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2章 オダ郡を一つにまとめる
86話 デビ家の最期
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息子であるミクロンを攻城戦に送り出し、不安そうにウロウロウロウロとデビ家の治めるマルネキャッスル内にて、忙しなく動いているのは、ミクロン・デビの父であるナノクロン・デビである。
可愛い息子に箔を付けてやろうと2万もの兵を動員した。
その内訳のほとんどが傭兵と奴隷兵であり、ここの動員可能兵数は2千にも満たないのであるが。
慌ただしく、鎧を着た兵士が駆け込んでくる。
「ナノクロン様、ミ、ミ、ミ、ミクロン様が」
「おぉ、流石ミクロンじゃ。我らのマルネキャッスル近くに作られた城など容易く攻略したのであろう。して、何処におる?」
「お討ち死になされました」
「な、な、な、何じゃと!?貴族への礼儀すら弁えておらぬ8歳のガキに殺されたと言うのか。何ということじゃ。ワシのワシの可愛い息子をよくも。サブロー・ハインリッヒーーーーーー!!!!えぇい。こうなればこのワシ自ら打って出てくれるわ」
新たな兵士が慌ただしく駆け込んでくる。
「す、す、す、すぐに城門を閉門しろーーーー。ゴルド・グロスターが攻めてきたぞーーーー」
「ちょうど良いわ。勢いに乗って攻めてきた没落貴族を討ち取って、息子の墓前にその首、捧げてくれるわ」
ナノクロン・デビは、生粋の貴族で、庶民は徹底的に見下し、妻に選んだのも貴族の令嬢という徹底ぶり、その妻もミクロン・デビを産んで、2年目の春、押入り強盗に殺されるという不慮の事故で命を落とした。
一説によると、この頃夫婦仲は良くなく、またミクロン・デビの教育方針を巡って対立していたこともあり、ナノクロン・デビによって暗殺されたと巷では、噂になっていたそうだ。
だが、この噂、実はあながち的外れでも無い。
「ナノクロン様、この人数で野戦などできません。籠城するのです」
「ふざけるな!真の貴族が庶民に近い没落貴族になど負けんわ!はよう、準備せい」
「し、しかし、敵はもう目前です。今から野戦の準備など間に合いません。ここは、籠城して」
「くどいわ!籠城など弱腰で、どうする?貴様らはミクロンが殺されて、何とも思わんのか!」
「か、か、か、悲しいに決まってるじゃ無いですか。だからこそ、だからこそ。今は耐え忍ぶ時なのです」
「えぇい!話にならん!ワシは1人でも外に出るぞ」
その時、外から声が聞こえてきた。
「な、な、な、何だ。あれは!?三角屋根に丸太が付いたのが動いてる」
この兵士が見たのは、古の攻城兵器の1つ、衝車、別名を破城槌という。
サブロー・ハインリッヒがガルディアン王国とマジカル王国の戦争で見たバリスタやカタパルトには数段劣るが今のオダ郡でも作れるのでは無いかと試しに作った試作品であり、これを入れて、10台しか無い貴重な攻城兵器である。
「な、な、な、縄梯子が来るぞ。接敵させるな。縄を切れ」
だが、その間にもじわりじわりと破城槌は、城門へと迫っていた。
この光景を見て、ゴルド・グロスターは笑みを浮かべる。
「ガハハハハ。殿は本当に奇想天外な発想の持ち主よ。このような三角屋根の兵器が。まさか、城門をぶち壊す威力を祠などとは思わんわい。どんどん三角屋根の兵器から目を逸らされるため縄梯子を投げかけよ!」
三角屋根の兵器と聞き、ため息をつきながらグロスター家の騎士爵を賜り騎馬隊の隊長を務めるケイロン・アルペーが言う。
「はぁ。ゴルド様、サブロー様の説明をきちんと聞いておられましたか?これは、三角屋根の兵器ではなく破城槌だと」
