えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章　天下統一

洛陽攻城戦(急)

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　城内で報告を聞く田豊と沮授。

　田豊「流石、ワシらの孫だ。完璧に任務を遂行してくれた。血気に逸る夏侯惇には、搦手を。弓兵で固める夏侯淵には奇策を」

　沮授「左右の門の包囲速度は衰えた。北門の方は間も無く敵が取り付くだろう。さて、ワシらも次の段階に進まねば」

　沮鵠「敵が包囲してない南門から逃げ出すんでしたなぁ」

　田豊麗「でも良いのかしら？あれはわざと空けてるのよねぇ。そんなところから逃げ出したら捕まってしまうわ。いやねぇ」

　田豊「なーに、心配は要らん。今からワシらは庶民じゃからな。お前たちにも迷惑をかけたな」

　民男「いえ。田豊様と沮授様にはいくら感謝してもしきれません。ここまで復興を助けてくださいました蜀漢にも。だから俺たちも」

　沮授「ダメだ。お前たちはここで降伏して、曹操にこう言うのだ。私たちは田豊と沮授に脅されて無理やり従わされていただけで、残りの食糧を提供しますから降伏を許可してくださいとな」

　民女「そんな。この食糧は、皆様のための。何もしてくれなかった曹操に渡すぐらいならいっそ」

　田豊「ならん。我らは曹操の継戦能力を奪う訳にはいかん。更なる奥地へと進ませ絡めとるためにな。これが最期の戦となろう。その時まで、お前たちも決して死んではならん。共に、霊帝様の新しき世を見届けようぞ」

　民老「長生きはするものじゃ。あんなに荒廃して、誰も助けてくれなかった洛陽に田豊様と沮授様が救いの手を出し、蜀漢のお力によってここまで復興できた。お二人がそうせよと申すのならそうするのが良い。きっとそうじゃ」

　民婆「こちらのことは生き字引のワシらにお任せくだされ。田豊様。沮授様。どうかお身体に気をつけて。うっうぅ」

　沮授「泣くでない。お主らも身体に気をつけるのだ。生きていればまた必ず会える。今日の負けは、明日への勝利の布石なのだ。そのために協力してくれたこと我々は絶対に忘れぬ」

　民男「洛陽の民一同を代表して、御礼申し上げます」

　田豊「あぁ。ではな」

　蜀漢騎兵長「我々はこの近くの地下通路を通り、青州の劉丁様と合流します。向こうからも曹操の背後を突くべく動き出しているでしょうから」

　沮授「うむ。大勢で動いてはたまに見えぬからな。劉丁様のことを頼む。あの方は蜀漢に無くてはならぬ御方。何としてもお守りするのだ」

　蜀漢騎兵長「はっ。心得ております」

　こうして、庶民に扮した田豊たち6人は、馬車を拾って、長安へと向かう。
　洛陽の北門に破城槌が取り付くと白旗を掲げる。

　曹操「ここに来て交渉とは。良かろう」

　郭嘉「田豊殿と沮授殿にしては、早い決断だね」

　洛陽内へと足を踏み入れた曹操たちを出迎えたのは。

　民老「この洛陽の長老をしております。我らは魏の皆様と敵対するつもりはなかったのじゃ。田豊と沮授に脅されて仕方なく付き従っていただけ。ここにある物資は好きに使ってもらって構わぬので、どうか。どうか。降伏を認めてもらえぬだろうか？」

　曹操「成程。して、そうであれば田豊と沮授は何処に行った？民たちで捕えたのだろう？」

　民女「敗戦が濃厚と知ると街道を走る馬車に乗って、長安の方へお逃げになられましたわ」

　郭嘉「ここ洛陽は時間稼ぎの最期だったわけだね。こちらに少しでも痛手を負わせ、撤退する。逃げ道を確保していたあたり、流石田豊殿に沮授殿かな」

　曹操「なら兵士どもはどうした？アイツらに付き従っていた兵らの姿が見えんが？」

　民男「そんなの俺たちが聞きたい。外に出て行った奴らは一度も戻ってきてねぇし。中に居た奴らは、忽然と姿を消した。この洛陽の中に秘密の地下通路があったりしてな」

　それとなくそれっぽい情報を出すが勿論、洛陽の中にそんな通路はない。
　探す口実を与え、時間稼ぎをしようと考えた民たちの想いである。

　曹操「成程。もう一つ聞きたい。東門の戦いで使われた武器についてだ」

　民男「あぁ。アレか。確か、長い年月をかけて尿と糞で作った火薬とか言ってたかな」

　この情報は共有しても構わないと聞いていた。
　それらしい情報も提供しないと降伏が偽だと判断される可能性があるからだ。

　郭嘉「尿と糞で。アレを作ったか。成程」

　戯志才「ウンコ爆弾とは」

　曹操「そんなものを作ったのは誰だ？」

　民婆「蜀漢の劉玄徳の弟だと聞いておる」

　曹操「やはり劉丁か。戦場に顔を出さなくとも被害を与えるとは。厄介な男だ」

　郭嘉「あぁ。そうだね。でも、青州からの報告では、劉義賢は、平原城に籠りっきりとのことだよ」

　曹操「このまま長安まで進みたかったが。消えた兵らの行方を探さぬわけにもいくまい。民家の中も検めることがあると思うが協力を」

　民老「勿論じゃ。降伏を許可してくださり感謝致す」

　曹操は郭嘉と戯志才と協議する。

　曹操「どう思った？」

　郭嘉「偽りの降伏ってわけではないようだね。ただ、義理は立ててる。地下通路の件は鵜呑みにしない方が良いかな。恐らくあってもここにはないよ。あるとしたらこの近くの茂みの中とかが怪しいんじゃないかな」

　戯志才「ふむ。であるならば簡易的に調べるフリをして、長安へ」

　曹操「いや。今回はここまでとし、冬が明けて進軍を開始する」

　郭嘉「まぁ、それが無難かな。でも、この動きは明らかに僕たちを罠に嵌めた動きだよ。長安で何が待ち受けているか」

　曹操「フッ。罠だとしても劉備と決着を付けねばなるまい。それに我が子の行方はとうとう分からずじまい。アイツが何かしでかすとして。その時に万が一にも俺がいない場合、劉備に後を頼むほかない」

　郭嘉「成程。曹操殿は覚悟を決めているようだね。わかったよ。最期までその博打に付き合うよ」

　戯志才「鬼が出るか蛇が出るかですな」

　曹操「うむ」

　こうして曹操は簡易的に地下通路を捜索し、見つからなかったとして、ここで冬を越すことを決める。
　こうして第一次、蜀漢侵攻作戦は、豫州を失い、兗州の南部の要所、陳留を失うも洛陽を得るという。
　曹操の負けで幕を閉じる。

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