えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

4章 三国鼎立

官渡前哨戦 延津の戦い(前編)

　白馬の攻略に失敗したことを聞いた袁紹は自ら延津攻めをするべく行動を開始する。
　袁紹「アレだけの兵を渡しておいて、失敗しただと郭図！」
　郭図「申し訳ありません。しかし、聞いてくだされ殿。淳于瓊が攻め切らなかったのです。その動きはまるで敵方に内通しているかのようでしたぞ。なっ蒋奇・孟岱」
　蒋奇「ヒッヒッヒ。まさに」
　孟岱「やる気が感じられませんでしたな。デュフフ」
　淳于瓊「貴様ら何を言っている！」
　呂威璜「確かにいつもの淳于瓊らしくなかった。敵を天晴れと褒め称えたりと」
　袁紹「成程、疑わしきは罰せよだ。だが、淳于瓊は貢献度も大きい。よって、此度は鳥巣うそうの兵糧守備の任を命じる。呂威璜、お前には淳于瓊の見張りを任せる」
　淳于瓊「殿、俺は決して内通など。これは郭図が俺を貶めるために」
　袁紹「くどい。とっとと烏巣に迎え」
　呂威璜「何で俺が見張りなど」
　淳于瓊「殿、後悔しますぞ。殿ーーーー」
　郭図「ククク(やれやれ、責任を押し付けることには何とか成功した)」
　袁紹「頼りにならん部下どもめ。こうなればワシ自ら延津を攻め落として格の違いを見せつけてくれるわ。栗成リツセイ・崔巨業サイキョギョウ・厳敬ゲンケイ・陶升トウショウそれに張導チョウドウ、付いてこい」
　栗成「了解した」
　崔巨業「占いを行ったところ吉と出ました。必ずや延津を落とせましょうぞ」
　厳敬「さーて、暴れてやるとするか。なっ陶升」
　陶升「うむ。敵対していた黒山賊である我らを許して拾ってくださった袁紹様に恩を返さねばならんからな」
　張導「・・・」
　袁紹「張導、不満があるようだな(こいつめ曹操の保護した献帝から官職を賜ったこと許さぬ。ここにくる途中で部下に命じて一族郎党皆殺しにして、こやつの妻は兵士の慰み者にしておいたしな。せいぜい使い潰してくれるわ)」
　張導「いえ。考え事をしていました。申し訳ありません(何も知らぬと思っているようだな。妻に狼藉を働き、我が息子や父を殺したことを許さん。お前の思い通りにはさせん)」
　袁紹「そうか。眭元進スイゲンシン・韓莒子カンキョシ・趙叡チョウエイの3人は、烏巣の守りを固めよ」
　眭元進「お任せください」
　韓莒子「兵糧を滞りなく送りましょう」
　趙叡「輸送は任してくだされ」
　こうして、袁紹は延津に向かう。だが、これこそが郭嘉が描いた絵図の通りだった。
　曹操「何！？延津を敢えて捨てる？」
　郭嘉「あぁ、その方がいいと思ってね」
　曹操「うむ。だが、誰も守っていなければ、本初のやつでも疑うだろう。適任は、成程な。裏切って戻ってきた奴らを使うということか」
　郭嘉「流石曹操殿だね。裏切って旗色が悪くなったから張楊を殺して、降ってきた奴らなんて、またいつ裏切るかわからない。それに、今回は裏切られても痛くない。だって、あくまで狙いは、延津を袁紹に落とさせることなんだからさ」
　曹操「その先は、囮の荷駄隊を用いて、本初の隊列を乱して、討ち取るって事だな」
　郭嘉「流石、曹操殿。袁紹さえ討ち取れば、仲の悪い袁紹の子供達が仲違いをし始めて、楽に華北を抑えられるってね」
　曹操「本初よ。さぁ、来るがいい」
　延津を曹操から任されたのは、蕭建・劉何・楊醜・繆尚・薛洪という張楊と共に一度は兗州騒乱の際に呂布に寝返ったものたちであった。2度あることは3度ある。彼らは、袁紹の大軍を見ると曹操が寡兵に見え、寝返る算段を考えていた。そこに来て、5人での延津防衛である。願ってもないことだった。だが、すぐ寝返っては袁紹軍での立場が無い。少し力を見せつけてから降伏するため防備を整えはしていた。
　蕭建「曹操も馬鹿だな。また寝返りを考えている俺たちをそろって延津に充ててくれるなんてな」
　劉何「それに見たか。あの頼む大事な要所なんだって顔」
　楊醜「その拠点もろとも袁紹に寝返られるってのにな」
　繆尚「だが、すぐ寝返れば袁紹軍での立場はなかろう」
　薛洪「なら、睨み合い程度の時間を稼げば良いのでは。半年も睨み合いをすれば良いだろう」
　だが予想に反して、攻撃に対して迎撃はするがコチラを攻撃してこない事が裏目となり、袁紹は何か策なのでは無いかと1年も膠着することとなり、その間、曹操からも援軍が来ないこともあり、とうとう痺れを切らした蕭建が袁紹に降伏の使者を出すのだった。
　袁紹「延津を攻めるのだ」
　蕭建「袁紹軍が来たぞ。防備を固めろ」
　栗成「突撃せよ」
　劉何「近づかせるな岩を落とせ」
　崔巨業「張導、危ない。そこは大凶だ。一度引くのだ」
　張導「すまん。助かった」
　袁紹「うーむ。あの岩をもう少し後で落とせば張導を仕留められたものを。何故、わざわざ大声で岩を落とすぞなどと言う？もしや、何かの罠であろうか？物量はコチラの方が上。ここはゆるりと包囲で良かろう」
　繆尚「おい。どうなってんだ。敵さん、最初こそ執拗に攻めてきたのに、今度は全くといって良いほど動きがねぇぞ」
　薛洪「もう、あれから一年になる。このままだと、渡された食料の方が先に底をつく」
　蕭建「もう、攻撃してくれればコチラとすれば降伏するだけなのだが」
　劉何「悠長に待ってたら、食料が無くなって餓死してしまう」
　楊醜「もう、良いだろう。降伏の使者を出さぬか」
　蕭建「うむ。やむおえん。そうしよう」
　延津から白色の旗を持って出てきた兵士を見る袁紹。
　袁紹「あれは、どうやら使者のようだな。さては延津を守る将め。この兵糧攻めに耐えられなかったと見える。孟徳の奴も援軍を送らず。見限られたのであろうな」
　袁紹の読み通り、この使者は降伏の手紙を持ってきたので袁紹はこれを了承。延津を手に入れることに成功する。だが、これを遠くでずっと待ってる者がいた。郭嘉から囮の荷駄隊を率いる役目を命じられた。夏侯淵・許褚・典韋の3人である。囮と相手にバレぬよう側近に任せるという徹底ぶりであった。