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5章 天下統一
兗州北部の状況
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華北にて民衆による大規模反乱が起こり、曹丕が捕えられ、曹操を新たな華北の統治者に押し上げるべく、兵たちも進んで鄧艾らに協力を決めた。
その数は華北を守る兵70万、兗州に攻め込む兵30万となった。
これは、現在華北で兵を統治できるものが鄧艾らを置いて、他にいなかったこと。
元袁尚配下の殆どが曹丕に対して、多大な恩を受けていたことから、曹丕を助けに動く可能性もあったことなど。
理由は多岐にわたる。
これらの解決のため、華北を誰に預けるかと言う問題が起こっていると同時に鄧艾はかつての同僚である男の動向に注視していた。
鄧艾「華北の民衆や兵たちを味方につけることはできたが」
賈詡「事ここに至ってまで、曹丕を裏切れないという将の多い事だ。この器の広さは司馬懿には無いところであろう」
夏侯玄「確かに司馬懿は、諫言を多く用いたことから政治家たちにも線引きされていた。鍾繇は稀有な存在と言える」
鄧艾「耳の痛い話だ。かつては俺もその司馬懿を父と慕い、その下で学問を学んでいたのだ。だが、同僚を侮るべきでは無い。一刻も早く、陳留に圧迫をかけねば、曹操様が討ち取られかねん」
賈詡「鄧艾殿の同僚とは、鍾会のことか?」
鄧艾「あぁ。あの男を侮れば、曹操様に死が迫ろう」
賈詡「確かに華北の盤面は覆ったとはいえ。曹操殿が南。我らが北と兗州を挟んで分断されていることに変わりはないか」
夏侯玄「ふむ。それにしてもあのような聡明な男が何故、司馬懿に付き従うのか。未だにわからない」
鄧艾「それは、アイツが司馬懿以上に尖ってる男だからだ」
賈詡「尖っている?」
鄧艾「あぁ。司馬懿なんかよりも突き抜けて陰険ってことだ。今頃、ほくそ笑みながら曹操様の迎撃に向かっているかと思うと恐ろしい」
賈詡「しかし、こうも曹丕を支持する将が多くては、将と兵との間で、衝突が起きる可能性もある。如何したものか」
頭を悩ませる3人の元に1人の男がやってきた。
???「相当、兄貴の扱いに参ってるようだな」
鄧艾「貴方は、曹彰様!」
夏侯玄「確か、北方の異民族に動きがあり、長らくこの地を後にしておられたはず」
曹彰「まぁ、あぁでも言わねぇと、な。権力に取り憑かれた兄貴から逃げられねぇと考えたわけよ。俺、頭悪いからよ。武の方で貢献してれば、文句も言われねぇし身体も鈍らせねぇしで、一石二鳥だったわけよ。それにしても植の奴にあんな勇気があったとは恐れ入ったぜ。兄貴に対して、跡目戦争を仕掛けるなんてよ。まぁ、結果は散々だったみたいだが頑張ったんじゃねぇのアイツにしては。今は、部屋に軟禁状態で、詩をしたためてるんだったか?」
賈詡「そうか。かつて曹丕と争った曹植殿なら確かに適任かもしれません。曹丕が強奪した袁煕の嫁を取り合ったという噂。袁尚配下の者の中にも曹丕と争った胆力から一目置いてる者も居るか」
夏侯玄「確かに適任と言えば適任だが。補佐する者が居なければ、この問題を解決するには至らんよ」
鄧艾「何処かに屈強な護衛ができる男が暇していたら良いんだが」
曹彰「そんな屈強な男が。って、なんで一斉に俺の方を見るんだよ!やらねぇぞ。そんなめんどくさいこと」
鄧艾「そうか。なら俺がやるしかないか」
賈詡「鄧艾殿を欠いて、制圧できるほど兗州は甘くない。仕方ないここは俺が」
夏侯玄「武の鄧艾殿に智の賈詡殿は、それこそ兗州攻略に欠かせない人材。ここは」
曹彰「待て待てーい。そんなに言うなら俺が」
鄧艾・賈詡・夏侯玄「どうぞ。どうぞ」
