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2章 オダ郡を一つにまとめる
71話 大興奮で祭りは終わりを迎える
いざ開始の合図をロー・レイヴァンドがしようとした時、ウマスキから更なる提案がなされる。
「サブロー様、名誉ある馬廻りの隊長の役職が与えられる馬レースです。いっそのこと障害を増やして、より特別なレースとしたいのですが宜しいでしょうか?」
「であるか。ローよ。お前の目から見て、どう思う?」
ワシは民の手前であることもあり、ロー爺ではなく、臣下の立場ということを明確させるためにローと呼び捨てにする。
「はっ。若。ゴホン。サブロー様。恐れながら彼女たちの技量なら問題ないかと」
「であるか。良かろう。マリーよ。上級コース用に用意していた高さを3段階調整した棒の柵を待ってくるのだ」
ワシの言葉で、マリーが持ってきた50センチ・70センチ、1メートルの3段階の棒柵が適切な場所に設置される。
「ウマスキよ。これでどうだ?」
「サブロー様の計らいに有り難く存じます」
「では、皆の者ワシの馬廻りの隊長となるべく励が良い。ローよ。始めよ!」
「はっサブロー様。これより、3日目の祭り最後となるエキシビションマッチを始める。今回の勝者には、サブロー様の馬廻りとして側に仕える名誉ある務めが与えられる。各々、女に産まれた不運などという悪しき慣習を改めようとしない貴族どもに見せつけてやれ!」
ロー・レイヴァンドの激によって、馬競走が始まった。
「ウマスキ殿、良き提案に感謝する。我が志は、騎士となることだ。この夢を現実にさせてくれるかもしれないサブロー様のため。この勝負、負けるわけにはいかん。我が愛馬、ソウコウヒデーンが必ず勝利を手にさせてもらう」
「白馬の王女様となるべく鮮やかに勝利をもぎ取らせていただきますわよ」
「2人とも、良い勝負をしましょう。誰が勝っても、皆でサブロー様をお支えするために」
「無論だ」
「白馬の王女様になるついでならよろしくってよ」
セキトーバとソウコウヒデーンとパイローンに乗る3人が横一列に並んで、そんな会話をかわしながら直線コースを駆け抜けていく。
「おーっと。序盤はセキトーバにソウコウヒデーンとパイローンが横一列に並んでいる。間も無く直線コースが終わり、緩やかなカーブの後、泥沼地獄が待っているぞ」
泥沼に足を取られて、速度を落とす中、一頭の馬が高い跳躍力で何と泥沼を飛び越えた。
「なんと、なんと、なんと。アメイジング。一気に一位に躍り出たのは、テキーロだ。これには観客の皆んなも驚いて空いた口が塞がらないぞ」
「テキーロ、貴方は私に幸運をもたらしてくれる良馬よ。そのまま飛び越えて」
他の馬が泥沼に脚を取られる中、泥沼を飛び越えたテキーロが単独首位となりぐんぐんとその差を広げていく。
「ほぉ。競争だからあのようなこともあるが本来泥沼となる時は、雨が降った後の地面のぬかるみ。戦では飛び越えることはできん。しかし、これもまた面白い」
「若様。ずいぶん楽しそうですね」
サブローの呟きにマリーが応える。
「あぁ。結果的にワシが考えていたことの全てがウマスキの提案のお陰で、領民にもすんなりと受け入れられたからな」
「若様は、随分とあの娘のことを買っているようですね」
「自分の意見をハッキリという人間は好ましいとは思わんか。そこに、より良い対話が生まれるからな。しかし、どうする、この馬競争では、テキーロはかなりの強敵であろう」
「こんなに楽しそうな若様は、タルカとナバルの連合軍を破った時以来ですね」
「戦だけが頭を使うわけではないからな。この状況に負けず嫌いの他の者たちがどうするか。楽しみではないか」
サブロー・ハインリッヒの言う通り、泥沼に脚を取られて遅れを取った者たちだが、なんとか抜け出すことに成功していた。
「セキトーバ、結構離されちゃったね。どうしよっか。まだ早かったんだけど。振り落とされないようにしないとね」
「ソウコウヒデーン、まだいけるな。逆境こそ真価を発揮するものである」
「パイローンが泥で茶色に、これじゃ白馬の王女様じゃなくて、茶馬王女様じゃない。この怒り、レースに勝って晴らしてやるのですわ!」
「ゼツエーイ、私よりも先にへばっても私より先に死んでもダメよ。さぁ、駆けなさい」
「おーっと、泥沼地獄を抜け出した後続たちがぐんぐんと速度をあげていく。テキーロへと勢いそのままに迫っている」
「大丈夫よ。先程の跳躍力で、この棒柵も。えっ?」
「おーっと、テキーロ。どうした、棒柵を前に全く動かない。この間に次々と追い付いた後続たちが棒柵を飛び越えていく~」
「どうしたのテキーロ?ひょっとして、さっき勢い余って、着地で怪我した?」
「ヒヒーン、プルプル」
「そう、やはり私の不運が周りを苦しめるのね」
いやはや。
あの距離を飛び越えて、疲れただけであろう。
馬といえど体力には気をつけてやらねば。
あの者には、そういうことを教えてやらねばな。
勝負も大詰め、最後の直線であるな。
「さぁ、ラストスパートに向け、各馬横並びからのデッドヒート。今、決着!レイヴァンド卿より、結果が発表される模様です」
「1位は、セキトーバ!2位は、0.02秒差でソウコウヒデーン!3位は、2位に0.05秒程遅れて、パイローン!4位は3位に0.02秒程遅れて、ゼツエーイ。5位は見せ場こそ作りはしたが体力切れで大きく遅れてテキーロ。各馬の奮闘に最大限の敬意と賞賛を」
