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5章 天下統一
郭脩の決断は
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牢屋の兵士Bに扮していた謎の男は、死ぬ直前に置き土産をしていた。
それを見て、悟る郭脩。
郭脩「丸毒か。作戦の失敗は、死を意味するという郭昱様の意思表示か。ならあの男は俺を助けに来たのではなく暗殺しに来た男ということか。フッ。好いた女に死を望まれるとは。全く、こんな事ならあの時もっと抱いておくのだった。その丸毒がここまで転がってきたのも運命。これ以上、郭昱様に迷惑をかけるわけにはいかん」
おじいさん「ふわぁ。死ぬ気ならやめておけ。あの兵士の負担が増えるだけだ。それに生きていれば、また女を抱けることもある。どうして死を望む?命あっての物種だ」
郭脩「テメェのようなジジイと一緒にするな!我らに失敗は許されないのだ!」
おじいさん「ふわぁ。何言ってるかよくわからんが。ここにいる限りは安全だというのにどうして死を望む?ここにいれば、こうしてご飯も住処も提供してくれるというのに、ふわぁ」
郭脩「何処にいようと生きてる限り安全などない。任務に失敗するというのは、そういうことだ」
おじいさん「ふわぁ。昔、ワシも一国の主だった」
郭脩「勝手に昔語りしてんじゃねぇぞジジイ!」
おじいさん「あの頃は、まさに群雄割拠という世界でな。曹操も許昌で旗揚げした程度の米粒みたいなものじゃった。それこそ劉備なんて、義勇兵として少々名前が轟いているぐらいの豆粒じゃ」
郭脩「だから語るなって言ってんだろジジイ!」
おじいさん「そんな世界でワシが治めておったのは、幽州という国でな。ワシはそこの偉い人物でだな。黄巾の族どもに対処するため義勇兵を集めたものじゃ。懐かしいのぉ」
郭脩「だから聞いてねぇって言ってんだろうが!黙れよクソジジイ!対面で見えるからって、話しかけてきてんじゃねぇぞ!」
おじいさん「それでのぉ。義勇兵を集めたは良いもののろくなものが居なくての。そんな中、颯爽と洗われたのが劉備じゃ。まさに英雄の風格。カッコよかったのぉ。それが、今や。なんじゃ?飯はまだかのぉ?」
郭脩「はっ?飯?さっき食っただろうがクソジジイ!」
おじいさん「それでのぉ。えーっとなんじゃったかな。そうじゃ。反董卓連合なんてものも発足してのぉ。あれは、そうじゃそうじゃ。袁紹じゃ。アイツが盟主に祭り上げられてのぉ。ワシは公孫瓚に劉備を預けて、参戦させたんじゃ。懐かしいわい。あの時の劉備といったら。プクク。慣れない服を着て、とても見ていられんかったわい」
郭脩「1人語りしてんじゃねぇって言ってんだろうがクソジジイ!」
牢屋の兵士A「ハァ。やめとけ。やめとけ。その爺さんは壁に向かっても話す。お前に話してるわけじゃねぇんだよ。鄒靖《スウセイ》爺、飯だぞ」
おじいさん「おぉ、息子よ。飯はまだか?」
郭脩「なんだよ。認知の進んだジジイかよ!」
牢屋の兵士A「そういうことだ。こうしてたまに昔の記憶が戻る時もあるらしくてな。天涯孤独の身だからこうして、牢屋で面倒見てる。ここなら誰かは常にいてるからよ。本当は家で暮らしてもらいたいらしいんだがそうすると勝手に飛び出すこともあってな。まぁ保護のための緊急措置ってな」
郭脩「そんなことに付き合わされて、哀れなものだな」
牢屋の兵士A「いや。哀れとは思わねぇな。さっきの鄒靖爺の話は、全て真実だしな。要は、ここまで生きてる生き字引さ。それに劉備様にとっちゃ恩人。こんなとこに閉じ込める形になってしまったが孤独で死なせたくないってな。お優しいだろ」
