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2章 オダ郡を一つにまとめる
26話 アイランド公国の王都キュートスクへと経つ
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手紙を受け取り、馬車の手配をするサブローのことを不思議に思うマリーは、そのことをサブローに聞く。
「若様、どうして馬車の手配を?」
「マリーの背中を使わないことが不満か?」
「そ、そ、そ、そんなんじゃありませんよ。でも確かに高速で移動できる手段があるのにどうしてなのかと」
マリーの意見は最もである。
しかし、この場合は悪手にもなり得る。
どうして、王都が手配した使者よりも早く着いたのかと。
魔法を使っていることが疑われている状況で、これは致命的なミスとなり得る。
ゆえにサブローは、馬車での移動を選択した。
「確かにマリーの言う通りする方が早く着こう。しかし、どうして早く着いたのかの説明が面倒だ。だからワシは、馬車にてゆっくりと王都へ目指すことにしたというわけだ」
「成程、全て若様の計算通りなのですね」
「うむ。して、マッシュよ。王都に着いても暫くは顔を隠して控えていることはできるか?」
マリーの言葉に頷くとサブローは、マッシュに視線を移し、話を始める。
「殿がそうせよとおっしゃるのであれば、何か策があるのでしょう?」
「あぁ。ナバル郡がワシに賠償金を確実に払うように仕向けてやろう」
「怖い怖い。殿に気に入られたことだけがワシにとっての幸運ですな。あのまま戦っていたらと思うと生きた心地がしませんぞ。戦場に立つ歴戦の将軍などと言われて、少しばかりの誇りを持っておりましたが殿にかかれば、赤子の手をひねるようなものなのではないかと自信を無くしそうですな」
「そんなことはあるまいよ。ワシは知恵を存分に使うておるだけのこと。戦となれば、もっと慎重に情報収集を行い、相手の優位を打ち砕かねば味方の被害が増えよう」
「ガハハ。これで8歳なのですから末恐ろしいですな。殿なら何れこの島国を統一し、大陸に打って出るのでしょうな」
「そのためにも人材の発掘と育成、船の建造、商人の自由商売などやることは山積みだがな。本来であれば、まず足元を固めたかったのだがな。これも、ワシの性《さが》と諦めようぞ」
マッシュがサブローの言葉を聞いて、マリーに顔を引き攣らせながら話す。
「ワシは、とんでもない人に仕えているのではないか?陛下よりもよっぽど陛下らしく見えるのだが」
「マッシュ様、安心なさってください。私も、若様の方がこの国の真の主に見えていますから」
マッシュとマリーの言い分ももっともである。
この島国の中でもアイランド公国は非常に小さい。
ここで改めて、説明しよう。
北には3つの大国がある。
1つは、騎士を中心とした国家であり、アイランド公国の同盟相手でもあるガルディアン王国、マジカル王国と絶えず争っている国でもある。
1つは、魔法を中心とした魔術師の国家であり、ガルディアン王国と小競り合いの絶えないマジカル王国。
そして、先の2つよりも広い広野を治めるがあまり動きのない遊牧国家のノルマディック王国、元はたくさんの遊牧民族が転々としていたのを統一した英雄ハーン・チルギス大帝。
これらに比べてアイランド公国は豆粒みたいなものである。
そして、これがヴァルシュラ大陸であり、島国なのだ。
この他には亜人と呼ばれる存在が明らかではない国が3つある。
1つは、エルフと呼ばれる耳が長く弓術と魔法に優れていて、森においては一人一人が一騎当千の猛者と称されるエルフリート王国。
1つは、ドワーフと呼ばれる背が小さくて酒好きで物作りに関して優れた技術を持ちながらも喧嘩好きの者たちが最高級の武器と防具を身に纏っているが土の中に王国を築いたアースグランド王国。
