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5章 天下統一
陳留にて
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鍾繇の目の前に怪しげな男が再び姿を現した。
その容姿は、若い青年の身体であった。
???「何故、あの瓶を使わぬ?お前の息子も死んだのに、父親が情けないから子供が先に死ぬのだ」
鍾繇「何とでも言えば良い。あのような奥の手、使うのは、追い込まれた時に決まっておろう。またワシの前に現れるなど捕まりにきたわけではあるまい?」
???「余を捕まえるなどとは、笑止千万。余は、お前を憂いてやっただけのこと」
鍾繇「使う機会はこちらで考えている。ワシの監視などしても無駄だ」
???「そのようだ。余は、人選を見誤ったのかも知れぬな」
鍾繇「な、何を言っておる。ゴフッ」
???「やはり、持っておらんか。敬愛する男にでも手渡したか?余のことを舐めるなよ小僧!」
鍾繇「ゴホッ。ゴホッ。何のことだかさっぱりわからんな」
???「そうか。わからんか。そうか。そうか。まだ痛めつけられたいようだな」
顔にジャブを2発からの右ストレートで、ダウンした鍾繇に跨り、交互に殴り付ける謎の男。
鍾繇「ゴベッ。カハッ」
鍾繇は殴られるたびに吐血を繰り返した。
???「どうしたどうした。余の前では何者も無力と知れ」
鍾繇「死んでから何年もこの地にしがみつく俗物が」
???「余を俗物と申すか。余こそ、この地の真の支配者にて、唯一王であるぞ!」
鍾繇「時代は常に動いておる。今のこの地の支配者は霊帝様であり、貴様ではない。さっさと消え失せろ俗物」
???「流石に、泳がせすぎたようだ。チョロチョロチョロチョロと嗅ぎ回る鼠は、もっと早くに潰しておくべきだった」
鍾繇「何のことだ!」
???「余が何も知らないとでも本当に思っていたのか?知っていたさ全部。全部な。さて、ここはもう終わりだ。用はない。だが、余は余の思い通りにならぬことが一番我慢できん。ゆえに、貴様には、化け物となって、この地にて暴れてもらうぞ」
鍾繇「な、何を。んぐぐ」
???「さぁ飲み込め。そして、闇に呑まれろ。余を嵌めようとした哀れな男よ」
鍾繇は押し込まれたものを必死に飲み込まないように吐き出そうとしていたが口に押し込まれた瓶によって、吐き出すことができない。
ゴクリと飲み込んでから鍾繇はその瓶の中に入っていた妖怪によって、その身体を奪われてしまい、深く深く意識の底に沈んで行くのだった。
その頃、兗州北部の制圧には成功したが甚大な被害を出した鄧艾・賈詡・夏侯玄の三軍は合流して、ここ陳留に迫っていた。
賈詡「何だ。この鼻を劈くような異臭は」
鄧艾「皆、鼻をつまむのだ」
夏侯玄「これは死臭か?」
李恵姑「いえ、これは呪術です」
賈詡「呪術とは何だ?」
李恵姑「そんな、皆様濮陽でのことをもうお忘れに?」
夏侯玄「何を言ってるんだい李恵姑。濮陽は、人間爆弾なる人にも思えない所業であれだけ多くの人間が」
李恵姑「そんな。記憶が書き換えられている。そう、この中には、呪術に適性のある人は居ませんでしたのね」
鄧艾「その呪術というのは、何だ。こんな異臭をも自在に操れるとでも言うのか?」
賈詡「鄧艾殿、呪術などという曖昧な存在を信じるべきではないかと」
李恵姑「呪術というのは」
???「ブヒィィィィィィィィ。美味い美味い。今一度、暴れられるとは思わなんだわ。ブヒィィィィィィィィ」
世話娘「鍾繇様、どうなされたのです。ヒッ」
???「イキの良い肉がここにも居たブヒィィィィィィィィ」
世話娘「きゃぁぁぁぁぁぁぁ。お助けください。お助けください。鍾繇様。鍾繇様。どうされたのです。イタイ。イタイ。イタイ」
ムシャムシャムシャ。
バリバリバリ。
そんな音を響かせながら鍾繇の世話をしていた村娘を食べる人面豚の怪物。
これが鍾繇の成れの果てである。