観客席から領民・貴族問わず大きな拍手が巻き起こり、祭りは大盛況で幕を閉じる。
「サブロー様、名誉ある馬廻りの隊長の役職が与えられる馬レースです。いっそのこと障害を増やして、より特別なレースとしたいのですが宜しいでしょうか?」
「であるか。ローよ。お前の目から見て、どう思う?」
ワシは民の手前であることもあり、ロー爺ではなく、臣下の立場ということを明確させるためにローと呼び捨てにする。
「はっ。若。ゴホン。サブロー様。恐れながら彼女たちの技量なら問題ないかと」
「であるか。良かろう。マリーよ。上級コース用に用意していた高さを3段階調整した棒の柵を待ってくるのだ」
ワシの言葉で、マリーが持ってきた50センチ・70センチ、1メートルの3段階の棒柵が適切な場所に設置される。
「ウマスキよ。これでどうだ?」
「サブロー様の計らいに有り難く存じます」
「では、皆の者ワシの馬廻りの隊長となるべく励が良い。ローよ。始めよ!」
「はっサブロー様。これより、3日目の祭り最後となるエキシビションマッチを始める。今回の勝者には、サブロー様の馬廻りとして側に仕える名誉ある務めが与えられる。各々、女に産まれた不運などという悪しき慣習を改めようとしない貴族どもに見せつけてやれ!」
ロー・レイヴァンドの激によって、馬競走が始まった。
「ウマスキ殿、良き提案に感謝する。我が志は、騎士となることだ。この夢を現実にさせてくれるかもしれないサブロー様のため。この勝負、負けるわけにはいかん。我が愛馬、ソウコウヒデーンが必ず勝利を手にさせてもらう」
「白馬の王女様となるべく鮮やかに勝利をもぎ取らせていただきますわよ」
「2人とも、良い勝負をしましょう。誰が勝っても、皆でサブロー様をお支えするために」
「無論だ」
「白馬の王女様になるついでならよろしくってよ」
セキトーバとソウコウヒデーンとパイローンに乗る3人が横一列に並んで、そんな会話をかわしながら直線コースを駆け抜けていく。
「おーっと。序盤はセキトーバにソウコウヒデーンとパイローンが横一列に並んでいる。間も無く直線コースが終わり、緩やかなカーブの後、泥沼地獄が待っているぞ」
泥沼に足を取られて、速度を落とす中、一頭の馬が高い跳躍力で何と泥沼を飛び越えた。
「なんと、なんと、なんと。アメイジング。一気に一位に躍り出たのは、テキーロだ。これには観客の皆んなも驚いて空いた口が塞がらないぞ」
「テキーロ、貴方は私に幸運をもたらしてくれる良馬よ。そのまま飛び越えて」
他の馬が泥沼に脚を取られる中、泥沼を飛び越えたテキーロが単独首位となりぐんぐんとその差を広げていく。
「ほぉ。競争だからあのようなこともあるが本来泥沼となる時は、雨が降った後の地面のぬかるみ。戦では飛び越えることはできん。しかし、これもまた面白い」
「若様。ずいぶん楽しそうですね」
サブローの呟きにマリーが応える。
「あぁ。結果的にワシが考えていたことの全てがウマスキの提案のお陰で、領民にもすんなりと受け入れられたからな」
「若様は、随分とあの娘のことを買っているようですね」
「自分の意見をハッキリという人間は好ましいとは思わんか。そこに、より良い対話が生まれるからな。しかし、どうする、この馬競争では、テキーロはかなりの強敵であろう」
「こんなに楽しそうな若様は、タルカとナバルの連合軍を破った時以来ですね」
「戦だけが頭を使うわけではないからな。この状況に負けず嫌いの他の者たちがどうするか。楽しみではないか」
サブロー・ハインリッヒの言う通り、泥沼に脚を取られて遅れを取った者たちだが、なんとか抜け出すことに成功していた。
「セキトーバ、結構離されちゃったね。どうしよっか。まだ早かったんだけど。振り落とされないようにしないとね」
「ソウコウヒデーン、まだいけるな。逆境こそ真価を発揮するものである」
「パイローンが泥で茶色に、これじゃ白馬の王女様じゃなくて、茶馬王女様じゃない。この怒り、レースに勝って晴らしてやるのですわ!」
「ゼツエーイ、私よりも先にへばっても私より先に死んでもダメよ。さぁ、駆けなさい」
「おーっと、泥沼地獄を抜け出した後続たちがぐんぐんと速度をあげていく。テキーロへと勢いそのままに迫っている」
「大丈夫よ。先程の跳躍力で、この棒柵も。えっ?」
「おーっと、テキーロ。どうした、棒柵を前に全く動かない。この間に次々と追い付いた後続たちが棒柵を飛び越えていく~」
「どうしたのテキーロ?ひょっとして、さっき勢い余って、着地で怪我した?」
「ヒヒーン、プルプル」
「そう、やはり私の不運が周りを苦しめるのね」
いやはや。
あの距離を飛び越えて、疲れただけであろう。
馬といえど体力には気をつけてやらねば。
あの者には、そういうことを教えてやらねばな。
勝負も大詰め、最後の直線であるな。
「さぁ、ラストスパートに向け、各馬横並びからのデッドヒート。今、決着!レイヴァンド卿より、結果が発表される模様です」
「1位は、セキトーバ!2位は、0.02秒差でソウコウヒデーン!3位は、2位に0.05秒程遅れて、パイローン!4位は3位に0.02秒程遅れて、ゼツエーイ。5位は見せ場こそ作りはしたが体力切れで大きく遅れてテキーロ。各馬の奮闘に最大限の敬意と賞賛を」
観客席から領民・貴族問わず大きな拍手が巻き起こり、祭りは大盛況で幕を閉じる。
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