えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
603 / 821
5章 天下統一

黄元と郭脩の言い争い

しおりを挟む
 懲役5年の刑期を受けた黄元は牢屋に一度戻されていた。
 そこには同じく無期懲役の罪をくらった郭脩もまた放り込まれていた。

 郭脩「ふざけるな!出せ!ここから出せ!劉備ーーーーーーー!!!!」

 黄元「隣の牢の奴は、さっきから騒がしいな」

 郭脩「その声は、黄元!貴様ーーーー!!!」

 黄元「俺のことを知っているのか?」

 郭脩「忘れたとは言わせんぞ!貴様のせいで!反乱一つもまともに起こせないポンコツが!」

 黄元「まさか!?お前は、あの時の見窄らしい難民か。そうかお前も捕まったか。良かった。これで蜀漢が揺らぐ事は無いだろう」

 郭脩「ざけんなよ!お前がお前があんなに大胆に動き過ぎたから足がついたんだ!このポンコツ野郎が!」

 黄元「ふむ。確かに俺はポンコツだ。だが今はそのポンコツ加減に感謝さえしている。そのお陰で、大きな罪を犯す事なくこうして償え、命もあるのだ。だから喚くな難民よ。霊帝様は寛大な御方。謀反の未遂で済んだのだそちらも罪は軽かろう?」

 郭脩「はっ?謀反の未遂だぁ?ふざけんな!こっちは既に人を殺してんだよ!現行犯逮捕の末、一生牢に居ろってな。テメェと一緒にすんなポンコツ!これで郭昱様の御褒美がパァだオラァ!」

 黄元「郭昱というのがあの女の名前か?」

 郭脩「アァ?だったらなんだってんだ!」

 黄元「そうか。つくづく俺は哀れな男だ。宮仕の人間なのだから官女の名前を聞けば良かった。そもそも鞘なんて名前の宮女は居ない。あの時は、禁忌を犯しているから名前を知られたく無いのかと深くは詮索しなかったが。郭昱というのか。そんな名前の官女は居ない。やはり俺は、騙されていたのだな。全く、大きな罪を犯す前で本当に良かった」

 郭脩「ふざけんな!テメェが!テメェが!キチンと反乱の一つでも起こしていれば、劉備の奴を殺せたというのに。こうなったら貴様は生かしておかん。死ね」

 黄元「そのように喚いたところで、壁一つ隔てているというのに、どうやって殺すというのだ。全く、うるさい男だ」

 郭脩「馬鹿な!?何故だ何故?射出しない?」

 腕を捲り上げた郭脩は驚愕の表情を浮かべる。

 郭脩「一体、いつ暗器を奪われた?」

 黄元「おーい。先程までの勢いはどうした?」

 郭脩「黙れポンコツ!俺ほどの腕がありながら暗器を盗まれるなど。ブツブツ」

 黄元「まぁ、もうこうなってはどうすることもできん。諦めて、霊帝様の沙汰を受け入れるのだな。ふわぁ。俺はもう寝る。兵士さん、すまないが毛布をくれないか?寒くてかなわん」

 牢屋の兵士A「さっきまでと違って殊勝な心がけだな。梟様の言葉が相当心に響いたみたいだな。反省してるみたいだしよ。俺としても死なれたら夢見が悪りぃ。もうすぐ交代の時間だしな。ホラよ」

 黄元「感謝するよ。これで眠れそうだ」

 郭脩「主のことを話そうとした馬鹿を殺した時は、この手にあった。その後、変な奴に見つかって、名前は確か費禕だったか?飄々とした警戒心のない奴だと油断した。その後、背後に警ら隊の奴が。まさか!?アイツに?いや、身体検査をされた覚えはない。寧ろ、殺そうと企んでいた。あの男の力が強くて叶わなかったが。では、一体いつ奪われた?わからん。全くわからん」

 黄元「ブツブツ。ブツブツ。何言ってるかわからんしうるさいわ!眠れんではないか!」

 郭脩「ポンコツは黙ってろ!俺は今必死に考えてんだ」

 黄元「ならブツブツ喋るな難民!」

 郭脩「黙ってろポンコツ!」

 牢屋の兵士A「どっちもうっせぇわ!」

 牢屋の兵士B「すまない。遅刻した」

 牢屋の兵士A「いつも時間通りなお前が珍しいな」

 牢屋の兵士B「母が転んで、介護していた」

 牢屋の兵士A「そりゃ災難だったな。じゃあ、ここは任せる」

 牢屋の兵士B「あぁ」

 牢屋の兵士Bが背後を向いた後羽交締めにする牢屋の兵士A。

 牢屋の兵士A「お前、何もんだ?」

 牢屋の兵士B「!?何故、わかった?」

 牢屋の兵士A「アイツに両親は居ない。天涯孤独のところ劉備様に拾われて、兵士として働いてる。成り代わろうとするんなら調べるのは当然だと思うが」

 牢屋の兵士B「成程、やはり蜀漢は人材が豊かということか。こうなっては、致し方なし。ガリッ。ゴフッ」

 牢屋の兵士A「コイツ。口から血を?まさか毒を!?」

 作戦の失敗は死あるのみ。
 口に含んでいた毒を噛みその場に倒れ込む牢屋の兵士Bに扮した謎の男。

 牢屋の兵士A「ハァ。こりゃ劉備様に報告の上、今日は徹夜だな。ったく」

 報告を受けた劉備によって、捜索を受けた牢屋の兵士Bは、家で身包みを剥がされ裸でぐるぐる巻きにされているところを発見された。

 劉備「無事か馮習フウシュウ

 馮習「ん!んん!!んんん!!!プハッ。劉備様、俺なんかのために感謝します。傅彤フトウは、やはり気づいてくれたか。良かった」

 劉備「あぁ。傅彤からの報告を受け、お前を捜索していた。無事で良かった。優秀な兵を失う事は、国家の衰退だ」

 馮習「こんな俺に勿体無い御言葉です。早く傅彤の奴と代わってやらないと。イテテ」

 劉備「今日のところは休め。傅彤にも負担をかけぬようにこちらでなんとかしておこう」

 馮習「そんな劉備様の手を煩わせるなど。イテテ」

 劉備「こういう時ぐらい甘えるが良い。本当に無事で良かった」

 馮習「はい」

 牢屋の兵士Aは傅彤と言い、正史にて夷陵の戦いにおいて降伏を拒み、戦死した忠義の士であり、牢屋の兵士Bは、同じく夷陵の戦いにおいて、劉備に従い、火計によって、燃え盛る戦場の中、劉備を逃すために善戦、戦死した忠義の士である。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

処理中です...