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5章 天下統一
陶商の矜持
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ここ徐州で1番の商会を持つまでになったかつて徐州を治めていた陶謙の長子である陶商。
これは、彼が蔡文姫の手紙を受け取る少し前の話である。
大きめの荷台に見た目ではわからない隠し戸があり、その後ろには、人が十分に寝転べる程のスペースを用意したカモフラージュ満載の馬車。
本来の目的は、遠くに商品を運ぶ際に自分が寝られるように作ったスペースだが人を運ぶこともあると考えた陶商は、快適かつ安全を期すべく、さらにその床を外すことで、下にも奥行きを作り出した。
奴隷商人なら誰もが欲しがるこの荷台のある馬車。
これを制作したのは、諸葛亮の妻である黄月英と劉曄の友人である馬鈞だった。
色々な人を無事に脱出させてきたこの馬車だが老朽化に伴い、新しく作り直すかどうか陶商は頭を悩ませていた。
というのも劉義賢の新たなアイデアによって、配送屋と郵便屋が作られたのである。
配送屋というのは、荷物を届けるのを専門とする職業で、郵便屋というのは、手紙を届けるのを専門とする職業である。
陶商が数年ほど前に預かった子供たちの中で成人した兄妹がいて、彼らのために何かできることはないかとまだ彼らが小さい時に顔合わせを兼ねて劉義賢に相談したのがきっかけだった。
義賢「久しいな陶商。此度の訪問、とても嬉しく思う。さぁ、入ってくれ董白も喜ぶ」
陶商「失礼します」
陶商の背に隠れて2人がどうしようかと悩んでいる。
この2人が後に配送屋と郵便屋になる兄妹である。
その後ろにも多くの子どもたちが居た。
義賢「これは可愛いお客さんたちだな。さぁ、遠慮せずに入ってくれ。それにしても陶商に全く似ていないし、これ程子沢山であったか?あぁ、あの目の見えない御仁の連れていた」
陶商「はい。お察しの通り、義妹の連れていた子供たちです。今は、多くの子どもたちに読み書きと計算を教えていまして、この2人はとにかく物覚えが早いので顔合わせの代表として、ほら挨拶をしましょうか」
双子の兄「は、は、は。初めまして」
双子の妹「こ、こ、こ。こんにちは」
義賢「シャイなようだ。あっ。シャイというのはな。恥ずかしがり屋さんという意味だ。そう緊張する必要はない。親戚のおじさんに会ったみたいに気楽で構わない。子供というのは、そういうものだからな。変に気を違うことはないぞ。さぁ、一緒にご飯を食べよう」
双子の兄「こんなにたくさん居ますけど」
双子の妹「良いのでしょうか?」
義賢「賑やかで、董白も喜ぶ。アイツは、俺なんかよりも子煩悩だからな」
董白「ぎ・け・ん。聞こえてるわよ~」
義賢「別に悪口を言っていたわけではないのだから良いだろう」
董白「子供に甘いのが私だけだなんて言わないでよね。貴方だって牝愛にメロメロじゃない」
義賢「ギクッ。仕方がないだろう。君に似て可愛い娘なんだから。メロメロにもなる」
董白「私に似て可愛いだなんて、ポッ」
双子の兄「お姉ちゃんの顔が真っ赤になった!」
双子の妹「ホントだ。りんごほっぺだ」
董白「もう。揶揄わないで。ほら。一緒にご飯を食べましょう」
双子の兄「やったー」
双子の妹「やったー。あれっ。背中に赤ちゃんがいる!可愛い」
董白「牝愛っていうのよ。ほら挨拶してあげて」
牝愛「キャッ。キャッ」
こうして子供達を董白が連れて行き2人きりとなる劉義賢と陶商。
義賢「あの子たちの将来に関して、俺に話があるのだろう?」
陶商「!?お分かりになられていたのですか?」
義賢「優しいお前のことだ。両親を戦争で亡くしたあの子たちには平和に生きて欲しい。だが、所詮は乱世。どこにいても巻き込まれるしお金という先立つものが必要だ。違うか?」
陶商「全く、敵いません。そこまでお分かりとは」
