えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

左慈の酷使

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 小生の名前は左慈である。
 最近、式としていた火鼠が行方不明になるなどあり得ない出来事が立て続けに起こり、そして先日の人と妖怪が合体したような異形の怪物との遭遇。
 呪術の域を軽く超える現象に小生の身体も悲鳴を上げる始末。
 そして、事の発端は、今よりさらに昔、この国が秦と呼ばれていた頃の話である。
 小生は勿論米粒ほどの存在、ゴホン。
 要は産まれてすらいなかった時代のこと。
 天界を滑る黄竜様と人間界の理を破った秦の始皇帝との間で、とてつもない争いが勃発。
 この影響で、秦は前漢時代を作った劉邦によって、滅び。
 秦の始皇帝の思惑も消えたと思っていた。
 しかし、時は着実に秦の始皇帝が黄竜様から受けた傷を癒やし、ある意味不老不死とも言える魂代わりによって、悠久の時を生き、今まさに暗躍を開始したのである。
 かつて、受けた傷を倍にして返すかのように。
 そう、この世界は秦の始皇帝が不老不死を完成させてしまった世界である。
 そして、これは劉義賢がこちらに呼ばれる少し前の話である。
 この世界を元に戻すべく劉邦と同じく王道を志す者、劉玄徳に天下を取らせるため天界人となった甘氏が呼んだのが、劉義賢である。
 そして、劉玄徳の弟の1人を依代にこの地に魂のみを転生。
 本人には、この世界に転生したと偽った。
 それは全て、本人の現実世界との繋がりを一時忘れてもらうためであった。
 魂の定着、要は。
 騙して、この地に魂を縛り付けようとした。
 狐らしい策である。

 パラレル甘氏「あら、狐らしい策だなんて、言ってくれるじゃない左慈ちゃん」

 左慈「これはこれは。お狐様、こちらに来られるとは珍しい。今は、確か隣国にお住まいのはずでは?」

 パラレル甘氏「あのね。私は生まれも育ちも隣国よ。こっちにも気になるダメ男が沢山いたから遠征してたってだけで」

 左慈「それで、いくつの時代をダメになされたと?」

 パラレル甘氏「煩いわね。仕方ないでしょ。偶々、好きになった男性が偶々、私に貢ぐものだから偶々、私が悪者にされちゃっただけじゃないのよ」

 左慈「ハァ。それで、こちらに来た理由は?」

 パラレル甘氏「えーっと、枝分かれした世界の1つが大変なのよね~」

 左慈「さらっととんでもないことをぶっ込みましたな」

 パラレル甘氏「だってあの世界ってさ。まだ左慈ちゃんもペーペーじゃない。そこでね。とある人物を召喚しようと思うのよね~」

 こんな軽いノリで、召喚された劉義賢には同情もしようものよ。

 左慈「召喚ですか?そのようなことをすればどうなるか分かりませんぞ」

 パラレル甘氏「大丈夫。大丈夫。あの世界をこれ以上、枝分かれしなければ良い話だし、その全てが終着地点に行き着くように変更しちゃえば良いもの」

 左慈「相変わらずとてつもない神通力ですな」

 パラレル甘氏「まぁ、これのお陰で、男を沢山たらしこめるからね~」

 悪びれすらない小悪魔とは、まさにこの女性のことを言うのだろう。
 いや女性ではなく狐か。

 パラレル甘氏「あら~女性に決まってるじゃない。狐だなんて、失礼しちゃう」

 そうだったこの狐も黄竜様と同じく心を読めるのであった。
 迂闊であった。

 パラレル甘氏「そんなことより左慈ちゃんには、こっそりその人物の協力者になってもらいたいのよね~。所謂、初めは王道系、要は劉玄徳様のために仲間を集めてもらうわけだけど後半は、そのとんでもない敵と戦ってもらわないと行けないのよ。だからちょくちょく左慈ちゃんには、お助けキャラとして、その少年に不可思議な力を見せつけてほしいのよね~」

 また、厄介なことを頼むものだ。
 だが、世界の崩壊は黄竜様とて良しとしないだろう。
 仕方がない。
 その世界の小生に少し干渉する程度のこと何の問題もない。

 パラレル甘氏「ありがとう~引き受けてくれるなんて。流石左慈ちゃん~。男前~」

 左慈「ハァ。仕方なくです。その召喚される少年があまりにも不憫ですから」

 そして、今に至るわけだが。
 隣国の妖怪ガシャドクロと王累の合体から日を置かず、今度は、この国の怪物である合窳と鍾繇の合体とは。
 やれやれ、とんでもないことにか巻き込まれて、式を酷使するあまり、小生の負担もだいぶ大きい。
 せめて、もう1人式を使いこなせるものが入れば良いのだが。
 高望みはできんな。
 やれやれ、頑張るとしようか。

 合窳鍾繇「ブヒィィィィィィィィ。人間は美味い!美味すぎる!新鮮な肉!悲鳴!全てに心が躍りまちゅねぇ」

 醜い豚の典型的な姿じゃ。

 哪吒「連戦なんて、僕ツイてる。じっちゃんのことは守るから安心してよ」

 左慈「流石に小生もこの歳じゃ。連戦は辛いわい」

 哪吒「えー。一応、じっちゃんも神様なんだよね?」

 左慈「方士じゃ。悠久の時を生きるという点では神に近いかも知れぬが、あくまで身体は人間ゆえな。殴られれば痛いし、傷付けば回復までに時間はかかる。その間はずっと痛いし、良いことはないのぉ」

 哪吒「そうなんだ。じゃ、じっちゃんが傷付かないように僕が守るよ」

 左慈「ありがとうよ哪吒」

 哪吒「ヘヘン。おやすい御用だい」

 この少年は、哪吒と言い、黄竜様から見込みがあると目をかけてもらい少年神となった。
 まぁ、新参の神様である。
 そして、今回も黄竜様はここに来られないようで、前回使った四神を呼ぶ力もない。
 さてさて、どうなることやら。
 この醜い豚を相手に哪吒と2人。
 どうにか、事を納めねばならないようじゃ。
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