李恵姑「あれは合窳、発する声は赤子のようであり、人や虫など何でも喰らい、水害を引き起こす怪物!」
合窳鍾繇「何だぁ。イキの良い奴らがたくさん増えたでちゅねぇ。まとめて、喰ってやるブヒィィィィィィィィ!!!」
賈詡「あの顔は、鍾繇?そんな、こんなことが現実なのか?」
鄧艾「兎に角、安易に近づくな。距離を距離を保つんだ!」
夏侯玄「これが君の見てる景色なのかい?」
李恵姑「その言葉、2度目なんですよね」
しかし、一部の華北兵が言葉を聞かずに突撃を開始。
華北兵A「うおおおお!豚如きに人間様が舐められてたまるか!串刺しにして逆に喰うぞーーーー」
鄧艾「お前たち!何故、話を聞かない。あの異様な光景がわからないのか!」
李恵姑「見てる景色にすら違いがあるというの?あの兵士たちには、豚にしか見えてないとでも?」
賈詡「馬鹿どもが!近付くなという命令すら守れんのか!」
夏侯玄「何かの弾みで正気がおかしくなってるのかも知れない。兎に角、一旦距離を取るべきだ」
華北兵B「俺たちも続くぞー。豚如きが人間様を舐めやがって、豚肉にして喰ってやる」
賈詡「おい、待て!それ以上、隊列を乱すな馬鹿ども!」
李恵姑「こんな一瞬で混乱に陥るなんて」
華北兵C「手柄を横取りされてたまるか!あの豚を食うのは俺たちだーーーー」
夏侯玄「待つんだ。何を考えているんだ。この場で待機するんだ」
李恵姑「やっぱり。この戦場では、合窳が鍾繇に見えている人、豚に見えている人、その両方が合わさった異形な姿で見えてるのはほんの一握りなんだわ」
この異様な怪物の姿を見ても驚かない人の多さから、李恵姑によるこの推察は概ね正しい。
実際、最初に食べられた世話娘は鍾繇にしか見えていないし、兵士たちの言葉から豚にしか見えていないのは、明らかである。
その豚が二足で立って、人間よりも遥かに大きかろうが豚は豚と認識しているのである。
その結果、多くの兵がこの人面豚となった鍾繇に喰われることとなった。
合窳鍾繇「ブヒィィィィィィィィ。やっぱり肉はイキの良い新鮮なものに限りまちゅねぇ。もっと、たくさん喰ってやるブヒィィィィィィィィ」
濮陽と同じ惨劇がこの陳留にて巻き起ころうとしていた。
その容姿は、若い青年の身体であった。
???「何故、あの瓶を使わぬ?お前の息子も死んだのに、父親が情けないから子供が先に死ぬのだ」
鍾繇「何とでも言えば良い。あのような奥の手、使うのは、追い込まれた時に決まっておろう。またワシの前に現れるなど捕まりにきたわけではあるまい?」
???「余を捕まえるなどとは、笑止千万。余は、お前を憂いてやっただけのこと」
鍾繇「使う機会はこちらで考えている。ワシの監視などしても無駄だ」
???「そのようだ。余は、人選を見誤ったのかも知れぬな」
鍾繇「な、何を言っておる。ゴフッ」
???「やはり、持っておらんか。敬愛する男にでも手渡したか?余のことを舐めるなよ小僧!」
鍾繇「ゴホッ。ゴホッ。何のことだかさっぱりわからんな」
???「そうか。わからんか。そうか。そうか。まだ痛めつけられたいようだな」
顔にジャブを2発からの右ストレートで、ダウンした鍾繇に跨り、交互に殴り付ける謎の男。
鍾繇「ゴベッ。カハッ」
鍾繇は殴られるたびに吐血を繰り返した。
???「どうしたどうした。余の前では何者も無力と知れ」
鍾繇「死んでから何年もこの地にしがみつく俗物が」
???「余を俗物と申すか。余こそ、この地の真の支配者にて、唯一王であるぞ!」
鍾繇「時代は常に動いておる。今のこの地の支配者は霊帝様であり、貴様ではない。さっさと消え失せろ俗物」
???「流石に、泳がせすぎたようだ。チョロチョロチョロチョロと嗅ぎ回る鼠は、もっと早くに潰しておくべきだった」
鍾繇「何のことだ!」
???「余が何も知らないとでも本当に思っていたのか?知っていたさ全部。全部な。さて、ここはもう終わりだ。用はない。だが、余は余の思い通りにならぬことが一番我慢できん。ゆえに、貴様には、化け物となって、この地にて暴れてもらうぞ」
鍾繇「な、何を。んぐぐ」