義賢「あの子たちは読み書きと計算はできるのだな?」
陶商「はい。それが何か?」
義賢「陶商、放浪売りは一旦やめ。いやお前のことだやめないな。放浪売りをしながらで良い。商会を持て」
陶商「商会ですか?」
義賢「あぁ。この国はこの先もっと大きくなるだろう。あくどい商人も現れる。それらを牽制できる大きな商会を作れ。そこで子供達を雇ってやれば良い」
陶商「!?盲点でした。まさか、そんなやり方があったなんて」
義賢「お前の商人としての矜持は、世界中何処にいても同じ値段で同じ物が手に入るそんな世界だったな?」
陶商「はい。それが僕が商人を志したきっかけでもありますから」
義賢「同じ値段というわけにはいかないかもしれないがそんな時代は必ず来る。俺は、その時。陶商、お前が第一人者になってくれると嬉しいと思っている。その第一歩として、荷物を届けることを専門にする配送と遠くに離れている家族や知人に手紙を届けることを専門にする郵便。この2つがあれば便利だと思わないか?」
陶商「商人が今のように売り歩かなくても済むようになる。例え、戦地からでも家族に手紙を残すことができる。想いを伝えられる。それは、凄くいいですね」
義賢「表向きは、別々に分ける。だが、裏でお前が全てを統括せよ。そして、支部を作り、子供たちを雇う。お前自身がこの人と仕事をしたいと思う人間にあったら面接もすればいい。人となりを知るためにな。お前は、聡明だ。初めて出会った俺に曹操殿を説得するのは、自分の仕事ですと言い切れる勇気もある。そんなお前に任せたいのだ。どうだ。この俺のアイデアを形にしてくれるか?」
陶商「あいであ?」
義賢「アイデアというのは、発想という意味だ」
陶商「是非、僕で良ければ。劉丁様の発想を形にさせてください」
義賢「頼んだ」
陶商は、かつて劉義賢と交わした約束を胸に仕事に明け暮れ、そして現在、蜀漢随一の大商会へと成長させた。
義妹の連れていた子供達を積極的に雇い。
戦争孤児者を養育し。
働きたいという人とは面談という形でその人となりを確かめた。
蜀漢随一の大商会、その名を希望商会という。
未来は希望に溢れているという想いを込めた名前である。
これは、彼が蔡文姫の手紙を受け取る少し前の話である。
大きめの荷台に見た目ではわからない隠し戸があり、その後ろには、人が十分に寝転べる程のスペースを用意したカモフラージュ満載の馬車。
本来の目的は、遠くに商品を運ぶ際に自分が寝られるように作ったスペースだが人を運ぶこともあると考えた陶商は、快適かつ安全を期すべく、さらにその床を外すことで、下にも奥行きを作り出した。
奴隷商人なら誰もが欲しがるこの荷台のある馬車。
これを制作したのは、諸葛亮の妻である黄月英と劉曄の友人である馬鈞だった。
色々な人を無事に脱出させてきたこの馬車だが老朽化に伴い、新しく作り直すかどうか陶商は頭を悩ませていた。
というのも劉義賢の新たなアイデアによって、配送屋と郵便屋が作られたのである。
配送屋というのは、荷物を届けるのを専門とする職業で、郵便屋というのは、手紙を届けるのを専門とする職業である。
陶商が数年ほど前に預かった子供たちの中で成人した兄妹がいて、彼らのために何かできることはないかとまだ彼らが小さい時に顔合わせを兼ねて劉義賢に相談したのがきっかけだった。
義賢「久しいな陶商。此度の訪問、とても嬉しく思う。さぁ、入ってくれ董白も喜ぶ」
陶商「失礼します」
陶商の背に隠れて2人がどうしようかと悩んでいる。
この2人が後に配送屋と郵便屋になる兄妹である。
その後ろにも多くの子どもたちが居た。
義賢「これは可愛いお客さんたちだな。さぁ、遠慮せずに入ってくれ。それにしても陶商に全く似ていないし、これ程子沢山であったか?あぁ、あの目の見えない御仁の連れていた」
陶商「はい。お察しの通り、義妹の連れていた子供たちです。今は、多くの子どもたちに読み書きと計算を教えていまして、この2人はとにかく物覚えが早いので顔合わせの代表として、ほら挨拶をしましょうか」
