えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

蔡邕について

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 これは、昔も昔、まだ董卓が涼州で燻っていた頃に遡る。
 後漢末期の霊帝に仕える1人の男がいた。
 その男の名を蔡邕、字を伯喈はくかいという。
 黄巾の乱をろくに治められない霊帝に対して、不満を持っていたというのとは全く関係なく。
 彼は、学問を学ぶ過程で、呪術の持つ不思議な魅力に取り憑かれた。

 いや、今にして思えば、それは必然だったのだろう。
 呪術に取り憑かれた者の末路は、今のワシの身体が物語っている。
 愚かなことを起こす前に司馬防の奴の息子に止めてもらえて良かったと言えよう。
 まだ幼かった娘には本当に申し訳ないことをした。
 家族よりも大事なものなんて存在しないのに、ワシはそのことに気付かなかった。
 これは、ワシが呪術に取り憑かれるまでの話であり、そして現状も秦王に縛られている状況を憂い、誰かに気付いて欲しいと書き遺す書物である。
 時は、後漢末期、霊帝様を信奉していた張角が黄色の頭巾を巻いて、反乱を起こした頃のことである。
 ワシは、後漢12代目の王、霊帝様に仕えていた。

 蔡邕「どうして、こうも朝廷の動きは、鈍いのだ。朱儁・皇甫嵩!お前たちがいながら弱腰だと思われよう!」

 朱儁「霊帝様には霊帝様のお考えがあるということだ」

 皇甫嵩「しかし、朱儁よ。最近の霊帝様はおかしいと思わぬか?あんなに寵愛なさっていた王栄様から何進の妹に鞍替えするなど」

 朱儁「わからん。最近は、ずっと2人して篭ってばかり。ろくに政務に顔も出さないときた。黄巾の乱に関しても好きにさせておけと来た。これでは、群雄が力を付ける事になるのは、目に見えている。そうなれば、一気に朝廷は傾くというのに。最近は、涼州の暴れん坊も活発らしい」

 皇甫嵩「董卓か」

 朱儁「初めの方こそ。義勇軍に手柄を取られるなど遅れをとっていたが徐々に挽回して、黄巾の乱に乗じようとした馬騰と韓遂の反乱もおさめたそうだ」

 皇甫嵩「その話を聞くと昔のことを思い出すな。霊帝様と共に、野山を駆け回ったことを」

 朱儁「あぁ。今の霊帝様は、遊興に耽るばかり、本当にどうしてしまわれたのか。お年を取り、耄碌されたのやも知れん」

 このようにワシを無視して話す将軍2人にも呆れていたワシの元に先程、話に出ていた何進の妹である何皇后様が接触してきたのは、黄巾の乱が群雄たちの力で収まりつつある時期であった。
 この頃には、王栄様よりも何皇后様の影響力が増大して、次の皇帝は王栄様との子ではなく何皇后様との子がなられるのではないかと宮中で専らの噂となっていた。

 何皇后「そちが蔡邕か?」

 蔡邕「はい。何皇后様」

 何皇后「そうか。そちの娘は大層美人であると聞いた。北の蛮族が煩くて。煩くて。攻められたくなければ人質を寄越せとね」

 蔡邕「まさか」

 何皇后「そのまさかよ。国のための決定だから覆せないわよ」

 確かにワシの娘は、かつて匈奴からこの国に学びにきていた劉豹なる人物と仲良く遊んでいた。
 それで、この女に目を付けられたのか。
 まだ8つの娘を蛮族が蔓延るところに手放せとこの女は言っておるのか。
 なんたる屈辱。
 霊帝様に寵愛されただけの成り上がり風情に。
 しかし、拒否権は無く。
 娘は、嫁いで行くことは決定的かと思われた矢先、婚約だけで、こちらにまだ来る必要はないと。
 とても有り難かった。
 ワシには、蛮族などと蔑まれている彼らよりも平気で幸せを踏み躙ろうとする朝廷の方がよっぽど蛮族に見えた。
 そんな心の隙間を見透かしたかのように、あの男は現れた。

 怪しげな男「随分と疲れた顔をしておるなぁお主。話すことで楽になることもあろう。ワシみたいなこんな年寄りで良ければ、話を聞いてやろうぞ」

 ワシは見てくれにすっかりと騙され、洗いざらい吐き出した。
 これが秦王との出会いだ。

 怪しげな男「ふむ。成程な。いつの世も朝廷とは腐っているものじゃ。そんな奴らに縛られる必要など無かろう。そうじゃ、良い話を聞かせてくれたお主に。贈り物をくれてやろうぞ」

 そうして渡された本が呪術の本だった。
 読み進めるうちにすっかりとのめり込み、朝廷を呪殺する事に決めたワシは、先ずはあのような成り上がりの女を寵愛するようになった霊帝から呪い殺した。
 毒殺だそうだが事実はワシが呪い殺したのだ。
 そして、味を占めたワシは続けて目ざわりな奴らを次々に呪殺しようとしたところを覆面で顔を隠した何者かに暗殺されたのだ。
 その男が呟いた司馬のため。
 その言葉でワシは確信した。
 ワシのことを司馬防の奴はずっと見ていたのだと。
 いや、出来の良い息子から聞いたのやもしれん。
 何故、ワシが死なねばならん。
 そう思ったのが間違いだった。
 その言葉は呪いとなりワシを秦王の元に縛り付けた。
 普通は目に見えぬ影の者をどうやって具現化するか。
 簡単な話だ。
 影の者を操り、人の魂を入れる。
 そんなことをも可能にするこの男にワシは今も戦慄を覚えながらも尚、こうして縛られている。
 自分の意思では抜け出せない無限地獄。
 そうなっているのは、ワシだけではない。
 どうやって抜け出せたのか知らぬが閻魔とやらが治める地獄とやらに行けた于吉は余程幸せであろう。
 我らはこうして、永遠と妖怪に入れられる魂として、秦王にずっと操られているのだから。
 これが、ワシが呪術に溺れた末路じゃ。
 ここに書き記そう。
 呪術などこの世にあってはならぬ物だと。
 そして、どうか願いが叶うなら今、こうして意識のあるうちに滅してもらいたい。
 うっ。
 うぅ。
 また何者かの入れ物にされるようだ。
 文姫、愚かな父を許してくれ。
 司馬家のことをどうか恨まんでくれ。
 全ては、ワシが付け入る隙を与え、呪術とやらに取り憑かれたのだから。

 王累「キタキタキタキター。これがこれが無敵の力か。フハハハハ。これなら勝てる。これなら勝てるぞ。左慈ーーーーー」

 そんな声を最期にワシの意識は途絶えた。
 暫く、この新しく呪術に取り憑かれた男の入れ物にされるのだろう。
 この男をこちら側へと縛るために。
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