えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

鄴、作戦本部

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 劉義賢が曹植を庇い、毒矢を受けて寝込んだことで、曹仁と満寵は撤退を断念せざるを得なくなった。
 安静なベッドに劉義賢を寝かせる。

 曹仁「某が敵の挑発如きで冷静さを欠いたばかりにこのようなことに」

 満寵「悔いていても仕方ありません。それよりも曹植様、この状況がお分かりですか?」

 曹植「つわものが 我を守りて 命尽く」

 崔華美「流石、曹植様です!」

 曹植「へ、へへ。華美ちゃんに褒められると照れるよ~」

 満寵「、、、。この状況をまるで理解できていない見えます曹植様は、一体どうされたのです?」

 劉豹「閉じ込められてる間もずっとあのような感じで居たので、2人とも余程精神が削られているものかと」

 鄧艾「我々の失態です。申し訳ありません」

 蔡文姫「ここを治められていた時は、聡明でもっと詠もキレキレだったのですよ」

 羊祜「叔母様、擁護するところはそこじゃないよ。自暴自棄になることは防げたので、閉じ込められている間は、これでも良いかと思っていたのですが、まさか解放されてもこんな感じで2人の時間に篭られるとは思いませんでした」

 少し離れたところで呻いている義賢の側で看病している2人。

 義賢「う、うぅ」

 張苞「叔父貴!だ、大丈夫だからよ!ここは安全だからよ!もう暫くの辛抱だからよ!」

 関興「張苞、そう騒いでは叔父上がゆっくり休めないだろう。しかし、これで寇封に続き叔父上まで」

 満寵「怪我人を抱えての撤退を進言した私にも落ち度はあります。ここからどうやって逆転するべきか。既に鄴城は包囲されつつあります。もう逃げることは不可能でしょう」

 曹仁「これなら劉義賢殿の言う通り、橋頭堡として機能させるためにもっと防衛設備の建築を急がせるべきだったと今更後悔しても仕方あるまい。今、某たちがどうこの場を切り抜けるか。こう囲まれていては、援軍も望めぬからな」

 と、作戦本部の中は先ほどからまるで、お通夜状態である。
 曹植と崔華美は、扉の中に閉じ込められただけでなく度重なる始皇帝からの精神攻撃に耐え抜きはしたが、このように精神状態は不安定となっていた。
 寇封と曹純は、鄴の支配をしていた趙高。
 この場合は、趙高Aとでも言った方が良いだろうか。
 それとの戦いで負傷し、戦線への復帰は現在は絶望的。
 事ここに至っては、撤退を進言した満寵に何の落ち度もない。
 この場で悪いのは、外に出た途端2人の世界に入った曹植と崔華美の責任と言わざるを得ない。
 しかし、この2人も精神状態が安定していなかった。
 そのことを見逃していた劉義賢が悪いのだろう。

 義賢「う。はぁ。はぁ。こ、こ、は?」

 張苞「叔父貴!目を覚ましたのか。良かったぜ」

 義賢「ぐっ。はぁ。はぁ。話は、聞こえて、いた。皆も、そう、自分を、責めるな。悪いのは、兵を、率いた、俺だ。ここが、鄴城なら、もう、撤退は、見込めない。こうなる、少し前に、長安に、伝令を、放った。運が、尽きて、いなければ。はぁ。はぁ」

 関興「叔父上!今は、話さずに安静に!」

 義賢「はぁ。はぁ。ダメだ。お前たちが、俺の、言葉を、曹仁殿に、伝えるのだ。この場で、1番、戦の経験が、豊富な、曹仁殿に、俺の、代理を。ぐっ」

 張苞「叔父貴!叔父貴!」

 関興「騒ぐな張苞!叔父上は、気を失っただけで大丈夫だ。今のところ命に別状はない。今のところはだがな」

 関興は義賢の言葉を伝えるため曹仁の元に向かう。

 曹仁「関興殿か。劉義賢殿の具合は?」

 関興「先程、一時的に目を覚まされ、この軍の代理責任者を曹仁殿にお願いしたいと」

 曹仁「某に軍の最高責任者を!?荷が重すぎる!それに某は捕虜の身、ここは軍神の子である関興殿こそ相応しいと考える」

 関興「いや、俺に叔父上の代理なんて不可能だ。戦の経験もそんなにない。叔父上がいるからこそ好き勝手動けていたことに最近気付いた大馬鹿者だ。この場を乗り切るには、戦の経験が豊富で防衛戦に長ける曹仁殿こそ相応しい。勿論、我々も力をお貸しする」

 曹仁「ふむぅ。わかった。して、劉義賢殿は、他に何か言って居なかったか?」

 関興「叔父上は、ここが包囲される少し前に両軍が相見えているとされる長安へと伝令を放ったそうだ。運が良ければ、ここの援軍に向かってくれているだろうと」

 曹仁「なんと!?それは朗報だ。あの未知の敵を前に殿と劉備殿が手を結んでくれるかどうかであるが」

 関興「どこまでの情報を伝えたのかわからない以上、今いる面々で、敵をどう押し返すかを考えるしかない事には変わりないかと」

 曹仁「そうであるな。関興殿は引き続き、劉義賢殿の看病をお願いしたいところであるが」

 関興「人手不足の中、いつまでも叔父上の側にいては、怒られてしまう。喜んで御協力致そう。あの敵は、人の形をした化け物と変わらない。元はこの国の民である以上、殺す事に抵抗はあるが油断すれば躊躇なくこちらがやられると心得るべきでしょう」

 曹仁「うむ。普通の感覚が通じぬ敵であることは間違いない。一度死んだと確認したものがもう一度別の人間に憑依して、目の前に現れたのだからな」

 関興「あの術を仕掛けている人間だけだこの場にいない事は幸いです。ですが捕まって連れ去られるようなことがあれば」

 曹仁「うむ。向こうの戦力を増やすべきではない。これこそ、こちらの兵力の損失を無くして、敵にだけ痛手を与えるしかない。幸いにも某はそういうことが得意だ。劉義賢殿の信頼に応えるためにも精一杯、尽力させてもらおう」

 関興「宜しくお願いします曹仁殿」

 こうして、無事に鄴城の内部へと退いた蜀漢・魏連合軍の作戦は決まった。
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