えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

華北の状況

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 豫州の陥落、陳留の明け渡しによって、曹操が魏王となっても国土を回復させるどころか削られてしまった。
 このことは曹丕を裏切り曹操を新たな魏王に迎えた華北の民らを激震させる。

 民男A「おい、聞いたか?」

 民男B「何の話だ?」

 民男A「魏王様がお膝元の豫州を失い、曹洪様を人質に取られ陳留を明け渡した噂だ」

 民男B「ば、馬鹿やろう!大きな声でその噂話をするな。元袁紹麾下の兵らに聞かれたらどうする。アイツらは魏王様ではなく未だに消えた曹丕を待望している。ただでさえ、日に日に反乱の兆しが高まっているのだぞ」

 民男A「わ、悪かったって。でもよ。つい考えちまうんだよ。本当に曹操様を魏王様として迎え入れることが正解だったのかってよ」

 民男B「お前は、今更曹丕が良かったとか言うのか?」

 民男A「いやそうじゃなくてもっと迎えるに相応しい人がいるじゃないか。劉玄徳がさ」

 民男B「それは魏王様ではなく蜀漢にすれば良かったということか?」

 民男A「まぁ、そうだな。寧ろ、そうすりゃ完全に魏王様も詰んでただろ?こんな無駄な戦しなくて済んだんじゃないかってな」

 民男B「確かに一理あるか。今からでも取り急ぎ蜀漢に」

 この状況に華北最大の都市鄴を任されている曹植は憂いていた。

 曹植「確かに兄ではなく父が返り咲いたことは素直に嬉しい。でも、何故蜀漢と戦争を始めたのか理解が追い付かない。せっかく兄がめちゃくちゃにした華北も落ち着きを取り戻していたというのに」

 崔華美「確かに、訳がわかりませんわね」

 曹植「曹彰兄さんも前線に駆り出されたし、不穏な動きを水面下でしている兄の肝煎りの元袁紹麾下の残党が残ってるだけって、だいぶまずいと思うんだよ華美~」

 崔華美「ヨシヨシ。曹植様は頑張っておられます。何たって、このめちゃくちゃだった華北をここまで建て直したのですから」

 羊祜「その功績に大きく叔母様が関わってることを忘れないでください。ですが確かに曹操様の動きは不可解です。蜀漢に助けを求め曹丕を捕らえようとした頃から蜀漢とは懇意にされていると思っていました。まさかと思いますが魏王に就く人間は狂う呪いでもかけられているのでしょうか?」

 曹植「いや、馬鹿兄に感じた不穏な気配は感じられなかったなぁ父上からは。だから何か思惑あってのことだと思うけど父上は何考えているかわからないところがあるからなぁ。華美の太腿は本当に気持ちいいなぁ」

 崔華美「フフッ。今は、公務ではありませんもの。たくさん甘えていいんですのよ曹植様」

 蔡文姫「何か考えがあるとしたら曹丕を狂わせた人間を引き摺り出すとかは、考えられるのではなくて?」

 羊祜「叔母様!曹丕の影の動きはどうでしたか?」

 蔡文姫「相変わらず沈黙ね。郭女王も曹丕の行方を探しているというところかしら」

 羊祜「そうですか。現状、華北の状況は危ういといえます。往来では、民同士が諍いを起こすことも多くなり、兵同士の衝突もありました。さらに魏王様が領土を失ったという噂から蜀漢に寝返るべきだという話をするものたちまで現れてしまっています」

 蔡文姫「そうね。ここはその民たちに便乗して、華北を蜀漢に譲り渡すのはアリかもしれないわ」

 ???「そのような勝手な真似をされては困る。この華北は、余が新たに天下を統べるために必要な土地なのだからな」

 曹植「こ、この気配は馬鹿兄の!?」

 曹丕?「フフフ。ハッハッハッハ。俺は曹丕などではない嬴政だ。俺はずっとこの時を待っていたこの華北から邪魔者が消える日をな。そして、まもなく曹操と劉備の戦も終わるだろう。その時まで、おとなしく静観させてもらう」

 嬴政の目が妖しく光ると、曹植たちはその場に倒れた。

 嬴政「李信《リシン》に蒙恬《モウテン》よ。此奴らを牢に繋いでおけ。殺しては作戦が明るみに出るからな」

 李信「はっ。始皇帝様、しかし今再びこうして力を得ようとは」

 蒙恬「あの時、時間がなくて果たせなかった夢、秦による世界征服を今こそ共に果たしましょうぞ」

 嬴政「あぁ、二人の忠節に感謝を禁じ得ないよ。フフフ。ハーッハッハッ(都合の悪い記憶だけを消せるこの新たな力も本当に良い。その結果、蘇らせたこの2人がこうも従順に従ってくれるのだからな。しかしまだ2人。まだまだ甦らさなければならない者たちが多すぎる。なんせ、この華北だけで天下をせしめねばならんからな。もっと、削りあってくれ劉備に曹操よ)」

 郭女王「そんな。生きていらしたのですね曹丕様」

 嬴政「ん?(此奴は確か曹丕が道具にしていた女か。締まりは最高だが顔はイマイチだな。まぁ、顔も良くて床上手な女など中々に居ないから無理もない。ちょうど良い。曹丕として振る舞い。これからも利用してやろう。利用されるやつはいつまでも利用される側なのだ)」

 郭女王「なんか雰囲気が変わられましたか?」

 嬴政「勘の鋭い女だ」

 郭女王「あの、何か?キャッ」

 嬴政「煩い口だ、余が閉じてやろう」

 郭女王「そんな、いきなり」

 嬴政「再会が嬉しいのだ郭女王。俺のためにまた働いてくれるか?」

 郭女王「も、勿論です曹丕様。ポッ」

 嬴政「(チョロい女で助かった。さて、コイツにしてもらうことは)余を待っていた者たちをここに集めるのだ。そして、弟が職務を放棄して逃げたから代わりに余の妻であるお前が新しく代理になったとな」

 郭女王「曹丕様が戻られましたのに、私など。んぐっ」

 嬴政「余が生きていることを知れば父がどうするかわからぬであろう?だから表にはお前に立ってもらいたいのだ。余が1番信頼しているお前をな」

 郭女王「はぁぁぁんんんん。勿論、そういうことなら表に立ちます。だから。だから。会えなくて寂しかった身体の疼きを鎮めてください」

 嬴政「勿論だとも。さぁ、行こうか」

 郭女王「はぃ」

 こうして、知らぬ間に華北は嬴政の手中となり、曹植・崔華美・蔡文姫・羊祜の4人は囚われの身となってしまった。
 嬴政の動きは早く。
 支配の瞳で、民たちが自然と郭女王を新たな統治者と認めるように誘導し、このことが外に漏れないように徹底した。
 新たな力を得た嬴政は、状態を整えると共に、劉備と曹操の戦の行方を静観するのであった。
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