「細かいことなど良いでは無いか。脅威と思えぬ間抜けなフォルム。最高では無いか」
破城槌が城門に張り付くと、城門を2度・3度打ち鳴らすと跡形もなく吹き飛んだ。
「な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、何ーーーーーーー!?」
「城門を死守しに。カハッ」
「もう遅い!騎馬隊、隊列を組め!城壁を確保し、縄梯子を登る歩兵を援護せよ!」
城壁は制圧され、弓兵隊が陣を構築、その前に歩兵隊が見事な隊列を組み、ナノクロン・デビの屋敷を取り囲んで行く。
「だから、籠城などせずに野戦だと言ったであろう!」
「こ、こ、こ、こんなの誰がわかるっていうんです!」
「えぇい、こうなっては、1人でも多く道連れにしてくれるわ」
飛び出したナノクロン・デビは、一回りも体格が上の大男にぶつかり、転倒する。
「このデカブツが!ワシを誰だと。このマルネキャッスルの領主ナノクロン・デビと知っての狼藉か!」
「これは失礼した。デビ卿と呼べば良いのか?俺の名は、オルテガ。ゴルド様に仕える歩兵見習いだ」
「見習如きがこの俺の道の邪魔をするな!すぐに斬り殺してくれるわ!」
「うおっ。いきなりかよ。ん?全然、重たい一撃とかじゃねぇんだな」
「見習如きがやるでは無いか。ワシの必殺の一撃を受け止めるとは、だが奥の手とは隠しておくものだ。これで、トドメだ」
ガキーンと弾き飛ばされるナノクロン・デビの刀。
「ひぃっ。こうなったら、ガハッ。な、な、何故」
オルテガは、刀をうまく使えるわけでは無い。
だから、サブロー・ハインリッヒに言われた言葉通りにした。
「斬り払うよりも突けか。サブロー様のお陰で、俺も無事に実践が積めましたよ。敵将、ナノクロン・デビ。ゴルド様が歩兵見習い、オルテガが討ち取ったーーーーー!!!!」
サブロー・ハインリッヒは、例え貴族であろうが容赦なく討ち果たすことを2度も見せつけたのである。
ここに一つの侯爵家が滅亡したのである。
捕虜となった貴族たちは、爵位を取り上げられ、沙汰を待つこととなった。
可愛い息子に箔を付けてやろうと2万もの兵を動員した。
その内訳のほとんどが傭兵と奴隷兵であり、ここの動員可能兵数は2千にも満たないのであるが。
慌ただしく、鎧を着た兵士が駆け込んでくる。
「ナノクロン様、ミ、ミ、ミ、ミクロン様が」
「おぉ、流石ミクロンじゃ。我らのマルネキャッスル近くに作られた城など容易く攻略したのであろう。して、何処におる?」
「お討ち死になされました」
「な、な、な、何じゃと!?貴族への礼儀すら弁えておらぬ8歳のガキに殺されたと言うのか。何ということじゃ。ワシのワシの可愛い息子をよくも。サブロー・ハインリッヒーーーーーー!!!!えぇい。こうなればこのワシ自ら打って出てくれるわ」
新たな兵士が慌ただしく駆け込んでくる。
「す、す、す、すぐに城門を閉門しろーーーー。ゴルド・グロスターが攻めてきたぞーーーー」
「ちょうど良いわ。勢いに乗って攻めてきた没落貴族を討ち取って、息子の墓前にその首、捧げてくれるわ」
ナノクロン・デビは、生粋の貴族で、庶民は徹底的に見下し、妻に選んだのも貴族の令嬢という徹底ぶり、その妻もミクロン・デビを産んで、2年目の春、押入り強盗に殺されるという不慮の事故で命を落とした。
一説によると、この頃夫婦仲は良くなく、またミクロン・デビの教育方針を巡って対立していたこともあり、ナノクロン・デビによって暗殺されたと巷では、噂になっていたそうだ。
だが、この噂、実はあながち的外れでも無い。
「ナノクロン様、この人数で野戦などできません。籠城するのです」
「ふざけるな!真の貴族が庶民に近い没落貴族になど負けんわ!はよう、準備せい」