1つは、研究に囚われたサイコパス野郎が動物と人を交配させて、生み出した獣人たちを守るために1人の竜人が立ち上がり建国したドラビスト王国。
そう、大事なことなので何度も言うがこのヴァルシュラ大陸は島国なのである。
見渡せば海が広がっていて、遠い遠い視線の先にはうっすらと陸地も見える。
ゆえに大陸はここだけではない。
しかし、今まで外の世界から人が来たこともなければ、こちらから外に出ようとした者も居ない稀有な大陸といえる。
「若、馬車の手配ができました」
ローがサブローに告げに来た。
「であるか。ロー爺よ。留守の間は、委細任せる」
「承知。若の御無事を祈っております」
「うむ。では行くぞ」
こうして馬車にてゆっくりと王都に向かうサブローに付いていくのは、身の回りの世話と護衛を担う本名不明のエルフ族マリー。
馬に乗り、馬車の周りを固めるマッシュの率いる兵2百。
王都キュートスクへの道のりは、街道をゆっくりと進んで、約1ヶ月はかかる。
その間にいくつかの郡を通るため、陛下の招聘令状を見せて、それぞれの関所にいる門番に通してもらうのだが、中にはこういう奴もいるもので。
「陛下の招聘令状を見ても通すことはできないと?」
「そうは言ってやせんがね。ほら、通りたいなら渡すものがあるでしょうとそう言ってるんでやすよ」
「マル領主から足止めを頼まれたか?」
「責任転嫁は良くありませんなぁ。こちらは別に構わないんでやすよ。でも、王都に間に合わなかったら陛下がどう思いやすかね?」
「成程、成程。気が聞かなくて申し訳ない。マリー、リンゴを持ってきてくれ」
「若様、リンゴですか?」
マリーはサブローの意図が分からずにリンゴを持ってくる。
「なんでやすか?はぁ、アッシの言いたいことがわかってるでやすか?」
「安心せよ。お前が欲しているのはこの中に入っておる」
「成程、隠してると言うわけでやすか。関心でやすね。それでは。ゴボボボボ」
受け取ろうとした門番の口にサブローは、勢いよくリンゴを突っ込んで、直ぐに近くの別の奴を呼び、門番が急に倒れたと。
「若様、どうして馬車の手配を?」
「マリーの背中を使わないことが不満か?」
「そ、そ、そ、そんなんじゃありませんよ。でも確かに高速で移動できる手段があるのにどうしてなのかと」
マリーの意見は最もである。
しかし、この場合は悪手にもなり得る。
どうして、王都が手配した使者よりも早く着いたのかと。
魔法を使っていることが疑われている状況で、これは致命的なミスとなり得る。
ゆえにサブローは、馬車での移動を選択した。
「確かにマリーの言う通りする方が早く着こう。しかし、どうして早く着いたのかの説明が面倒だ。だからワシは、馬車にてゆっくりと王都へ目指すことにしたというわけだ」
「成程、全て若様の計算通りなのですね」
「うむ。して、マッシュよ。王都に着いても暫くは顔を隠して控えていることはできるか?」
マリーの言葉に頷くとサブローは、マッシュに視線を移し、話を始める。
「殿がそうせよとおっしゃるのであれば、何か策があるのでしょう?」
「あぁ。ナバル郡がワシに賠償金を確実に払うように仕向けてやろう」
「怖い怖い。殿に気に入られたことだけがワシにとっての幸運ですな。あのまま戦っていたらと思うと生きた心地がしませんぞ。戦場に立つ歴戦の将軍などと言われて、少しばかりの誇りを持っておりましたが殿にかかれば、赤子の手をひねるようなものなのではないかと自信を無くしそうですな」
「そんなことはあるまいよ。ワシは知恵を存分に使うておるだけのこと。戦となれば、もっと慎重に情報収集を行い、相手の優位を打ち砕かねば味方の被害が増えよう」
「ガハハ。これで8歳なのですから末恐ろしいですな。殿なら何れこの島国を統一し、大陸に打って出るのでしょうな」