双子の兄「は、は、は。初めまして」
双子の妹「こ、こ、こ。こんにちは」
義賢「シャイなようだ。あっ。シャイというのはな。恥ずかしがり屋さんという意味だ。そう緊張する必要はない。親戚のおじさんに会ったみたいに気楽で構わない。子供というのは、そういうものだからな。変に気を違うことはないぞ。さぁ、一緒にご飯を食べよう」
双子の兄「こんなにたくさん居ますけど」
双子の妹「良いのでしょうか?」
義賢「賑やかで、董白も喜ぶ。アイツは、俺なんかよりも子煩悩だからな」
董白「ぎ・け・ん。聞こえてるわよ~」
義賢「別に悪口を言っていたわけではないのだから良いだろう」
董白「子供に甘いのが私だけだなんて言わないでよね。貴方だって牝愛にメロメロじゃない」
義賢「ギクッ。仕方がないだろう。君に似て可愛い娘なんだから。メロメロにもなる」
董白「私に似て可愛いだなんて、ポッ」
双子の兄「お姉ちゃんの顔が真っ赤になった!」
双子の妹「ホントだ。りんごほっぺだ」
董白「もう。揶揄わないで。ほら。一緒にご飯を食べましょう」
双子の兄「やったー」
双子の妹「やったー。あれっ。背中に赤ちゃんがいる!可愛い」
董白「牝愛っていうのよ。ほら挨拶してあげて」
牝愛「キャッ。キャッ」
こうして子供達を董白が連れて行き2人きりとなる劉義賢と陶商。
義賢「あの子たちの将来に関して、俺に話があるのだろう?」
陶商「!?お分かりになられていたのですか?」
義賢「優しいお前のことだ。両親を戦争で亡くしたあの子たちには平和に生きて欲しい。だが、所詮は乱世。どこにいても巻き込まれるしお金という先立つものが必要だ。違うか?」
陶商「全く、敵いません。そこまでお分かりとは」
義賢「あの子たちは読み書きと計算はできるのだな?」
陶商「はい。それが何か?」
義賢「陶商、放浪売りは一旦やめ。いやお前のことだやめないな。放浪売りをしながらで良い。商会を持て」
陶商「商会ですか?」
義賢「あぁ。この国はこの先もっと大きくなるだろう。あくどい商人も現れる。それらを牽制できる大きな商会を作れ。そこで子供達を雇ってやれば良い」
陶商「!?盲点でした。まさか、そんなやり方があったなんて」
義賢「お前の商人としての矜持は、世界中何処にいても同じ値段で同じ物が手に入るそんな世界だったな?」
陶商「はい。それが僕が商人を志したきっかけでもありますから」
義賢「同じ値段というわけにはいかないかもしれないがそんな時代は必ず来る。俺は、その時。陶商、お前が第一人者になってくれると嬉しいと思っている。その第一歩として、荷物を届けることを専門にする配送と遠くに離れている家族や知人に手紙を届けることを専門にする郵便。この2つがあれば便利だと思わないか?」
陶商「商人が今のように売り歩かなくても済むようになる。例え、戦地からでも家族に手紙を残すことができる。想いを伝えられる。それは、凄くいいですね」
義賢「表向きは、別々に分ける。だが、裏でお前が全てを統括せよ。そして、支部を作り、子供たちを雇う。お前自身がこの人と仕事をしたいと思う人間にあったら面接もすればいい。人となりを知るためにな。お前は、聡明だ。初めて出会った俺に曹操殿を説得するのは、自分の仕事ですと言い切れる勇気もある。そんなお前に任せたいのだ。どうだ。この俺のアイデアを形にしてくれるか?」
陶商「あいであ?」
義賢「アイデアというのは、発想という意味だ」
陶商「是非、僕で良ければ。劉丁様の発想を形にさせてください」
義賢「頼んだ」
陶商は、かつて劉義賢と交わした約束を胸に仕事に明け暮れ、そして現在、蜀漢随一の大商会へと成長させた。
義妹の連れていた子供達を積極的に雇い。
戦争孤児者を養育し。
働きたいという人とは面談という形でその人となりを確かめた。
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