「し、しかし、敵はもう目前です。今から野戦の準備など間に合いません。ここは、籠城して」
「くどいわ!籠城など弱腰で、どうする?貴様らはミクロンが殺されて、何とも思わんのか!」
「か、か、か、悲しいに決まってるじゃ無いですか。だからこそ、だからこそ。今は耐え忍ぶ時なのです」
「えぇい!話にならん!ワシは1人でも外に出るぞ」
その時、外から声が聞こえてきた。
「な、な、な、何だ。あれは!?三角屋根に丸太が付いたのが動いてる」
この兵士が見たのは、古の攻城兵器の1つ、衝車、別名を破城槌という。
サブロー・ハインリッヒがガルディアン王国とマジカル王国の戦争で見たバリスタやカタパルトには数段劣るが今のオダ郡でも作れるのでは無いかと試しに作った試作品であり、これを入れて、10台しか無い貴重な攻城兵器である。
「な、な、な、縄梯子が来るぞ。接敵させるな。縄を切れ」
だが、その間にもじわりじわりと破城槌は、城門へと迫っていた。
この光景を見て、ゴルド・グロスターは笑みを浮かべる。
「ガハハハハ。殿は本当に奇想天外な発想の持ち主よ。このような三角屋根の兵器が。まさか、城門をぶち壊す威力を祠などとは思わんわい。どんどん三角屋根の兵器から目を逸らされるため縄梯子を投げかけよ!」
三角屋根の兵器と聞き、ため息をつきながらグロスター家の騎士爵を賜り騎馬隊の隊長を務めるケイロン・アルペーが言う。
「はぁ。ゴルド様、サブロー様の説明をきちんと聞いておられましたか?これは、三角屋根の兵器ではなく破城槌だと」
「細かいことなど良いでは無いか。脅威と思えぬ間抜けなフォルム。最高では無いか」
破城槌が城門に張り付くと、城門を2度・3度打ち鳴らすと跡形もなく吹き飛んだ。
「な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、な、何ーーーーーーー!?」
「城門を死守しに。カハッ」
「もう遅い!騎馬隊、隊列を組め!城壁を確保し、縄梯子を登る歩兵を援護せよ!」
城壁は制圧され、弓兵隊が陣を構築、その前に歩兵隊が見事な隊列を組み、ナノクロン・デビの屋敷を取り囲んで行く。
「だから、籠城などせずに野戦だと言ったであろう!」
「こ、こ、こ、こんなの誰がわかるっていうんです!」
「えぇい、こうなっては、1人でも多く道連れにしてくれるわ」
飛び出したナノクロン・デビは、一回りも体格が上の大男にぶつかり、転倒する。
「このデカブツが!ワシを誰だと。このマルネキャッスルの領主ナノクロン・デビと知っての狼藉か!」
「これは失礼した。デビ卿と呼べば良いのか?俺の名は、オルテガ。ゴルド様に仕える歩兵見習いだ」
「見習如きがこの俺の道の邪魔をするな!すぐに斬り殺してくれるわ!」
「うおっ。いきなりかよ。ん?全然、重たい一撃とかじゃねぇんだな」
「見習如きがやるでは無いか。ワシの必殺の一撃を受け止めるとは、だが奥の手とは隠しておくものだ。これで、トドメだ」
ガキーンと弾き飛ばされるナノクロン・デビの刀。
「ひぃっ。こうなったら、ガハッ。な、な、何故」
オルテガは、刀をうまく使えるわけでは無い。
だから、サブロー・ハインリッヒに言われた言葉通りにした。
「斬り払うよりも突けか。サブロー様のお陰で、俺も無事に実践が積めましたよ。敵将、ナノクロン・デビ。ゴルド様が歩兵見習い、オルテガが討ち取ったーーーーー!!!!」
サブロー・ハインリッヒは、例え貴族であろうが容赦なく討ち果たすことを2度も見せつけたのである。
ここに一つの侯爵家が滅亡したのである。
捕虜となった貴族たちは、爵位を取り上げられ、沙汰を待つこととなった。
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