「そのためにも人材の発掘と育成、船の建造、商人の自由商売などやることは山積みだがな。本来であれば、まず足元を固めたかったのだがな。これも、ワシの性《さが》と諦めようぞ」
マッシュがサブローの言葉を聞いて、マリーに顔を引き攣らせながら話す。
「ワシは、とんでもない人に仕えているのではないか?陛下よりもよっぽど陛下らしく見えるのだが」
「マッシュ様、安心なさってください。私も、若様の方がこの国の真の主に見えていますから」
マッシュとマリーの言い分ももっともである。
この島国の中でもアイランド公国は非常に小さい。
ここで改めて、説明しよう。
北には3つの大国がある。
1つは、騎士を中心とした国家であり、アイランド公国の同盟相手でもあるガルディアン王国、マジカル王国と絶えず争っている国でもある。
1つは、魔法を中心とした魔術師の国家であり、ガルディアン王国と小競り合いの絶えないマジカル王国。
そして、先の2つよりも広い広野を治めるがあまり動きのない遊牧国家のノルマディック王国、元はたくさんの遊牧民族が転々としていたのを統一した英雄ハーン・チルギス大帝。
これらに比べてアイランド公国は豆粒みたいなものである。
そして、これがヴァルシュラ大陸であり、島国なのだ。
この他には亜人と呼ばれる存在が明らかではない国が3つある。
1つは、エルフと呼ばれる耳が長く弓術と魔法に優れていて、森においては一人一人が一騎当千の猛者と称されるエルフリート王国。
1つは、ドワーフと呼ばれる背が小さくて酒好きで物作りに関して優れた技術を持ちながらも喧嘩好きの者たちが最高級の武器と防具を身に纏っているが土の中に王国を築いたアースグランド王国。
1つは、研究に囚われたサイコパス野郎が動物と人を交配させて、生み出した獣人たちを守るために1人の竜人が立ち上がり建国したドラビスト王国。
そう、大事なことなので何度も言うがこのヴァルシュラ大陸は島国なのである。
見渡せば海が広がっていて、遠い遠い視線の先にはうっすらと陸地も見える。
ゆえに大陸はここだけではない。
しかし、今まで外の世界から人が来たこともなければ、こちらから外に出ようとした者も居ない稀有な大陸といえる。
「若、馬車の手配ができました」
ローがサブローに告げに来た。
「であるか。ロー爺よ。留守の間は、委細任せる」
「承知。若の御無事を祈っております」
「うむ。では行くぞ」
こうして馬車にてゆっくりと王都に向かうサブローに付いていくのは、身の回りの世話と護衛を担う本名不明のエルフ族マリー。
馬に乗り、馬車の周りを固めるマッシュの率いる兵2百。
王都キュートスクへの道のりは、街道をゆっくりと進んで、約1ヶ月はかかる。
その間にいくつかの郡を通るため、陛下の招聘令状を見せて、それぞれの関所にいる門番に通してもらうのだが、中にはこういう奴もいるもので。
「陛下の招聘令状を見ても通すことはできないと?」
「そうは言ってやせんがね。ほら、通りたいなら渡すものがあるでしょうとそう言ってるんでやすよ」
「マル領主から足止めを頼まれたか?」
「責任転嫁は良くありませんなぁ。こちらは別に構わないんでやすよ。でも、王都に間に合わなかったら陛下がどう思いやすかね?」
「成程、成程。気が聞かなくて申し訳ない。マリー、リンゴを持ってきてくれ」
「若様、リンゴですか?」
マリーはサブローの意図が分からずにリンゴを持ってくる。
「なんでやすか?はぁ、アッシの言いたいことがわかってるでやすか?」
「安心せよ。お前が欲しているのはこの中に入っておる」
「成程、隠してると言うわけでやすか。関心でやすね。それでは。ゴボボボボ」
受け取ろうとした門番の口にサブローは、勢いよくリンゴを突っ込んで、直ぐに近くの別の奴を呼び、門番が急に倒れたと。
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