19 / 166
1章 第六天魔王、異世界に降り立つ
19話 迎撃策
しおりを挟む
サブローと無事合流することができたロー、ヤス、タンダザークは、姿の違うマリーに驚きその説明を受ける。
「若、このドジ娘がエルフと呼ばれる亜人族とおっしゃられるのだな?俄には信じられぬがこの異様な姿、我らと異なることはわかるが。しかし」
「サブロー様、俺は気にしませんよ。元々奴隷っていう最下層の人間です。エルフでもなんでも受け入れますよ。この危機を脱せれるなら」
「坊ちゃんは、妙なのを惹きつけますなぁ。しかし、あの足の速かった嬢ちゃんがエルフとは。驚きはするがあの速さは人間離れしてたし納得もできやす、か」
皆、エルフという言葉には引っかからないことから耳長族だとワシが思っていたのがどうやらエルフという亜人であることは周知の事実であるということか。やれやれ、元の世界で聞き覚えのない言葉は、理解するまで難しいな。
「まぁ、そのなんだ。ワシは、マリーがどのような姿でも変わらず家臣だと考えておる。エルフと呼ばれる亜人であったとしてもな」
サブローの言葉を受けて、ローは理解を示す。
「若がそう言われるのでしたら何も異論はござらん。それにしてもあのおっちょこちょいの典型的だったお主がエルフであったとはな。よく隠し切れたものだと感心している」
「ロー様、嘘を吐き続けたこと申し訳ありません」
「何、マリーにも何か事情があってのことなのだろう。謝る必要はない」
「ありがとうございます」
ローはマリーの気持ちを慮り、それ以上謝る必要はないとそれに対してマリーは御礼を言う。
「マリー殿、模擬戦の時みたいに此度も頼りにしてます」
「ヤス様にそう言われると頑張らなければなりませんね」
ヤスは心強い味方を得たと手を差し出し握手を求め、マリーもそれに応えて握手を交わす。
「しかし、マジカル王国の人間だけが魔法を使えるものだとばかり思ってやしたが、あの魔法の威力を見たものとしては、複雑な気もしやすな」
「あんな、紛い物と一緒だと思ったら大間違いなんですからね!」
「ゲゲゲ、あれよりも高威力でやすか?それはちと心に悪いでやすな」
「高威力?紛い物の魔法など軽く打ち砕ける程度ですよ」
魔法を直に見たタンダザークは顔を引き攣らせながらマリーと言葉を交わし、紛い物呼ばわりされて、さらに顔を青くしていた。
「マリーよ。タンザクをそう虐めてやるな。うぬの魔法はこの後見せてやれ良いのだからな」
「はい。若様」
サブローは、比べられたことに腹を立てたマリーに詰め寄られているタンダザークに助け舟をだすと同時にマリーには、発破をかけておく。
「しかし若、ここはハザマオカでしたな?このような建築物などなかったはずだが?」
「うむ。マリーの魔法で簡易で作った砦じゃ」
「魔法で作った砦?」
ロー爺のこの反応からも分かる通りどうやらこちらの世界では防衛設備というものは無いようだ。これは利用すれば我らにとって大きな力となろう。
「うむ。このように相手から攻め込まれにくい地形にはこのような砦と呼ばれる防衛拠点を築いて置くと敵をより深く足止めできるのだ。嘘だと思うのならそこの櫓を登って見てみるが良い」
ロー、ヤス、タンダザークの3人が登って眼下を覗き込み驚きの声を上げる。上から見れば、この丘の罠の構造が一目瞭然なのだ。枝分かれしたルートの片方が行き着く先は開けた窪地なのだが格好の狩場となるだろうことが容易に想像できる。さらにそこへ誘導するための落石罠まで設置しているのだ。一体この丘をどれだけの兵が居たら攻略できるのだろうと。
「若、この戦勝てますぞ!」
「このような地形を利用して計算された罠を張り巡らせるとは、流石サブロー様です」
「いや坊ちゃんの戦術の凄さは、あの時見せてもらったけどよ。こりゃハッキリ言ってやばいぜ。少なくとも俺が敵なら絶対に登りたくねぇな」
「エッヘン、作ったのは私なんですからもっと褒めても良いのですよ」
勝利を確信するロー。その叡智に畏怖しながらもおだてるヤス。遠回しに味方で良かったと伝えてくるタンダザーク。作ったのは私よとドヤ顔のマリー。
「まぁ弱点もあるのだがな」
「弱点とは?一見、どこにもそんなものは見当たらないが」
「俺の方も思い当たりませんね」
「こっちもさっぱりだぜ」
わからないという3人にその答えを教えるサブロー。
「簡単な話だ。1つ、ここを登らず我らを無視して通り抜けられれば、全くの意味はない。2つ、相手がこれを見て罠に敏感な場合、兵を複数分けて被害を最小限にしながら登りきるであろうな」
「若、1つ目に関しては、流石に敵も大将首を前にして、それはあり得ないとは思いますが。成程、2つ目は、攻略方法としては正しい気がしますな」
「まぁ限りなく低くとも可能性として0でない限り、その可能性もあるということを視野に入れなければならない」
「いくらサブロー様でも、まさか?」
「うむ。ヤスよ。無論、兵を分けた場合も考えている。ワシは相手の行動をいくつも予測しておるからな」
「サブロー様なら間違いはありません」
「坊ちゃんが1番、おっかねぇや」
「その歳でそれだけの知謀。若、我らは指示に従いますぞ」
一片の迷いもなく信頼の言葉をかけるヤス。顔を引き攣らせながら戦術の高さにドン引きしているタンダザーク。サブローの智謀を褒め称えるロー。迎撃の確認をして、3日経った眼下には、3千のナバル郡とタルカ郡の連合軍が現れたのである。