郭脩「なら劉備がずっと面倒を見れば良い話だ」
牢屋の兵士A「そりゃ。それができれば1番良いだろうさ。言っただろ。こうして閉じ込めておかないと勝手に家を飛び出すって。後、物は極力ない方が良いんだ。そこら中のモノを片っ端から小さい子供のように食べようとするからな」
郭脩「フン。結局、綺麗事を並べて面倒ごとを部下に押し付けているだけのことだ。面倒を見たいのは、劉備であって、お前たちではない。所詮、権力者というのは、皆変わらん。自分だけしか考えてなど居ないということだ」
牢屋の兵士A「そうだな。でも、孤独で死なせたくないって気持ちはわかるさ。俺の爺ちゃんは、家を飛び出して、山から転落して亡くなった。認知ってのは、それぐらい厄介なんだ。どれだけ家族として尽くそうが向こうは全く覚えていない。それどころか泥棒呼ばわりなんてしょっちゅうだ。でもな。生前してくれたことを想って、世話するんだ。それが人情ってもんだろ。それに劉備様は、毎日鄒靖爺のところに顔出してる。鄒靖爺もな劉備様のことだけは、何故か忘れてねぇんだよ。強烈なインパクト?だったかな。それが鄒靖爺の中にあるんだろうって、劉備様の弟君様が言っておられた。鄒靖爺は止めたが俺は別に止めねぇよ。ハッキリ言って、大恩ある劉備様を殺そうとした奴が無期懲役だなんて馬鹿げてる。死んで当然だろうって思ってるからよ。でもそうしなかったのは、霊帝様と劉備様の優しさ。いや甘さかもしれねぇな。だが、己の命をどうしようが好きにすれば良いと思うさ」
そこまで言って、背後を振り返った牢屋の兵士Aの後ろでガリっと音が聞こえて、その場に倒れ込む郭脩。
牢屋の兵士A「無駄に命を使う者もいれば、ある日突然殺される命もある。本当に命は平等なのかね。俺は心の赴くまま、己の命を使いたいものだ」
郭脩の中で、郭昱への愛よりも忠義が勝った。
愛する人から死を望まれたのなら死んで忠義を尽くそう。
こうして、劉備暗殺の乱は収束を迎える。
それを見て、悟る郭脩。
郭脩「丸毒か。作戦の失敗は、死を意味するという郭昱様の意思表示か。ならあの男は俺を助けに来たのではなく暗殺しに来た男ということか。フッ。好いた女に死を望まれるとは。全く、こんな事ならあの時もっと抱いておくのだった。その丸毒がここまで転がってきたのも運命。これ以上、郭昱様に迷惑をかけるわけにはいかん」
おじいさん「ふわぁ。死ぬ気ならやめておけ。あの兵士の負担が増えるだけだ。それに生きていれば、また女を抱けることもある。どうして死を望む?命あっての物種だ」
郭脩「テメェのようなジジイと一緒にするな!我らに失敗は許されないのだ!」
おじいさん「ふわぁ。何言ってるかよくわからんが。ここにいる限りは安全だというのにどうして死を望む?ここにいれば、こうしてご飯も住処も提供してくれるというのに、ふわぁ」
郭脩「何処にいようと生きてる限り安全などない。任務に失敗するというのは、そういうことだ」
おじいさん「ふわぁ。昔、ワシも一国の主だった」
郭脩「勝手に昔語りしてんじゃねぇぞジジイ!」
おじいさん「あの頃は、まさに群雄割拠という世界でな。曹操も許昌で旗揚げした程度の米粒みたいなものじゃった。それこそ劉備なんて、義勇兵として少々名前が轟いているぐらいの豆粒じゃ」
郭脩「だから語るなって言ってんだろジジイ!」
おじいさん「そんな世界でワシが治めておったのは、幽州という国でな。ワシはそこの偉い人物でだな。黄巾の族どもに対処するため義勇兵を集めたものじゃ。懐かしいのぉ」
郭脩「だから聞いてねぇって言ってんだろうが!黙れよクソジジイ!対面で見えるからって、話しかけてきてんじゃねぇぞ!」