曹彰「あっ!しまった。俺としたことがつい乗せられちまったーーーーー!!!チクショー、テメェらずりぃぞ。クソッタレ!あぁ、もう。引き受けちまった以上、植のことはなんとか武で補佐してやる。でも、俺に頭はねぇぞ。植もそう言う計略に明るいってわけじゃねぇし。そこはどうすんだよ」
???「僕で良ければ力をお貸ししましょうか?」
その言葉に振り返るとそこにはまだ年端も行かない少年が立っていた。
曹彰「ったく。ガキかよ。ガキにまで心配されるとは、とうとう終わってるかもしれねぇな」
???「確かに頼りならないかもしれませんが、叔母と2人で良ければ補佐できると思いますよ」
曹彰「あぁ?叔母だ?今度は女かよ」
???「全く失礼しちゃうわね。さっきから聞いていたら。いつからそんなに偉くなったのかしら曹彰坊ちゃん」
曹彰「こ、こ、こ、この声は」
ガタガタと震え出す曹彰。
???「貴方は何度私の計略に引っかかったかしら?」
曹彰「匈奴の女軍師。あれは全て模擬戦。俺がわざと騙されてやったまでのこと」
???「へぇ。草むらから一斉に飛び出されて、情けなくしょんべん」
曹彰「わー。わー。わー。蔡文姫様、そんな。ね。ほら。部下たちの前ですから。ね」
蔡文姫「あら。後ろの人たちは、いつから貴方の部下になったのかしら?彼らは曹操様の部下なんじゃなくて?」
曹彰「ひぃっ。もう、やめてくれ。だからアンタは苦手なんだよ」
蔡文姫「まぁ。泣きべそかきながらお兄ちゃんに殺される~と逃げてきた可愛い坊ちゃんが誠心誠意、お願いするのなら力を貸してあげなくもないわよ。私の甥っ子の羊祜と共に、ね」
曹彰「数々の無礼、大変失礼しました。蔡文姫様さえ良ければ俺と共に弟のことを補佐してください。お願いします」
蔡文姫「宜しい。やればできるじゃない。根は素直なんだから。尖っちゃダメよ曹彰」
曹彰「は。はい」
この光景に鄧艾・賈詡・夏侯玄の3人は、唖然となっていた。
曹彰がさっきまでと別人のように、すっかり覇気もなくなり意気も消沈していたからである。
それだけで目の前のあったこともない匈奴の女軍師が相当やり手であることが分かったのである。
彼らは、曹植・曹彰・蔡文姫・羊祜らに華北を任せると陳留北部へと向かったのである。
その数は華北を守る兵70万、兗州に攻め込む兵30万となった。
これは、現在華北で兵を統治できるものが鄧艾らを置いて、他にいなかったこと。
元袁尚配下の殆どが曹丕に対して、多大な恩を受けていたことから、曹丕を助けに動く可能性もあったことなど。
理由は多岐にわたる。
これらの解決のため、華北を誰に預けるかと言う問題が起こっていると同時に鄧艾はかつての同僚である男の動向に注視していた。
鄧艾「華北の民衆や兵たちを味方につけることはできたが」
賈詡「事ここに至ってまで、曹丕を裏切れないという将の多い事だ。この器の広さは司馬懿には無いところであろう」
夏侯玄「確かに司馬懿は、諫言を多く用いたことから政治家たちにも線引きされていた。鍾繇は稀有な存在と言える」
鄧艾「耳の痛い話だ。かつては俺もその司馬懿を父と慕い、その下で学問を学んでいたのだ。だが、同僚を侮るべきでは無い。一刻も早く、陳留に圧迫をかけねば、曹操様が討ち取られかねん」
賈詡「鄧艾殿の同僚とは、鍾会のことか?」
鄧艾「あぁ。あの男を侮れば、曹操様に死が迫ろう」
賈詡「確かに華北の盤面は覆ったとはいえ。曹操殿が南。我らが北と兗州を挟んで分断されていることに変わりはないか」
夏侯玄「ふむ。それにしてもあのような聡明な男が何故、司馬懿に付き従うのか。未だにわからない」
鄧艾「それは、アイツが司馬懿以上に尖ってる男だからだ」
賈詡「尖っている?」
鄧艾「あぁ。司馬懿なんかよりも突き抜けて陰険ってことだ。今頃、ほくそ笑みながら曹操様の迎撃に向かっているかと思うと恐ろしい」
賈詡「しかし、こうも曹丕を支持する将が多くては、将と兵との間で、衝突が起きる可能性もある。如何したものか」
