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2章 オダ郡を一つにまとめる
55話 白熱する的当て
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サブロー・ハインリッヒの的当てというまた聞き慣れない言葉に昨日と同じく千人の参加者たちは、困惑していた。
「これはすまない。簡単にルールを説明しようと思う」
ルールというのは、決まりだそうだ。
例の如く、この世界では、こっちの方がわかりやすいということで、使っているが勿論、聞き慣れないワシには、使いこなせているかいまいち不安だがな。
「30メートル・50メートル・70メートル・90メートルの4つの的を弓矢で撃ち抜いて貰う。1人の持ち矢は、1つにつき3射。合計12射による得点を競ってもらう。真ん中に近いほど点が高く、離れる程点が小さくなる。外れた場合は勿論0点だ。ここまでは理解できたか?」
サブロー・ハインリッヒの言葉に全員が頷く。
「まぁ、どんなものか実際に見てもらった方が良いだろう。マリー、手始めに手本を見せてやってくれないか?」
「かしこまりました若様」
マリーは、30メートルの前に立つと精神を集中させて、弓を構えて矢を放ち、それは見事に真ん中を射抜いていた。
マリーが弓を構える姿に見惚れていた観客たちも大興奮していた。
「うおおおおお!あの女、凄すぎだろ!あんな遠くの的の真ん中に矢を突き刺しやがった!」
「流石、領主様が手本を頼むほどの腕前。でも女性なのが残念ね。女性は戦に出られないから。あんなに腕が良くてもね」
この言葉にサブロー・ハインリッヒは、こう返した。
「マリーよ。綺麗な手本を感謝する。今のは、真ん中の黄色い的なので、10点となる。このマリーは、ワシの新たに組織する弓兵隊の部隊長を任せることが決まっている。ワシは、女性だから戦への参加を認めないということはない。このマリーに憧れて、我が軍へ入隊を希望するというのなら性別は問わない。今からでもこの的当てに参加したいというなら構わない」
サブロー・ハインリッヒの言葉に、その場にいた女性たちの何人かが飛び入り参加することとなった。
そんな中、一際大歓声が起こった人物が1人、スナイプと呼ばれる弓使いである。
「嘘だろ!あの男。30メートルや50メートルだけでなく70メートルや90メートルも3射同時に放って、全て真ん中を射抜きやがった!ブラボー!アンタは最高だ!」
「なんて、美しいフォームなの。惚れ惚れしちゃうわ~」
ほぉ。
スナイプの奴、弓を持って3年とは思えない腕前だな。
アイツと出会ったのは、魔獣とやらに脅かされているハンターの集落だったな。
集落の長だった父を魔獣に殺され、跡を継いだ母も傷を負って、途方に暮れていたスナイプに、訳を聞くと、接近戦で集団で魔獣を狩り、市場に下ろして生活していたが、悪徳商人に上前をはねられて、碌な装備も無かった。
あれでは死傷者が増えると試しに弓を渡してみたところ、全員が全員見事に使いこなして、安全に魔獣を狩ることができるようになったのだったな。
あっワシが魔獣と呼んでいるのは、あのようなもの日の本では見たことがないからだ。
この世界の住人にとっては、あれが動物らしいのだが。
ワシへの恩返しのためにはるばるやってきたという事か。
相撲では、一回戦で横綱に投げ飛ばされて、良いところが無かったな。
本領発揮といったところか。
「スナイプ・ハンター様、全弾真ん中によって、得点は120点。単独首位となりました。おめでとうございます」
的当ての審判は、目が良いマリーに任せている。
「いや、貴殿の弓の腕前も相当なものと感じました。良ければ、勝負していただきたい」
「それは、ちょっと」
マリーが困ったようにこちらを見るので、ワシは助け舟を出してやることにした。
「スナイプよ。久しいな。来てくれて感謝している。マリーと勝負したいということだが、それはこの的当てを勝ち抜いた時、考えてやろう。あくまで、これは予選ゆえな」
「これは、サブロー様!サブロー様の御前で、大変失礼を。わかりました。先ずは、この的当てに全力を注いで見せよう」
「期待している」
相撲の時と違い、横綱は、全弾。
「横綱様。全弾、的中ならず。得点は、0点となります」
「おいどんに、繊細なコントロールは向いてないでごわす」
この結果には、領民たちも笑い転げていた。
「いや~横綱、これはこれで楽しませてもらったぜ。また相撲で俺たちに絶対王者の貫禄を見せ付けてくれ!」
「あらあら~横綱さんでも不得意なことがあるのね~」
「セル!頑張れ~~。今日も期待しているぞ~~~」
若干、1人というかセル・マーケットの父親は、セルに声援を送っていたが、そのセル・マーケットの結果はというと。
「セル・マーケット様。30メートルで青の的に1射命中。50メートルで白の的に2射命中。70メートルと90メートルでは的に的中ならずで、合計得点は10点となります」
「ありがとうございました。いや、とても難しかったです。また機会があれば、練習して使いこなせるようになりたいです」
ちなみに得点の計算だが黄色の的は10点、赤の的は8点、青の的が6点、黒の的が4点、白の的が2点となっている。
横綱よりは頑張ったが的に当てたのは凄いことだ。
相撲で良い成績を残していた殆どの者たちが0点で沈む中、10点も取れたのだからな。
「良いぞ~セル!頑張ったな!次も期待してるぞ~」
「キャー。あの子、青と白の的を撃ち抜いたわ~。私のハートも撃ち抜いて~。いや~ん。カッコいい~」
黄色い声援を送っているのは、相撲ですっかりファンとなった女だ。
結構際どい発言をしていたと言えば、わかるだろうか?
