えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

4章 三国鼎立

霧の中の大船団

　物資の補充を策により、孫権の率いる呉の水軍から集めた劉琮は、高らかに反撃を宣言する。
　劉琮「不足していた物資の補充もできました。これより、呉の水軍に反撃します。船頭さんたちには、危険なことにお付き合いさせて申し訳ありませんがこの霧の中、見通しの悪い中、我々の先導をお願いします。プフッ。船頭に先導って。アハハハハ」
　蒯越「確かに思いましたがそこは堪えてくだされ劉琮様」
　劉琮「ごめんなさい。可笑しくって、でも皆んなの緊張も解けたよね。この戦は、荊州を守る。ううん。我が養父である劉備様を守るための戦い。ここを抜かれたら今、皆んなの守るべき家族も、守りたいものも無くなっちゃう。そんなの絶対に許しちゃダメ。私たちがノコノコと攻めてきた呉の水軍に2度と攻めようなんて気が起こらないぐらい徹底的にやるの。でも、虐殺はダメ。海に落ちた敵の兵士であっても救出して捕虜にすること。これだけは守ってね。わかった」
　船頭「そういう優しいところが最高に可愛いぜ劉琮ちゃーん」
　荊州水軍兵「敵であっても慈悲をかける劉琮ちゃん。ゴホン。劉琮様、尊い」
　蒯越「やれやれ、なんでもこなせるようになってしまわれた劉琮様の参謀など務まるか分かりませんが、策は任せなされ」
　蒯良「久々の実戦で兄上も緊張していたのではないですか？」
　蒯越「良は、一言多いのだ」
　劉琮「みんなで、この国を守ろう。先ずは、甘寧叔父さんと合流して、黄祖のいる中央に。そこから左右に蒯越と蒯良が展開、蔡瑁叔父さんと張允、特に張允の方は念入りにお願いね。最悪、作戦すらまともに理解できてないかもだから」
　蒯越「お任せを」
　蒯良「了解しました」
　霧の中にある船団の船影は見えようとも、それが動いているかまではわからない。なぜなら、後方では未だ漁師たちが援護になるかもしれないとありったけの漁船やら小舟やらを出しまくって、数の動きがわからないようにしていたのである。
　漁師A「あんな華奢な身体で、劉琮ちゃんが頑張ってんだ！俺たちだけ安全なところへなんて、行けねぇよなぁ？」
　漁師B「勿論だ。何かの援護になるかも知れねぇ！ここで、グルグルと回るぜ」
　この漁師たちの援護が孫権軍を更なる恐怖に陥れていた。
　孫権「馬鹿な！？また増えた？いや、そもそもこの霧の中、まともな数など把握できるわけがない。なのに、増えたかもしれないとわかる。これほどの恐怖があろうか。どうしたら良いのだ。早く兄上と合流しなければならないというのに」
　呂蒙「焦る気持ちはわかりますが、この霧の中、動くのは得策ではありませぬ。それに孫策様のこと、孫権様を待っていてくださる」
　朱桓「まぁ、なんやかんやそうなんじゃないですか(孫権様のことが好きすぎて、放任しすぎてるからな孫策様は、その癖、酒癖悪いってんだからどうしようも)」
　顧雍「やはり、先程のはおかしい？何かよからぬことが起こるのではないか？あの霧の中、自由に動けるのなら、攻撃を加えられたはず」
　董襲「ごちゃごちゃと煩いやろうだ。俺たちに恐れをなして、逃げたって言ってんだろうが！」
　吾粲「少し黙っていて貰いたい。顧雍殿が考えておられるのだ！」
　蒋欽「考える考えるってそればっかりだな。戦は頭じゃなくて、力なんだからよ。黙って見てろ」
　闞沢「周瑜殿のことは、孫策様の義兄弟だから何も言えん貴様らに力だなんだと言われる筋合いなどない」
　周善「うるせぇ、あの人は頭だけでなく力もある珍しい御方なのだ！」
　孫権「騒ぐなと言っただろう！身内で言い合いをしてなんになる！ここは戦場だ！顧雍達は策を考え、蒋欽たちは武を奮う。それだけのことだ！」
　呉水軍兵A「ありゃ。なんだ？船影が動いてる？」
　呉水軍兵B「おいおい、おかしくなっちまったんじゃねぇか。今まで、船影が動いたことなんて。！？」
　呉水軍兵C「火を纏った船が突撃してくるぞ！」
　呉水軍兵D「もう無理だ。海に飛び込め！」
　ドカーンという音がして、最前線にあった呉の船が激しく燃える。燃えた船から飛び降りた兵は、荊州水軍に救出され捕虜として捕まる。開戦の合図である。
　劉琮「甘寧叔父さん」
　甘寧「おぅ、劉琮。ん？なんだ艶っぽくなってんじゃねぇか？好きな奴と進展したのか？」
　劉琮「もう。茶化さないでよ！それより、用意はできてますか？」
　甘寧「あぁ、小舟を数隻。燃えやすい物と一緒に火薬樽も乗せてるぜ。敵に当てれば、ドカーンと派手に奇襲の大成功だな」
　蘇飛「奇襲に派手も何もないだろう。劉琮様、矢の方は申し訳ありません」
　劉琮「それは、こちらで集めました」
　甘寧「おっ。なら作戦開始ってところか？」
　劉琮「はい。それにしても蔡瑁叔父さんや黄祖はともかく張允も動かなかったのは、作戦が失敗せずによかったです」
　甘寧「まぁ張允のことだ。黄祖のオッサンと蔡瑁に合わせると思ってたから心配はしてなかったけどよ」
　劉琮「成程、では盛大にやりましょう」
　甘寧「おぅ」
　さらに黄祖と合流する。
　黄祖「劉琮様、ワシのことを心配してくださったのですかな？」
　劉琮「ううん。作戦を伝えに。ゴニョゴニョ」
　黄祖「ほぅほぅ。それはいいですなぁ。すぐに蔡瑁と張允にも」
　劉琮「それは蒯越と蒯良がしてくれるから」
　黄祖「では、我々も動くとしますか？」
　劉琮「えぇ」
　劉琮の作戦は至ってシンプルである。まずは火船にて、盛大に前線を焼き、海に飛び込んだ呉の水軍兵を救出して捕える。その間に、左右から包囲を狭めて、火矢の雨を降らせる。要は燃やして壊滅させるだけである。