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5章 天下統一
兗州北部、済北国でのこと
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ここは兗州北部前線の1つ、済北国。
ここにも華北の兵が迫っていた。
その数、10万。
率いる将は、夏侯玄である。
夏侯玄「成程、理解しました。あの布陣を見て、進軍を躊躇った勘は間違いではなかったようです。報告、ご苦労様でした。賈詡殿の怪我の状態が心配です。くれぐれも安静にするようにと」
賈詡の伝令兵「はっ。賈詡様へのお心遣い、感謝致します。では、これにて」
賈詡の伝令兵がこの場を後にすると夏侯玄は、兵たちを集めた。
その中には、父の夏侯尚と妻の李恵姑が加わっていた。
夏侯尚、夏侯淵の甥。
息子が曹丕の元に付いたので、夏侯一族の中で、曹操に付いていかずに曹丕派閥に残った。
この度の戦が曹操を魏の王として、復帰させることと聞き、喜んで戦に参加した。
夏侯淵の甥というだけあり、武は相当なものである。
李恵姑、道術を治めた5人の女道士の1人であり、闇の気の流れを読み取ることができる。
戦場にて不穏な気配を探知し、夫に報告し、進軍を躊躇わせた才人。
李恵姑「やはり、私の睨んだ通りでしたね旦那様」
夏侯玄「あぁ、本当に助かった。私まで多くの兵を失えば、どうなっていたことか。戦はこれだけではないからな」
夏侯尚「息子を放って叔父上についていくわけにもいくまい。こうして、曹操様を迎え入れるために我が子と共に戦えること嬉しいぞ」
夏侯玄「頼りにしてます父上」
夏侯尚「うむ。武働きは任せておれ」
李恵姑「そろそろ本題に入っても構いませんか旦那様?」
夏侯玄「う、うむ」
夏侯玄は、李恵姑に頭が上がらない。
かといって、李恵姑が恐妻かと言われると違う。
李恵姑のことを同僚で最も信頼していて、その能力を高く買っているからこそ頭が上がらないのである。
李恵姑「怪しい気配を感じるのは4箇所にいる兵です。恐らく、その中の誰か。もしくは、全員がその人間爆弾とやらではないかと」
夏侯尚「そいつらをぶったたけば良いんだな。任せておけい」
李恵姑「お義父様、お待ちくださいな。ぶっ叩けば、爆発するだけですよ。それに巻き込まれて、賈詡殿が兵を失ったと先程聞きましたでしょう?ここは、穴を掘りましょう。そこに誘き寄せて、地面の中で爆発させれば、兵への被害は皆無にできるでしょう」
夏侯尚「うーむ。それでは、敵兵を助けてやれんでは無いか?」
李恵姑「もう既に救うことはできないでしょう。闇の気の流れを感じます。アレは恐らく呪術の1つでしょう」
夏侯尚「ふむぅ。そういうものがある事は、お前から聞いていたが、俄かには信じられん。呪術などという抽象的なものをな」
李恵姑「呉の孫策は、于吉による呪術により、死の淵を彷徨い、孫翊は呂壱により操られました。蜀漢でも呪術の気配が何度かあったと聞いています。未然に防げてるのは、凄いですけど。相当優秀な道士を抱えているのかと」
夏侯玄「道士ではなく左慈方士とのことだ」
李恵姑「左慈方士ですって!?道術の境地方術を治め、神に近い存在となった白鬚仙人の名前!成程、あの人が付いてるなら蜀漢が呪術の気配を幾度となく防いでいたことも納得です」
李恵姑の言葉を聞いて、高笑いしている黄竜と恐縮そうな左慈。
黄竜「見よ。あの小娘は全てお前が未然に防いでいることになっているぞ。ガハハハハ。全て、異世界からの客人のお陰だというのになぁ」
左慈「はい。黄竜様のおっしゃる通りです」
黄竜「して、哪吒の奴はどうだ?」
左慈「飲み込みが早く、下級の悪魔なら刈り取れると閻魔様からお墨付きが」
黄竜「ほぉ。地獄の神が認めたか。流石は、ワシのお眼鏡にかなった小僧よな」
