えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

5章 天下統一

長安決戦前夜(蜀漢)

　長安決戦における軍議が始まる。

　劉備「先ず初めに私が最前線に出ることは確定しているとお伝えしておこう」

　劉備の発言に龐統を始めとする軍師たちが否定意見を述べる。

　龐統「アッシは劉備殿が最前線に立つことはやめていただきたいと思ってるよ」

　田豊「今はあの時と違って、少数精鋭ではない。劉備様が無茶をする必要はなかろうて」

　沮授「自ら危険な場所に立つ必要などございますまい」

　法正「軍の最高責任者が前に立つなど馬鹿げている。劉備様には後方にてどっしりと構えていてもらいたい」

　姜維「ここは、各将軍の働きに期待して劉備様には後方にて大人しく」

　陸遜「これだけの人間がいて、最前線に立つなど正気の沙汰ではありません。万が一があったらどうするおつもりですか！」

　魯粛「それに敵の数が当初予定していたよりも少なく同数となったとはいえ。無理に前線に赴けば、流れ矢の危険性も高まります」

　皆がやいのやいのと言う中、諸葛亮・荀彧・徐庶・周瑜の4人が劉備が前線に立つことの利点を挙げるが反論が飛んできて、ヒートアップする。

　諸葛亮「確かに劉備殿が最前線に立つのは、あまりにも無謀だと思うかもしれません。士元の言う通り、皆に任せて後ろで控えているというのも一つの手ではあります。しかし、我々は何か忘れていませんか？」

　龐統「孔明、それなら聞こうかね。アッシらが何を忘れてると言うのかね？」

　諸葛亮「それはここに立ち並ぶ将軍の誰よりも我が殿が強いということです」

　法正「な、何を馬鹿な！？」

　徐庶「まぁ法正殿たちが信じられないのも無理はないよ。殿はお世辞にも強いとはとても見えないからね」

　劉備「それは辛辣だな徐庶」

　徐庶「劉備殿。まぁ、事実だと思って受け流してください」

　劉備「う、うむ」

　陸遜「しかし強いから最前線に立って良いことにはなりません！寧ろ、強いからこそ油断が生まれて」

　周瑜「伯符、俺たちは幾度となく劉備軍と戦ってきた。油断しているところを見たことがあるか？」

　孫策「陸遜への反乱じゃなくて俺に振るのかよ公瑾。ま、そうだな。ここにいない優秀な軍師様が裏で手を回してるって考えるなら劉備が最前線に立つことも織り込み済みってことなんだろ？」

　呂布「孫策将軍の言う通りだな。義賢の奴なら徹底して裏を固めているだろう。その上で劉備が最前線に立つことが必要だと判断してるなら。その脇を我らで固めてお守りすれば良いだけのこと」

　魯粛「呂布将軍、簡単に言いますが。補佐するこちらは、被害を軽視できません。万が一のある危険なところへ劉備様を向かわせることをおいそれと許可できません」

　徐庶「まぁ、皆が劉備殿のことを考えての発言ってのはわかるよ。でもね。危険無くして最大の戦果を得ることなんてできるかな？」

　姜維「無理に危険に飛び込んで、戦果を得るよりも着実に行くべきでしょう！」

　馬超「姜維、もっともらしいことを言っているが武人たるもの戦場に立ちたいと思うものだ。これが最後と思えば、より貪欲にな」

　姜維「それは結果論でしょう！これが最後になると断言できますか？できませんよね！」

　荀彧「その言葉と同じように、万が一の時ばかり考えてるのはどうなのです？確かに着実に行くことは大事でしょう。ですが時には虎の尾を踏むような危険を犯さなければならないときもあるのですよ」

　敢えて危険を犯したくない軍師たち。
　武人の立場から劉備の気持ちを察する将軍たち。
　両者が劉備のことを思いやるからこそここまで議論がヒートアップしているのである。

　諸葛亮「では、劉備殿が最前線に立つことに反対の皆様は、総大将が劉備殿であることも反対とお考えですか？」

　龐統「そんな当たり前のことを聞くなんて、孔明らしくない質問だねぇ」

　諸葛亮「かもしれませんね」

　徐庶「孔明、士元の言葉に肯定したらダメじゃないか」

　諸葛亮「元直。肯定はしていませんよ。ここで皆に問いたいのですが相手の総大将は誰でしょう？」

　龐統「！？それを持ち出すとは少し卑怯じゃないかい孔明」

　諸葛亮「何のことでしょう？」

　龐統「してやってりってわけかい。全く」

　姜維「どういうことですか鳳雛様」

　龐統「簡単なことさ。格って奴さ。相手の総大将は、魏王曹操。対するこちらの最高責任者を趙雲将軍で良いのかいってことさ」

　法正「！？そ、そういうことか。確かに格という考えをするなら総大将同士にするべきだ。こちらはそれを否定した」

　龐統「そういうことさ」

　魯粛「臥竜殿にしては、随分とやり方が汚い気がしますが」

　諸葛亮「さて、何のことでしょう？私はただ皆様に問いを投げかけただけですよ」

　陸遜「確かに格を考えるのであれば、趙雲将軍では釣り合わないかもしれません。ですが関羽将軍なら如何です。軍神と恐れられ、劉備様の義兄弟であらせられる。曹操にぶつける格として、十分ではありませんか？」

　関羽「某のことを持ち上げてくれるのは大変嬉しく思うが。兄者には、某と翼徳が本気で挑んでも勝てなかった」

　張飛「悔しいけどよ。腕が鈍ってると思って油断したとかねぇぜ。後半はマジで本気だったしな」

　2人の言葉を聞いて、絶句する反対派の軍師たち。
　誰も口を開かない中、龐統が降参とばかりに言う。

　龐統「まぁ、最強戦力と称される2人が組んでも勝てないなら。アッシらは信じるしかないさ」

　陸遜「待ってください！お認めになるのですか？そ、そうだ。呂布将軍なら」

　呂布「陸遜の言葉は素直に嬉しいがそれはできぬ相談だ。何故なら俺は今残念なことに陳留にて、濮陽攻めの総大将をしていることになってる。ここにいてはいけない存在だからな」

　呂布の爆弾発言に陸遜も口をあんぐりとして、それ以上何もいえなかった。

　劉備「紆余曲折あったが皆異論無しということで構わないな？」

　劉備の言葉に皆頷いたところで、大まかな戦の流れが話し合われ以下のことが決まった。
　中央本隊を劉備、副官に関羽と張飛。
　左翼総指揮を孫堅、副官に孫策と趙雲。
　右翼総指揮を呂布、副官に馬超と黄忠。
　それぞれの元に他の将軍たちが振り分けられ、最終的には本隊40万、左翼20万、右翼20万の合計80万にて、長安城を背に野戦することを決める。