???「さぁ飲み込め。そして、闇に呑まれろ。余を嵌めようとした哀れな男よ」
鍾繇は押し込まれたものを必死に飲み込まないように吐き出そうとしていたが口に押し込まれた瓶によって、吐き出すことができない。
ゴクリと飲み込んでから鍾繇はその瓶の中に入っていた妖怪によって、その身体を奪われてしまい、深く深く意識の底に沈んで行くのだった。
その頃、兗州北部の制圧には成功したが甚大な被害を出した鄧艾・賈詡・夏侯玄の三軍は合流して、ここ陳留に迫っていた。
賈詡「何だ。この鼻を劈くような異臭は」
鄧艾「皆、鼻をつまむのだ」
夏侯玄「これは死臭か?」
李恵姑「いえ、これは呪術です」
賈詡「呪術とは何だ?」
李恵姑「そんな、皆様濮陽でのことをもうお忘れに?」
夏侯玄「何を言ってるんだい李恵姑。濮陽は、人間爆弾なる人にも思えない所業であれだけ多くの人間が」
李恵姑「そんな。記憶が書き換えられている。そう、この中には、呪術に適性のある人は居ませんでしたのね」
鄧艾「その呪術というのは、何だ。こんな異臭をも自在に操れるとでも言うのか?」
賈詡「鄧艾殿、呪術などという曖昧な存在を信じるべきではないかと」
李恵姑「呪術というのは」
???「ブヒィィィィィィィィ。美味い美味い。今一度、暴れられるとは思わなんだわ。ブヒィィィィィィィィ」
世話娘「鍾繇様、どうなされたのです。ヒッ」
???「イキの良い肉がここにも居たブヒィィィィィィィィ」
世話娘「きゃぁぁぁぁぁぁぁ。お助けください。お助けください。鍾繇様。鍾繇様。どうされたのです。イタイ。イタイ。イタイ」
ムシャムシャムシャ。
バリバリバリ。
そんな音を響かせながら鍾繇の世話をしていた村娘を食べる人面豚の怪物。
これが鍾繇の成れの果てである。
李恵姑「あれは合窳、発する声は赤子のようであり、人や虫など何でも喰らい、水害を引き起こす怪物!」
合窳鍾繇「何だぁ。イキの良い奴らがたくさん増えたでちゅねぇ。まとめて、喰ってやるブヒィィィィィィィィ!!!」
賈詡「あの顔は、鍾繇?そんな、こんなことが現実なのか?」
鄧艾「兎に角、安易に近づくな。距離を距離を保つんだ!」
夏侯玄「これが君の見てる景色なのかい?」
李恵姑「その言葉、2度目なんですよね」
しかし、一部の華北兵が言葉を聞かずに突撃を開始。
華北兵A「うおおおお!豚如きに人間様が舐められてたまるか!串刺しにして逆に喰うぞーーーー」
鄧艾「お前たち!何故、話を聞かない。あの異様な光景がわからないのか!」
李恵姑「見てる景色にすら違いがあるというの?あの兵士たちには、豚にしか見えてないとでも?」
賈詡「馬鹿どもが!近付くなという命令すら守れんのか!」
夏侯玄「何かの弾みで正気がおかしくなってるのかも知れない。兎に角、一旦距離を取るべきだ」
華北兵B「俺たちも続くぞー。豚如きが人間様を舐めやがって、豚肉にして喰ってやる」
賈詡「おい、待て!それ以上、隊列を乱すな馬鹿ども!」
李恵姑「こんな一瞬で混乱に陥るなんて」
華北兵C「手柄を横取りされてたまるか!あの豚を食うのは俺たちだーーーー」
夏侯玄「待つんだ。何を考えているんだ。この場で待機するんだ」
李恵姑「やっぱり。この戦場では、合窳が鍾繇に見えている人、豚に見えている人、その両方が合わさった異形な姿で見えてるのはほんの一握りなんだわ」
この異様な怪物の姿を見ても驚かない人の多さから、李恵姑によるこの推察は概ね正しい。
実際、最初に食べられた世話娘は鍾繇にしか見えていないし、兵士たちの言葉から豚にしか見えていないのは、明らかである。
その豚が二足で立って、人間よりも遥かに大きかろうが豚は豚と認識しているのである。
その結果、多くの兵がこの人面豚となった鍾繇に喰われることとなった。
合窳鍾繇「ブヒィィィィィィィィ。やっぱり肉はイキの良い新鮮なものに限りまちゅねぇ。もっと、たくさん喰ってやるブヒィィィィィィィィ」
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