左慈「はい。ところで黄竜様、小生。ゴホン。僕はいつまで肩をお揉みすれば良いのですか?」
黄竜「ずっとじゃ。あの悪鬼の気配がするまでな」
左慈「はぁ。不老不死の研究をして、多くの人間の体内を行ったり来たりする悪鬼ですか」
黄竜「全く、感知阻害まで身につけよって、全く気に食わん」
左慈「はぁ(これ。小生はずっと肩揉みがかりなのではなかろうか?)」
ということになっていた。
一方、済北国では、李恵姑の策を用いて、この場からわざと逃げ出し、敵を釣り出すことに成功していた。
済北国の兵A「何!?敵が逃げ出しただと?泰山の者たちは命をかけて、敵兵を葬ったのだ。我らも習うぞ。突撃して爆発するのだ!」
済北国の兵B「うおおおお。燃えるぜ」
済北国の兵C「追撃だ」
夏侯玄「君の言う通り、追ってきたな」
李恵姑「えぇ、この調子で、誘導しましょう」
夏侯尚「なら、盛大に愚か者を演じてやるとしよう。こんな。こんなの聞いてないぞ。逃げろ。逃げるんだ」
こうして、誘き出した済北国の兵が爆発の範囲に入った時、地面に大穴が空いて、落ちていった。
李恵姑「今です」
済北国の兵A「突然、地面が。皆の者、爆発中止。爆発中止。何故、制御が。うがぁぁぁぁぁぁ」
済北国の兵B「おれの身体がおれの身体が燃えていくーーーー」
済北国の兵C「追撃。追撃。追撃。爆発。爆発。爆発」
ドカーンと爆発していく済北国の兵たちだが夏侯玄の率いる兵に被害は無かった。
地面の中から火薬と血の混じった匂いがその凄惨さを物語っていた。
李恵姑「全く、このような呪術にまで手を染めるとは、司馬懿は放置できませんね」
夏侯玄「・・・本当に司馬懿の仕業であろうか?」
李恵姑「どうされました旦那様?」
夏侯玄「いや、何でもない。何はともあれ済北国の制圧は完了した。ここからは足並みを揃えるようにと鄧艾殿が言っていたな。暫く、ここにて待機する」
こうして、夏侯玄は妻である李恵姑のお陰で、率いた兵には被害を出さずに済んだのであった。
ここにも華北の兵が迫っていた。
その数、10万。
率いる将は、夏侯玄である。
夏侯玄「成程、理解しました。あの布陣を見て、進軍を躊躇った勘は間違いではなかったようです。報告、ご苦労様でした。賈詡殿の怪我の状態が心配です。くれぐれも安静にするようにと」
賈詡の伝令兵「はっ。賈詡様へのお心遣い、感謝致します。では、これにて」
賈詡の伝令兵がこの場を後にすると夏侯玄は、兵たちを集めた。
その中には、父の夏侯尚と妻の李恵姑が加わっていた。
夏侯尚、夏侯淵の甥。
息子が曹丕の元に付いたので、夏侯一族の中で、曹操に付いていかずに曹丕派閥に残った。
この度の戦が曹操を魏の王として、復帰させることと聞き、喜んで戦に参加した。
夏侯淵の甥というだけあり、武は相当なものである。
李恵姑、道術を治めた5人の女道士の1人であり、闇の気の流れを読み取ることができる。
戦場にて不穏な気配を探知し、夫に報告し、進軍を躊躇わせた才人。
李恵姑「やはり、私の睨んだ通りでしたね旦那様」
夏侯玄「あぁ、本当に助かった。私まで多くの兵を失えば、どうなっていたことか。戦はこれだけではないからな」
夏侯尚「息子を放って叔父上についていくわけにもいくまい。こうして、曹操様を迎え入れるために我が子と共に戦えること嬉しいぞ」
夏侯玄「頼りにしてます父上」
夏侯尚「うむ。武働きは任せておれ」
李恵姑「そろそろ本題に入っても構いませんか旦那様?」
夏侯玄「う、うむ」
夏侯玄は、李恵姑に頭が上がらない。
かといって、李恵姑が恐妻かと言われると違う。
李恵姑のことを同僚で最も信頼していて、その能力を高く買っているからこそ頭が上がらないのである。
李恵姑「怪しい気配を感じるのは4箇所にいる兵です。恐らく、その中の誰か。もしくは、全員がその人間爆弾とやらではないかと」
