を取り合った？」
　孫乾「簡雍殿もこれは傑作だと笑っておられましたがそんなに仲が悪かったのですか？」
　荀彧「えぇ。父と母の愛情を受けず粗暴に育った長男袁譚。粗暴な袁譚に政略結婚はさせられぬとその道具とされた次男袁煕。父と母の愛情を一心に受けて育った三男袁尚。袁譚は力による実効支配。袁煕は流され主義。袁尚は兄たちの嫉みを受けていたと記憶しています」
　孫乾「そんな3人が手を結んだところで何か問題なのでしょうか？」
　荀攸「兄の袁譚は武力に関しては文醜・顔良のお墨付きを得るぐらいのもの。袁煕は智に関しては、今の袁紹軍において右に出る者がいない秀才。そして、袁尚は人を率いる才を持って生まれた党首の器と言えば、危険性がわかるのではないかな」
　孫乾「その三人が手を取り合ったら華北の情勢はまだまだ予断を許さない」
　義賢「そういうことだ。兄上、荊州の南の四郡について、事実上の降伏を得ています」
　？？？「一つよろしいですかな？」
　劉備「貴殿は？」
　？？？「これはこれは申し遅れました。性は向、名は朗、字を巨達と申す。徐庶と同じく司馬徽先生の元で学んだ門下生の1人と言えば良いかな」
　劉備「徐庶の。これは失礼致した向朗殿。して、何でしょうか？」
　向朗「荊州はこの動乱で山賊や盗賊が溢れ民を脅かしておる。この機に異民族が動き出すやもしれん。華北の情勢がどうなるかはわかりませんが先ずは足元を固めるのが先決と心得ます」
　劉備「確かにそうだな」
　向朗「劉備殿が物分かりの良い方で助かりましたぞ。この向朗、劉備殿を新たな主君とお仕え致しましょうぞ。最初の仕事として、この荊州の賢人を推挙したい。息子の向条ショウジョウ。我が甥で向寵ショウチョウ。その弟の向充ショウジュウ。荊州に名高き馬家の5常。長男、馬優伯常バユウハクジョウ・次男、馬秀仲常バシュウチュウジョウ・三男、馬賢叔常バケンシュクジョウ・四男、馬良季常バリョウキジョウ・五男、馬謖幼常バショクヨウジョウ。如何ですかな？」
　劉備「向朗よ。感謝する」
　向朗「これぐらい当然のこと」
　韓嵩「これも定め。私も劉備殿を殿とお仕え致しましょう」
　張允「水軍が必要なら言ってくれやと言いたいところだが１つ、頼みてぇことがある。俺の親友であり義兄でもある蔡瑁を推挙してぇ。だが、アイツは自身を責めて、隠居なんかしやがった。説得することができたら海上戦において優位に立てるはずだ。頼む」
　劉備「うむ。了解した」
　文聘「劉備殿を殿としてお仕え致す上で１つ頼みがある。我が永遠の主君、劉琮様の保護をお願いしたい。民に落とされたとはいえ、担ごうとする輩が居らぬとも限らない。そうならぬよう殿にお仕えさせる必要があるだろう」
　劉備「フフフ。良い、そう貶めるような言い方をするな。文聘よ。お前の主君はずっと劉琮だ。守ってやりたいのだろう。ここまで一本気の漢は信頼に値する。お前の言、喜んで受け入れよう」
　徐庶「さてと劉備殿。俺も1人推挙したい人間がいる。未だ伏して燻る龍。臥竜と称されし性は諸葛、名は亮、字を孔明と申す大賢人を」
　劉備「その名はかつて聞いたことがある。水鏡先生と呼ばれる人より『伏龍・鳳雛・蛇亀・翼虎を得れば、天下をあまねく平定できよう』と」
　徐庶「そうでしたか。その伏龍が孔明のことです。恐れながら蛇亀が俺のこと。そして、翼虎は殿も良く知る身近な人物です」
　劉備「何だと！？それは誰だ」
　徐庶「殿の弟君、劉丁義賢。又の名を翼を得た虎」
　義賢「えっ！？俺って、そんなすごいやつなの？」
　荀彧「成程、合点が行きました。通りで策の数歩先を進んでいられると思っていたのです」
　義賢「そっそれは(死に戻ることができて、より良い選択を選んでるなんて言ったら頭おかしい奴としか思われないよな。ていうか俺のご先祖様ってそんなすごい人だったのーーーーー)」
　徐庶「まぁ、それは置いておこうか。殿、孔明は蔡瑁殿の姪婿でもあるんだ。蔡瑁殿を説得する上でも孔明を配下に迎えることが先決だと思う」
　劉備「では、徐庶よ。連れてきてくれ」
　徐庶「それは無理だ。孔明は呼んだからと言って出てくる人間ではないよ。殿が臥竜崗まで足を運ぶ必要があるんだ。でも、その価値に見合う人間であることは断言する」
　劉備「わかった。では、今すぐに向かうとしよう」
　こうして劉備は伏龍こと諸葛亮の協力を得るべく臥竜崗へと赴くのであった。