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4章 三国鼎立

天下三分の計

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 地図には綺麗に色分けされていて、それはこの国の勢力図だった。
 劉備「これは見事な。この国の地図ですか?」
 諸葛亮「えぇ、まず華北では、冀州・并州・幽州の広大な領地と兵数を持ってる袁紹。中原では、青州・豫州・兗州・司隷を抑えている曹操。この2つが現在官渡にて、互いの覇権を賭けて競い合っています」
 劉備「有利なのは袁紹だと言ったら荀彧と丁に笑われましたな。曹操有利だと」
 諸葛亮「えぇ、袁紹は確かに広大な土地と兵を持っていて一見有利に思えます。ですが人材面では、曹操に遠く及びません。それに華北の名士の田豊や沮授。勇将として知られていた高覧。河間にて精神的主柱とまで言われた張郃らが劉備殿の元にいることも大きいでしょう。彼らが未だに華北に居たのなら、袁紹にとってはまだ良かったでしょう」
 劉備「成程、彼らを我が軍に加えてくれたのも丁だったな」
 諸葛亮「ですが曹操が有利かと言われるとそうとも言えないのです。北に兵を集めたい曹操ですが徐州には兗州襲撃の前科のある呂布がいて、青州と豫州と兗州を完全に空にすることはできず。涼州にて一大勢力を築いた馬騰に備えるため司隷も空にすることはできません。集められた兵は袁紹軍の10分の1程度かと」
 劉備「馬鹿な!?その兵力差で曹操は仕掛けたというのか」
 諸葛亮「えぇ。ですが仕掛けたということは勝つ算段があってのこと。そこは人材面で豊富な曹操に有利に働くでしょう」
 劉備「だが、我々は荊州を完全に掌握したとは言い切れない。劉表殿や蔡瑁殿のお陰で反乱分子たちを曹操の元に亡命させ、荊州北部は安全となっていたが荊州南部の1つ長沙の太守を任された張羨というものから荊州南部の至る所で反乱が発生していると聞いた」
 諸葛亮「えぇ。その通りです。荊州南部は、他の干渉を嫌います。それゆえ、独自の国家として、それぞれ台頭してきました。それが此度、劉備殿の領地となるにあたり、歓迎する領民とそれをよく思わない私腹を肥やした役人との間に対立を起こし、役人たちは山賊や異民族と結び反乱を起こしたのです。その中、私を訪ねられたのも一重に討伐に赴いた劉丁殿の負担を軽減するためなのでしょう」
 劉備「あぁ。丁は、義勇軍結成の時から今までまともな休みを取らぬ。そのくせ、私や義弟たちには休みを取り子を成せという。自分は董白との間に1人だけなのにな。荀彧や荀攸にも過労死するんじゃないかと疑われていた。任せるところは任せれば良いのだがなんでも自分でやろうとするのだ。それでも荀彧が我が軍に来てくれて、少しはマシになったと思っていたのだが」
 諸葛亮「それは劉丁殿が劉備殿のためになると思っているからでしょう。人は大切な人のためになら頑張れるものです」
 劉備「それで何度も意識を消失されていては、こちらは気が気ではないのだが」
 諸葛亮「ハハハ。わかる気がします。私も研究に没頭するあまり、倒れる黄月英を見て、ヤキモキしてしまう時がありますから」
 劉備「お互い、大変ですな」
 諸葛亮「えぇ、全く。話が脱線してしまいましたね。次に南に目を向けると益州に根を張る劉璋。漢中1つですが要害と五斗米道の巫女によって、繁栄している張魯。孫堅を快く受け入れ交州を治めている士燮。揚州南部にて勢力を拡大した孫策」
 劉備「どうして孫堅殿と孫策殿を分けた?」
 諸葛亮「孫堅は、劉備殿に娘を輿入れさせることで、劉備殿と娘との間に生まれた子が継げば良いという考える強かな虎。対して、孫策は野心を隠そうともしない凶暴な虎。手紙一つで許貢を殺し、民を扇動したと知るや于吉を徹底的に追い詰めようとして返り討ちに合うような無鉄砲さ。どちらの虎が恐ろしいかと言われれば、孫策でしょう」
 劉備「成程」
 諸葛亮「では、劉備殿は今後どう動くべきか。荊州南部の反乱を鎮めたのちは、益州か揚州、どちらに向かうべきと考えます?」
 劉備「うむ。孫策殿は、同盟相手である孫堅殿の長子。そして、我が妻である孫尚香の兄にも当たる。家族を攻めることなどできぬ。再び、同族攻めとなってしまうが益州の劉璋殿だろうな」
 諸葛亮「成程、それも一つの手といえましょう。では改めて、これを見てください」
 劉備「先程の地図だな」
 諸葛亮「えぇ、徐州・荊州を治めた劉備殿ですが安全地帯は無いに等しいといえます。曹操が華北を求めたのもその広大な領地と共に異民族以外の他国からの侵攻を受けにくいという利点もあるのです。対して、劉備殿は徐州は兗州・青州・豫州と接していて、荊州は益州と揚州と交州と司隷と兗州と接しています。即ち、曹操が劉璋・孫策・士燮と密かに軍事同盟を結んだ場合、全ての勢力から侵攻されることになります。これを防ぐため、劉璋と結び天下を三分するのです。北の曹操・益州の劉璋・江東の劉備殿。これを天下三分の計と言います」
 劉備「天下三分の計!しかし、孫策殿を倒すことは劉璋殿を倒すことよりも困難だろう。その間に劉璋殿が曹操に喰われるのではないか?」
 諸葛亮「えぇ、ですから猶予はそこまで多くはないでしょう。曹操が華北を制し南下を開始するまでといえます」
 劉備「それを可能にするためには諸葛亮先生の力を是非ともお借りしたい。この私にその知恵をお貸しくださいませんか」
 諸葛亮「このような田舎者にそこまで礼節を尽くしてくださるとは、わかりました。この諸葛孔明。これよりは、劉備殿を我が主君と仰ぎ、誠心誠意お支え致しましょう」
 劉備「おお、なんと協力してくださるか。本当に感謝する。これからよろしく頼む諸葛亮よ」
 諸葛亮「はい。お任せください殿」
 まさかの孫策を倒しての天下三分の計。そんなことが可能なのだろうか?
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