えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

5章 天下統一

慌ただしい青州

　劉義賢のたちが鄴へと旅立ってからこの青州の地を任されたのは、郝昭と郭淮であった。

　関索「郝昭だっけ？なぁ、叔父上を追うこと許してくれよ。な？な？」

　郝昭「ダメです！劉丁様より、外に出すなと命じられておりますので」

　関索「おいおいおい、郝昭はさ。俺のやったことが間違ってると思ってるわけ？」

　郝昭「それは、その」

　関索「だよなぁ。俺が騎兵隊に奇襲を仕掛けたからこの平原城はさ。守られたんだよ。それをさあの叔父上は、何が敵の被害も最小限にしようとしてただよ。攻めてきた奴らは敵だろ？全滅させなきゃ何度も襲いかかってくるよな？な？」

　郝昭「それは、確かにそうですが」

　関索「だろ？お前は話のわかる奴だって思ってたんだよ。俺は、叔父上の役に立ってるよな？だったらわかるだろ？鄴に俺も向かうんだよ。だ・か・ら、今ここを預かってるお前からの命令ってのが必要なわけ。わかるだろ？」

　郭淮「関索殿、我儘を言うのはやめてくだされ！郝昭殿も困っておられる。上官の指示に従うのが軍の鉄則ですぞ」

　関索「チッ。郭淮かよ。頑固な奴が来やがった。郝昭、俺の言ってることに協力してくれんなら、こっそり門開けとけや。わかってるよな？」

　郝昭「・・・。」

　郝昭は、悩みに悩み抜いた末、門を開けることはしなかった。

　関索「クソが！郝昭の奴も叔父上の言いなりかよ！何で、誰も俺の功績を認めようとしねぇんだよ！俺たちのお陰で、平原城を守れたようなもんだろうが！」

　王桃「太守殿は、我々を冷遇し過ぎではないか？」

　王悦「お姉様、そうではない気がします。関索様自身で、何か気付いて欲しいことがあるのかと」

　鮑三娘「でもあの騎兵隊を全滅させなかったから向こうが強攻することをやめなかったのよ。その結果、20万もの兵が葬れたのは関索の功績のはずよ。それを怒るなんて筋違いじゃない？」

　花鬘「きっと違うのだ。先生は、私が学生だった時に敵を殺すだけが戦じゃないとか言ってた気がするのだ」

　関索「はっ？戦はどれだけの人を殺すかだろうが！何で、20万もの兵を殺す功績の手伝いをした俺が冷飯食わされなきゃなんねぇんだよ！しかも、捕虜の頼みを聞いて鄴に出兵するとか、どうせ口実にして掠め取るつもりだろうが！アイツは自分の手柄のことしか考えてねぇんだよ！あー。ムシャクシャするぜ！」

　数ヶ月後。

　伝令「郝昭様！劉義賢様より報告！ままなくこちらに参られるであろう劉備様たちのおもてなしを頼むと」

　郝昭「ここに劉備様が？それは、戦に我々が勝利したということでしょうか？」

　伝令「いえ、その大変申し上げ難いのですが、劉義賢様は、鄴にて負傷されました。今現在、交戦中で、劉備様に援軍を求めたとのこと」

　郝昭「！？それは、こちらからも直ぐに援軍を関索殿、お願いできるか？」

　関索「こうなると思ったから前々から言ってたよな？俺を鄴に向かわせろってな。その時は断っておいて、今更都合良過ぎだろ。俺は拒否するぜ」

　郭淮「関索殿、その言葉は軍旗違反とみなしますぞ？」

　関索「チッ。面倒な奴が来やがったか。どうするかな。イテテテテ。あーダメだ。こりゃ、お腹が猛烈に痛くて、行けそうにねぇや。ここ、俺が守っといてやるからよ。甥の俺より叔父上の信頼厚いお前らが行ってやれよ。あーこりゃ痛すぎるぜ。俺のことなら気にしなくて良いぞ」

　郭淮「関索殿！関索殿！何なのだあの御仁は。本当に軍神関羽殿の御子息なのか」

　郝昭「ハァ。兄弟の誰よりも早く婚姻し、鼻が伸びているのかもしれません」

　郭淮「だとしてもだ。軍旗違反をするなど到底許されることではないぞ！」

　郝昭「いや、劉丁様はこちらからの援軍は？」

　伝令「別段、求めているそぶりはございません。皆様には、劉備様を迎え入れて、兵糧を用立てるようにと」

　郝昭「だそうだ。軍旗違反とは言えないさ」

　郭淮「しかしだな。家族が危険に晒されているというのに助けに向かうことを拒否するなど信じられん！」

　郝昭「こちらはこちらで準備を進めるとしよう」

　さらに1週間を経過した頃。

　劉備「兵の数が多いな」

　郝昭「お待ちしておりました劉備様。劉丁様から伝令が届き、援軍に向かう皆様のための兵糧を用立てるようにと言付かっています」

　劉備「丁の伝令がここに？なのに何故、援軍に向かったそぶりが無いのだ？」

　郭淮「軍神関羽殿の御子息である関索殿に出陣要請したのですが断られましてな。城を開けて、援軍に行くわけにも行きませんで、劉備様、大変申し訳なく！」

　関羽「何！？関索の奴が出陣要請を断っただと？何処にいる！」

　関索「親父、何だよ来るんなら言ってくれよ。聞いてくれ、俺さ20万の兵を葬る手伝いをしたんだぜ。それなのによアイツときたら俺を遠ざけるんだよ。親父なら俺の気持ち」

　関羽「馬鹿者が！貴様は、義賢の側にいながらアイツのことを何も学ばなかったのだな！こんな出来損ないを義賢の下に置いていたなど関家の恥だ！」

　関索「親父まで俺を認めねぇのかよ！叔父上、叔父上、叔父上って、アイツはそんなに偉いのかよ？アァ？戦において敵を殺した方が偉いだろうが！ガハッ」

　関羽「兄者？」

　劉備「もう一度言ってみよ？事と次第によっては、雲長の子であろうと許さん！敵であろうとこの国を生きる民だ！丁は、いつだって慈しみを持ち接してきた！その丁に対して、偉いのか？だと！このクズが！偉いに決まってるだろ！戦場において、敵兵を殺さずに生かすことがどれだけ大変か分かっているのか！丁は、それを何十年もずっと続けてきたのだぞ！それが今の我が軍の礎になっているのだ！それを貴様は！何も理解していないクソガキとは貴様のことを言うのであろうな！従軍させなかった理由がよーく分かった！関索、貴様には許昌にて謹慎を命じる！2度と私の前に顔を出すな！」

　関索「フン。俺の功績を認めねぇ奴らの言うことなんて誰が聞くかよ。俺は勝手にさせてもらうぜ。グフッ」

　尚も駄々をこねる関索の鳩尾に的確な一撃を入れて気絶させる関羽。

　関羽「兄者、愚息のことをどうかお許しくだされ」

　劉備「雲長、すまない。丁のことを見捨てたと聞いて、腑が煮え繰り返ってしまったようだ。大人気なかった。すまん」

　関羽「いえ、頭をお上げください兄者。某自身、甘やかせすぎたのやも知れません。愚息に何も教えて来なかった。関興は学んでくれたようだが関索は」

　劉備「雲長、もう良い。お前まで子供のことを悪く言うな。私も言いすぎた。関索には鄴までの案内役を命じる。そこで汚名を注ぐが良い」

　関羽「兄者の寛大な御心に感謝します」

　一悶着あったが劉備たちは青州で補給を済ませると鄴へと向かうのであった。