ちなみにファンというのは、熱烈な支持者のことである。
全く、聞きなれない言葉を使うのは疲れる。
全員が終わって、上位100名によるトーナメント戦が行われることとなった。
「これはすまない。簡単にルールを説明しようと思う」
ルールというのは、決まりだそうだ。
例の如く、この世界では、こっちの方がわかりやすいということで、使っているが勿論、聞き慣れないワシには、使いこなせているかいまいち不安だがな。
「30メートル・50メートル・70メートル・90メートルの4つの的を弓矢で撃ち抜いて貰う。1人の持ち矢は、1つにつき3射。合計12射による得点を競ってもらう。真ん中に近いほど点が高く、離れる程点が小さくなる。外れた場合は勿論0点だ。ここまでは理解できたか?」
サブロー・ハインリッヒの言葉に全員が頷く。
「まぁ、どんなものか実際に見てもらった方が良いだろう。マリー、手始めに手本を見せてやってくれないか?」
「かしこまりました若様」
マリーは、30メートルの前に立つと精神を集中させて、弓を構えて矢を放ち、それは見事に真ん中を射抜いていた。
マリーが弓を構える姿に見惚れていた観客たちも大興奮していた。
「うおおおおお!あの女、凄すぎだろ!あんな遠くの的の真ん中に矢を突き刺しやがった!」
「流石、領主様が手本を頼むほどの腕前。でも女性なのが残念ね。女性は戦に出られないから。あんなに腕が良くてもね」
この言葉にサブロー・ハインリッヒは、こう返した。
「マリーよ。綺麗な手本を感謝する。今のは、真ん中の黄色い的なので、10点となる。このマリーは、ワシの新たに組織する弓兵隊の部隊長を任せることが決まっている。ワシは、女性だから戦への参加を認めないということはない。このマリーに憧れて、我が軍へ入隊を希望するというのなら性別は問わない。今からでもこの的当てに参加したいというなら構わない」
サブロー・ハインリッヒの言葉に、その場にいた女性たちの何人かが飛び入り参加することとなった。
そんな中、一際大歓声が起こった人物が1人、スナイプと呼ばれる弓使いである。
「嘘だろ!あの男。30メートルや50メートルだけでなく70メートルや90メートルも3射同時に放って、全て真ん中を射抜きやがった!ブラボー!アンタは最高だ!」
「なんて、美しいフォームなの。惚れ惚れしちゃうわ~」
ほぉ。
スナイプの奴、弓を持って3年とは思えない腕前だな。
アイツと出会ったのは、魔獣とやらに脅かされているハンターの集落だったな。
集落の長だった父を魔獣に殺され、跡を継いだ母も傷を負って、途方に暮れていたスナイプに、訳を聞くと、接近戦で集団で魔獣を狩り、市場に下ろして生活していたが、悪徳商人に上前をはねられて、碌な装備も無かった。
あれでは死傷者が増えると試しに弓を渡してみたところ、全員が全員見事に使いこなして、安全に魔獣を狩ることができるようになったのだったな。
あっワシが魔獣と呼んでいるのは、あのようなもの日の本では見たことがないからだ。
この世界の住人にとっては、あれが動物らしいのだが。
ワシへの恩返しのためにはるばるやってきたという事か。
相撲では、一回戦で横綱に投げ飛ばされて、良いところが無かったな。
本領発揮といったところか。
「スナイプ・ハンター様、全弾真ん中によって、得点は120点。単独首位となりました。おめでとうございます」
的当ての審判は、目が良いマリーに任せている。
「いや、貴殿の弓の腕前も相当なものと感じました。良ければ、勝負していただきたい」
「それは、ちょっと」
マリーが困ったようにこちらを見るので、ワシは助け舟を出してやることにした。
「スナイプよ。久しいな。来てくれて感謝している。マリーと勝負したいということだが、それはこの的当てを勝ち抜いた時、考えてやろう。あくまで、これは予選ゆえな」
「これは、サブロー様!サブロー様の御前で、大変失礼を。わかりました。先ずは、この的当てに全力を注いで見せよう」
「期待している」
相撲の時と違い、横綱は、全弾。
「横綱様。全弾、的中ならず。得点は、0点となります」
「おいどんに、繊細なコントロールは向いてないでごわす」
この結果には、領民たちも笑い転げていた。
「いや~横綱、これはこれで楽しませてもらったぜ。また相撲で俺たちに絶対王者の貫禄を見せ付けてくれ!」
「あらあら~横綱さんでも不得意なことがあるのね~」
「セル!頑張れ~~。今日も期待しているぞ~~~」
若干、1人というかセル・マーケットの父親は、セルに声援を送っていたが、そのセル・マーケットの結果はというと。
「セル・マーケット様。30メートルで青の的に1射命中。50メートルで白の的に2射命中。70メートルと90メートルでは的に的中ならずで、合計得点は10点となります」
「ありがとうございました。いや、とても難しかったです。また機会があれば、練習して使いこなせるようになりたいです」
ちなみに得点の計算だが黄色の的は10点、赤の的は8点、青の的が6点、黒の的が4点、白の的が2点となっている。
横綱よりは頑張ったが的に当てたのは凄いことだ。
相撲で良い成績を残していた殆どの者たちが0点で沈む中、10点も取れたのだからな。
「良いぞ~セル!頑張ったな!次も期待してるぞ~」
「キャー。あの子、青と白の的を撃ち抜いたわ~。私のハートも撃ち抜いて~。いや~ん。カッコいい~」
黄色い声援を送っているのは、相撲ですっかりファンとなった女だ。
結構際どい発言をしていたと言えば、わかるだろうか?
ちなみにファンというのは、熱烈な支持者のことである。
全く、聞きなれない言葉を使うのは疲れる。
全員が終わって、上位100名によるトーナメント戦が行われることとなった。
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