おじいさん「それでのぉ。義勇兵を集めたは良いもののろくなものが居なくての。そんな中、颯爽と洗われたのが劉備じゃ。まさに英雄の風格。カッコよかったのぉ。それが、今や。なんじゃ?飯はまだかのぉ?」
郭脩「はっ?飯?さっき食っただろうがクソジジイ!」
おじいさん「それでのぉ。えーっとなんじゃったかな。そうじゃ。反董卓連合なんてものも発足してのぉ。あれは、そうじゃそうじゃ。袁紹じゃ。アイツが盟主に祭り上げられてのぉ。ワシは公孫瓚に劉備を預けて、参戦させたんじゃ。懐かしいわい。あの時の劉備といったら。プクク。慣れない服を着て、とても見ていられんかったわい」
郭脩「1人語りしてんじゃねぇって言ってんだろうがクソジジイ!」
牢屋の兵士A「ハァ。やめとけ。やめとけ。その爺さんは壁に向かっても話す。お前に話してるわけじゃねぇんだよ。鄒靖《スウセイ》爺、飯だぞ」
おじいさん「おぉ、息子よ。飯はまだか?」
郭脩「なんだよ。認知の進んだジジイかよ!」
牢屋の兵士A「そういうことだ。こうしてたまに昔の記憶が戻る時もあるらしくてな。天涯孤独の身だからこうして、牢屋で面倒見てる。ここなら誰かは常にいてるからよ。本当は家で暮らしてもらいたいらしいんだがそうすると勝手に飛び出すこともあってな。まぁ保護のための緊急措置ってな」
郭脩「そんなことに付き合わされて、哀れなものだな」
牢屋の兵士A「いや。哀れとは思わねぇな。さっきの鄒靖爺の話は、全て真実だしな。要は、ここまで生きてる生き字引さ。それに劉備様にとっちゃ恩人。こんなとこに閉じ込める形になってしまったが孤独で死なせたくないってな。お優しいだろ」
郭脩「なら劉備がずっと面倒を見れば良い話だ」
牢屋の兵士A「そりゃ。それができれば1番良いだろうさ。言っただろ。こうして閉じ込めておかないと勝手に家を飛び出すって。後、物は極力ない方が良いんだ。そこら中のモノを片っ端から小さい子供のように食べようとするからな」
郭脩「フン。結局、綺麗事を並べて面倒ごとを部下に押し付けているだけのことだ。面倒を見たいのは、劉備であって、お前たちではない。所詮、権力者というのは、皆変わらん。自分だけしか考えてなど居ないということだ」
牢屋の兵士A「そうだな。でも、孤独で死なせたくないって気持ちはわかるさ。俺の爺ちゃんは、家を飛び出して、山から転落して亡くなった。認知ってのは、それぐらい厄介なんだ。どれだけ家族として尽くそうが向こうは全く覚えていない。それどころか泥棒呼ばわりなんてしょっちゅうだ。でもな。生前してくれたことを想って、世話するんだ。それが人情ってもんだろ。それに劉備様は、毎日鄒靖爺のところに顔出してる。鄒靖爺もな劉備様のことだけは、何故か忘れてねぇんだよ。強烈なインパクト?だったかな。それが鄒靖爺の中にあるんだろうって、劉備様の弟君様が言っておられた。鄒靖爺は止めたが俺は別に止めねぇよ。ハッキリ言って、大恩ある劉備様を殺そうとした奴が無期懲役だなんて馬鹿げてる。死んで当然だろうって思ってるからよ。でもそうしなかったのは、霊帝様と劉備様の優しさ。いや甘さかもしれねぇな。だが、己の命をどうしようが好きにすれば良いと思うさ」
そこまで言って、背後を振り返った牢屋の兵士Aの後ろでガリっと音が聞こえて、その場に倒れ込む郭脩。
牢屋の兵士A「無駄に命を使う者もいれば、ある日突然殺される命もある。本当に命は平等なのかね。俺は心の赴くまま、己の命を使いたいものだ」
郭脩の中で、郭昱への愛よりも忠義が勝った。
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こうして、劉備暗殺の乱は収束を迎える。
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