信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

文字の大きさ
71 / 193
2章 オダ郡を一つにまとめる

71話 大興奮で祭りは終わりを迎える

 いざ開始の合図をロー・レイヴァンドがしようとした時、ウマスキから更なる提案がなされる。

「サブロー様、名誉ある馬廻りの隊長の役職が与えられる馬レースです。いっそのこと障害を増やして、より特別なレースとしたいのですが宜しいでしょうか?」

「であるか。ローよ。お前の目から見て、どう思う?」

 ワシは民の手前であることもあり、ロー爺ではなく、臣下の立場ということを明確させるためにローと呼び捨てにする。

「はっ。若。ゴホン。サブロー様。恐れながら彼女たちの技量なら問題ないかと」

「であるか。良かろう。マリーよ。上級コース用に用意していた高さを3段階調整した棒の柵を待ってくるのだ」

 ワシの言葉で、マリーが持ってきた50センチ・70センチ、1メートルの3段階の棒柵が適切な場所に設置される。

「ウマスキよ。これでどうだ?」

「サブロー様の計らいに有り難く存じます」

「では、皆の者ワシの馬廻りの隊長となるべく励が良い。ローよ。始めよ!」

「はっサブロー様。これより、3日目の祭り最後となるエキシビションマッチを始める。今回の勝者には、サブロー様の馬廻りとして側に仕える名誉ある務めが与えられる。各々、女に産まれた不運などという悪しき慣習を改めようとしない貴族どもに見せつけてやれ!」

 ロー・レイヴァンドの激によって、馬競走が始まった。

「ウマスキ殿、良き提案に感謝する。我が志は、騎士となることだ。この夢を現実にさせてくれるかもしれないサブロー様のため。この勝負、負けるわけにはいかん。我が愛馬、ソウコウヒデーンが必ず勝利を手にさせてもらう」

「白馬の王女様となるべく鮮やかに勝利をもぎ取らせていただきますわよ」

「2人とも、良い勝負をしましょう。誰が勝っても、皆でサブロー様をお支えするために」

「無論だ」

「白馬の王女様になるついでならよろしくってよ」

 セキトーバとソウコウヒデーンとパイローンに乗る3人が横一列に並んで、そんな会話をかわしながら直線コースを駆け抜けていく。

「おーっと。序盤はセキトーバにソウコウヒデーンとパイローンが横一列に並んでいる。間も無く直線コースが終わり、緩やかなカーブの後、泥沼地獄が待っているぞ」

 泥沼に足を取られて、速度を落とす中、一頭の馬が高い跳躍力で何と泥沼を飛び越えた。

「なんと、なんと、なんと。アメイジング。一気に一位に躍り出たのは、テキーロだ。これには観客の皆んなも驚いて空いた口が塞がらないぞ」

「テキーロ、貴方は私に幸運をもたらしてくれる良馬よ。そのまま飛び越えて」

 他の馬が泥沼に脚を取られる中、泥沼を飛び越えたテキーロが単独首位となりぐんぐんとその差を広げていく。

「ほぉ。競争だからあのようなこともあるが本来泥沼となる時は、雨が降った後の地面のぬかるみ。戦では飛び越えることはできん。しかし、これもまた面白い」

「若様。ずいぶん楽しそうですね」

 サブローの呟きにマリーが応える。

「あぁ。結果的にワシが考えていたことの全てがウマスキの提案のお陰で、領民にもすんなりと受け入れられたからな」

「若様は、随分とあの娘のことを買っているようですね」

「自分の意見をハッキリという人間は好ましいとは思わんか。そこに、より良い対話が生まれるからな。しかし、どうする、この馬競争では、テキーロはかなりの強敵であろう」

「こんなに楽しそうな若様は、タルカとナバルの連合軍を破った時以来ですね」

「戦だけが頭を使うわけではないからな。この状況に負けず嫌いの他の者たちがどうするか。楽しみではないか」

 サブロー・ハインリッヒの言う通り、泥沼に脚を取られて遅れを取った者たちだが、なんとか抜け出すことに成功していた。

「セキトーバ、結構離されちゃったね。どうしよっか。まだ早かったんだけど。振り落とされないようにしないとね」

「ソウコウヒデーン、まだいけるな。逆境こそ真価を発揮するものである」

「パイローンが泥で茶色に、これじゃ白馬の王女様じゃなくて、茶馬王女様じゃない。この怒り、レースに勝って晴らしてやるのですわ!」

「ゼツエーイ、私よりも先にへばっても私より先に死んでもダメよ。さぁ、駆けなさい」

「おーっと、泥沼地獄を抜け出した後続たちがぐんぐんと速度をあげていく。テキーロへと勢いそのままに迫っている」

「大丈夫よ。先程の跳躍力で、この棒柵も。えっ?」

「おーっと、テキーロ。どうした、棒柵を前に全く動かない。この間に次々と追い付いた後続たちが棒柵を飛び越えていく~」

「どうしたのテキーロ?ひょっとして、さっき勢い余って、着地で怪我した?」

「ヒヒーン、プルプル」

「そう、やはり私の不運が周りを苦しめるのね」

 いやはや。
 あの距離を飛び越えて、疲れただけであろう。
 馬といえど体力には気をつけてやらねば。
 あの者には、そういうことを教えてやらねばな。
 勝負も大詰め、最後の直線であるな。

「さぁ、ラストスパートに向け、各馬横並びからのデッドヒート。今、決着!レイヴァンド卿より、結果が発表される模様です」

「1位は、セキトーバ!2位は、0.02秒差でソウコウヒデーン!3位は、2位に0.05秒程遅れて、パイローン!4位は3位に0.02秒程遅れて、ゼツエーイ。5位は見せ場こそ作りはしたが体力切れで大きく遅れてテキーロ。各馬の奮闘に最大限の敬意と賞賛を」

 観客席から領民・貴族問わず大きな拍手が巻き起こり、祭りは大盛況で幕を閉じる。
感想 0

あなたにおすすめの小説

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
恋愛
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。