頭を悩ませる3人の元に1人の男がやってきた。
???「相当、兄貴の扱いに参ってるようだな」
鄧艾「貴方は、曹彰様!」
夏侯玄「確か、北方の異民族に動きがあり、長らくこの地を後にしておられたはず」
曹彰「まぁ、あぁでも言わねぇと、な。権力に取り憑かれた兄貴から逃げられねぇと考えたわけよ。俺、頭悪いからよ。武の方で貢献してれば、文句も言われねぇし身体も鈍らせねぇしで、一石二鳥だったわけよ。それにしても植の奴にあんな勇気があったとは恐れ入ったぜ。兄貴に対して、跡目戦争を仕掛けるなんてよ。まぁ、結果は散々だったみたいだが頑張ったんじゃねぇのアイツにしては。今は、部屋に軟禁状態で、詩をしたためてるんだったか?」
賈詡「そうか。かつて曹丕と争った曹植殿なら確かに適任かもしれません。曹丕が強奪した袁煕の嫁を取り合ったという噂。袁尚配下の者の中にも曹丕と争った胆力から一目置いてる者も居るか」
夏侯玄「確かに適任と言えば適任だが。補佐する者が居なければ、この問題を解決するには至らんよ」
鄧艾「何処かに屈強な護衛ができる男が暇していたら良いんだが」
曹彰「そんな屈強な男が。って、なんで一斉に俺の方を見るんだよ!やらねぇぞ。そんなめんどくさいこと」
鄧艾「そうか。なら俺がやるしかないか」
賈詡「鄧艾殿を欠いて、制圧できるほど兗州は甘くない。仕方ないここは俺が」
夏侯玄「武の鄧艾殿に智の賈詡殿は、それこそ兗州攻略に欠かせない人材。ここは」
曹彰「待て待てーい。そんなに言うなら俺が」
鄧艾・賈詡・夏侯玄「どうぞ。どうぞ」
曹彰「あっ!しまった。俺としたことがつい乗せられちまったーーーーー!!!チクショー、テメェらずりぃぞ。クソッタレ!あぁ、もう。引き受けちまった以上、植のことはなんとか武で補佐してやる。でも、俺に頭はねぇぞ。植もそう言う計略に明るいってわけじゃねぇし。そこはどうすんだよ」
???「僕で良ければ力をお貸ししましょうか?」
その言葉に振り返るとそこにはまだ年端も行かない少年が立っていた。
曹彰「ったく。ガキかよ。ガキにまで心配されるとは、とうとう終わってるかもしれねぇな」
???「確かに頼りならないかもしれませんが、叔母と2人で良ければ補佐できると思いますよ」
曹彰「あぁ?叔母だ?今度は女かよ」
???「全く失礼しちゃうわね。さっきから聞いていたら。いつからそんなに偉くなったのかしら曹彰坊ちゃん」
曹彰「こ、こ、こ、この声は」
ガタガタと震え出す曹彰。
???「貴方は何度私の計略に引っかかったかしら?」
曹彰「匈奴の女軍師。あれは全て模擬戦。俺がわざと騙されてやったまでのこと」
???「へぇ。草むらから一斉に飛び出されて、情けなくしょんべん」
曹彰「わー。わー。わー。蔡文姫様、そんな。ね。ほら。部下たちの前ですから。ね」
蔡文姫「あら。後ろの人たちは、いつから貴方の部下になったのかしら?彼らは曹操様の部下なんじゃなくて?」
曹彰「ひぃっ。もう、やめてくれ。だからアンタは苦手なんだよ」
蔡文姫「まぁ。泣きべそかきながらお兄ちゃんに殺される~と逃げてきた可愛い坊ちゃんが誠心誠意、お願いするのなら力を貸してあげなくもないわよ。私の甥っ子の羊祜と共に、ね」
曹彰「数々の無礼、大変失礼しました。蔡文姫様さえ良ければ俺と共に弟のことを補佐してください。お願いします」
蔡文姫「宜しい。やればできるじゃない。根は素直なんだから。尖っちゃダメよ曹彰」
曹彰「は。はい」
この光景に鄧艾・賈詡・夏侯玄の3人は、唖然となっていた。
曹彰がさっきまでと別人のように、すっかり覇気もなくなり意気も消沈していたからである。
それだけで目の前のあったこともない匈奴の女軍師が相当やり手であることが分かったのである。
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