夏侯尚「そいつらをぶったたけば良いんだな。任せておけい」
李恵姑「お義父様、お待ちくださいな。ぶっ叩けば、爆発するだけですよ。それに巻き込まれて、賈詡殿が兵を失ったと先程聞きましたでしょう?ここは、穴を掘りましょう。そこに誘き寄せて、地面の中で爆発させれば、兵への被害は皆無にできるでしょう」
夏侯尚「うーむ。それでは、敵兵を助けてやれんでは無いか?」
李恵姑「もう既に救うことはできないでしょう。闇の気の流れを感じます。アレは恐らく呪術の1つでしょう」
夏侯尚「ふむぅ。そういうものがある事は、お前から聞いていたが、俄かには信じられん。呪術などという抽象的なものをな」
李恵姑「呉の孫策は、于吉による呪術により、死の淵を彷徨い、孫翊は呂壱により操られました。蜀漢でも呪術の気配が何度かあったと聞いています。未然に防げてるのは、凄いですけど。相当優秀な道士を抱えているのかと」
夏侯玄「道士ではなく左慈方士とのことだ」
李恵姑「左慈方士ですって!?道術の境地方術を治め、神に近い存在となった白鬚仙人の名前!成程、あの人が付いてるなら蜀漢が呪術の気配を幾度となく防いでいたことも納得です」
李恵姑の言葉を聞いて、高笑いしている黄竜と恐縮そうな左慈。
黄竜「見よ。あの小娘は全てお前が未然に防いでいることになっているぞ。ガハハハハ。全て、異世界からの客人のお陰だというのになぁ」
左慈「はい。黄竜様のおっしゃる通りです」
黄竜「して、哪吒の奴はどうだ?」
左慈「飲み込みが早く、下級の悪魔なら刈り取れると閻魔様からお墨付きが」
黄竜「ほぉ。地獄の神が認めたか。流石は、ワシのお眼鏡にかなった小僧よな」
左慈「はい。ところで黄竜様、小生。ゴホン。僕はいつまで肩をお揉みすれば良いのですか?」
黄竜「ずっとじゃ。あの悪鬼の気配がするまでな」
左慈「はぁ。不老不死の研究をして、多くの人間の体内を行ったり来たりする悪鬼ですか」
黄竜「全く、感知阻害まで身につけよって、全く気に食わん」
左慈「はぁ(これ。小生はずっと肩揉みがかりなのではなかろうか?)」
ということになっていた。
一方、済北国では、李恵姑の策を用いて、この場からわざと逃げ出し、敵を釣り出すことに成功していた。
済北国の兵A「何!?敵が逃げ出しただと?泰山の者たちは命をかけて、敵兵を葬ったのだ。我らも習うぞ。突撃して爆発するのだ!」
済北国の兵B「うおおおお。燃えるぜ」
済北国の兵C「追撃だ」
夏侯玄「君の言う通り、追ってきたな」
李恵姑「えぇ、この調子で、誘導しましょう」
夏侯尚「なら、盛大に愚か者を演じてやるとしよう。こんな。こんなの聞いてないぞ。逃げろ。逃げるんだ」
こうして、誘き出した済北国の兵が爆発の範囲に入った時、地面に大穴が空いて、落ちていった。
李恵姑「今です」
済北国の兵A「突然、地面が。皆の者、爆発中止。爆発中止。何故、制御が。うがぁぁぁぁぁぁ」
済北国の兵B「おれの身体がおれの身体が燃えていくーーーー」
済北国の兵C「追撃。追撃。追撃。爆発。爆発。爆発」
ドカーンと爆発していく済北国の兵たちだが夏侯玄の率いる兵に被害は無かった。
地面の中から火薬と血の混じった匂いがその凄惨さを物語っていた。
李恵姑「全く、このような呪術にまで手を染めるとは、司馬懿は放置できませんね」
夏侯玄「・・・本当に司馬懿の仕業であろうか?」
李恵姑「どうされました旦那様?」
夏侯玄「いや、何でもない。何はともあれ済北国の制圧は完了した。ここからは足並みを揃えるようにと鄧艾殿が言っていたな。暫く、ここにて待機する」
こうして、夏侯玄は妻である李恵姑のお陰で、率いた兵には被害を出さずに済んだのであった。
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