えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
462 / 821
5章 天下統一

追い立てられる朱褒と雍闓

しおりを挟む
 朱褒と雍闓は、益州郡から引き入れるだけの全ての兵と兵糧を集めて、寝返った高定を討つため越巂郡へと攻め上がった。その数、3万。永昌郡の雲南を本拠とする孟獲は、密偵を放っていた朶思大王の手の者からこの報告を聞くと雲南の守備を孟優に任せ、木鹿大王・兀突骨・朶思大王ら名だたる将を連れて、手薄となった益州郡へと攻めかかる。その数1万。越巂郡にて、籠城する高定の兵は、僅か2千。南側における劉璋の支持率は高く。それは越巂郡でも例外ではない。当初、籠城していた兵は1万はいたのだが次々に離反し僅か2千となった。しかし、これ以上の離反者が出なかったことを考えれば、この2千は信頼のおける兵といえる。敵が策士ならあえて潜ませておく手も使うが、朱褒と雍闓は、そこまで頭が切れる相手ではない。早々に包囲し、高定から寝返った兵と道中の村々からの徴兵で、兵数が倍の6万にも膨れ上がった朱褒と雍闓の反乱軍は、高定の籠る越巂郡の邛都《きょうと》城を取り囲んでいた。

 雍闓「高定、お前のことを信用できない兵と人民の多いことだなぁ!」

 高定「喚くしかできん猿に従う奴らの多いことに嘆いている。劉璋様は既に居ない。劉璋様の御子息である劉循様に仕えるのは当然だろう!」

 朱褒「劉備に良いように使われている劉循様ではなく、我らが手に劉循様を取り戻すのだ」

 高定「成程、それがお前たちの言い分か。考えたものだな。そうやって民を誑かせたのだろう!」

 雍闓「喚いてるのはだっただろうな!この結果が物語ってるだろう。俺たちを支持する者たち。なぁ?」

 反乱軍の兵「うおおおおおおおおおお!劉璋様を殺した裏切り者を殺して、劉循様を取り返す」

 高定「残念だ」

 朱褒「高定よ。昔の誼だ。降伏するなら命だけは助けてやろう」

 高定「断る。例えここで死ぬことになろうとも俺の死を糧として、劉循様がお前たちの反乱を鎮圧するだろう」

 朱褒「劉循様には、ワシらの新しい旗頭となって」

 その時、地面がまるで振動するかのように、揺れる。

 ???「反乱軍の朱褒と雍闓だな。益州総督の名の元に貴殿らを処罰する。張任・呉懿、反乱に加担した者に容赦は必要ない。全て打ち倒すのだ!」

 張任「はっ。劉循様の命の元に、貴様らを殺してくれる。張任、参る」

 呉懿「やっと落ち着いた益州を乱す害虫ども、覚悟せよ」

 兵を率いて討伐に来たのが劉循だと聞いて、慌てふためくのは、朱褒・雍闓の反乱軍である。

 朱褒「そんなまさか!?魏王が動いている中で、成都を空にして、高定如きの救援に!?」

 雍闓「劉璋様の御子息でありながら劉備に尻尾を振るというのだな劉循様?」

 劉循「父に恩を感じ、謀反を起こしたことは知っている。だが、父の行いは褒められたことではない。恩があろうとも民のことを思うなら反乱など起こさなかっただろう。お前たちは父への恩を盾に取り、民たちを戦へと駆り出した。許されることではない。お前たちに死を賜る!」

 朱褒「それは飲めませんな。俺たちの主君は、あくまで劉璋様であり貴方ではありませんからな」

 雍闓「そういうことだ。お前たちもそうだよな?」

 反乱軍の兵「・・・・・・。。。。劉循様、今武器を置きますからどうか命だけは」

 劉循「それを飲むことはできない。ここの土地の民は、父の影響力が大きい。その言葉は今だけの一時の言葉だろう」

 反乱軍の兵「そんなことは、、、、。。。俺たちは、劉循様を劉備から助かると聞いて」

 劉循「劉備様だ!父は負けたのだ。父の統治よりも劉備様の統治は優れている。焼き尽くされた巴郡の復興も進んでいる。それら全て、国庫を女で使い果たした父に代わって、建て替え、支援してくれたのは誰だと思っている。お前たちが呼び捨てで呼ぶ劉備様だ。さらに俺の妹を側室に迎えることで、この地の統治を俺に任せてくれる大義名分をも与えてくれた。何も考えず朱褒と雍闓の戯言に従い、反乱を起こす者などこれからの統治の邪魔でしかない!断じて許さん!だが、武器を置いた非戦闘員を殺せば、劉備様が悲しまれるだろう。劉備様の慈悲に免じて、悔い改めると言うのなら此度は許してやる。だが、次はないぞ!」

 反乱軍の兵「はっはい。誠心誠意、劉循様。いえ、劉備様に感謝致します」

 雍闓「な、な、何いってんだ!劉循様は劉備に騙されてんだ。俺たちが助けんだよ。おい、お前ら何処に!?」

 朱褒「こうなっては、戦えん。雍闓、益州郡に帰り、籠城するぞ」

 雍闓「朱褒の旦那!わかったよ。高定、覚えてやがれ」

 高定「逃げられるとでも?鄂煥、守りは終わりだ。打って出るぞ」

 鄂煥「御意」

 劉循「逃がさん!全軍、逃げた朱褒と雍闓を追うのだ!」

 呉懿「このまま追いつかない程度に追うで良いのだな魏延殿?」

 魏延「あぁ、この戦は劉循様に手柄を立てさせるのが目的だ。孟獲のことだもう動いてる頃だろう。後は、追い込まれた2人を」

 鄂煥「うおおおおおおお!」

 張任「あの2人は作戦を理解していませんがどうされます?」

 虎熊「オラァ」

 飛び出した鄂煥と高定に虎熊のラリアットが炸裂する。

 魏延「虎熊、良くやったと言いたいが2人とも目を回して、話ができる状態じゃないな」

 虎熊「魏延の兄貴、すまねぇ。止めねぇと作戦が破綻するって言ってたからよぉ」

 魏延「まぁ、良いだろう。終わった後にでも説明すれば、このまま連れて行こう」

 法正「作戦が破綻するよりはマシですな」

 こうして、追い立てられた朱褒と雍闓は、更なる絶望に突き落とされるのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...