「若、このドジ娘がエルフと呼ばれる亜人族とおっしゃられるのだな?俄には信じられぬがこの異様な姿、我らと異なることはわかるが。しかし」
「サブロー様、俺は気にしませんよ。元々奴隷っていう最下層の人間です。エルフでもなんでも受け入れますよ。この危機を脱せれるなら」
「坊ちゃんは、妙なのを惹きつけますなぁ。しかし、あの足の速かった嬢ちゃんがエルフとは。驚きはするがあの速さは人間離れしてたし納得もできやす、か」
皆、エルフという言葉には引っかからないことから耳長族だとワシが思っていたのがどうやらエルフという亜人であることは周知の事実であるということか。やれやれ、元の世界で聞き覚えのない言葉は、理解するまで難しいな。
「まぁ、そのなんだ。ワシは、マリーがどのような姿でも変わらず家臣だと考えておる。エルフと呼ばれる亜人であったとしてもな」
サブローの言葉を受けて、ローは理解を示す。
「若がそう言われるのでしたら何も異論はござらん。それにしてもあのおっちょこちょいの典型的だったお主がエルフであったとはな。よく隠し切れたものだと感心している」
「ロー様、嘘を吐き続けたこと申し訳ありません」
「何、マリーにも何か事情があってのことなのだろう。謝る必要はない」
「ありがとうございます」
ローはマリーの気持ちを慮り、それ以上謝る必要はないとそれに対してマリーは御礼を言う。
「マリー殿、模擬戦の時みたいに此度も頼りにしてます」
「ヤス様にそう言われると頑張らなければなりませんね」
ヤスは心強い味方を得たと手を差し出し握手を求め、マリーもそれに応えて握手を交わす。
「しかし、マジカル王国の人間だけが魔法を使えるものだとばかり思ってやしたが、あの魔法の威力を見たものとしては、複雑な気もしやすな」
「あんな、紛い物と一緒だと思ったら大間違いなんですからね!」
「ゲゲゲ、あれよりも高威力でやすか?それはちと心に悪いでやすな」
「高威力?紛い物の魔法など軽く打ち砕ける程度ですよ」
魔法を直に見たタンダザークは顔を引き攣らせながらマリーと言葉を交わし、紛い物呼ばわりされて、さらに顔を青くしていた。
「マリーよ。タンザクをそう虐めてやるな。うぬの魔法はこの後見せてやれ良いのだからな」
「はい。若様」
サブローは、比べられたことに腹を立てたマリーに詰め寄られているタンダザークに助け舟をだすと同時にマリーには、発破をかけておく。
「しかし若、ここはハザマオカでしたな?このような建築物などなかったはずだが?」
「うむ。マリーの魔法で簡易で作った砦じゃ」
「魔法で作った砦?」
ロー爺のこの反応からも分かる通りどうやらこちらの世界では防衛設備というものは無いようだ。これは利用すれば我らにとって大きな力となろう。
「うむ。このように相手から攻め込まれにくい地形にはこのような砦と呼ばれる防衛拠点を築いて置くと敵をより深く足止めできるのだ。嘘だと思うのならそこの櫓を登って見てみるが良い」
ロー、ヤス、タンダザークの3人が登って眼下を覗き込み驚きの声を上げる。上から見れば、この丘の罠の構造が一目瞭然なのだ。枝分かれしたルートの片方が行き着く先は開けた窪地なのだが格好の狩場となるだろうことが容易に想像できる。さらにそこへ誘導するための落石罠まで設置しているのだ。一体この丘をどれだけの兵が居たら攻略できるのだろうと。
「若、この戦勝てますぞ!」
「このような地形を利用して計算された罠を張り巡らせるとは、流石サブロー様です」
「いや坊ちゃんの戦術の凄さは、あの時見せてもらったけどよ。こりゃハッキリ言ってやばいぜ。少なくとも俺が敵なら絶対に登りたくねぇな」
「エッヘン、作ったのは私なんですからもっと褒めても良いのですよ」
勝利を確信するロー。その叡智に畏怖しながらもおだてるヤス。遠回しに味方で良かったと伝えてくるタンダザーク。作ったのは私よとドヤ顔のマリー。
「まぁ弱点もあるのだがな」
「弱点とは?一見、どこにもそんなものは見当たらないが」
「俺の方も思い当たりませんね」
「こっちもさっぱりだぜ」
わからないという3人にその答えを教えるサブロー。
「簡単な話だ。1つ、ここを登らず我らを無視して通り抜けられれば、全くの意味はない。2つ、相手がこれを見て罠に敏感な場合、兵を複数分けて被害を最小限にしながら登りきるであろうな」
「若、1つ目に関しては、流石に敵も大将首を前にして、それはあり得ないとは思いますが。成程、2つ目は、攻略方法としては正しい気がしますな」
「まぁ限りなく低くとも可能性として0でない限り、その可能性もあるということを視野に入れなければならない」
「いくらサブロー様でも、まさか?」
「うむ。ヤスよ。無論、兵を分けた場合も考えている。ワシは相手の行動をいくつも予測しておるからな」
「サブロー様なら間違いはありません」
「坊ちゃんが1番、おっかねぇや」
「その歳でそれだけの知謀。若、我らは指示に従いますぞ」
一片の迷いもなく信頼の言葉をかけるヤス。顔を引き攣らせながら戦術の高さにドン引きしているタンダザーク。サブローの智謀を褒め称えるロー。迎撃の確認をして、3日経った眼下には、3千のナバル郡とタルカ郡の連合軍が現れたのである。
1
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
リメイク先:「視線が合っただけで美少女が俺に溺れる。異世界で最強のハーレムを作って楽に暮らす」
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる