信長英雄記〜かつて第六天魔王と呼ばれた男の転生〜

揚惇命

文字の大きさ
98 / 166
2章 オダ郡を一つにまとめる

98話 揉める連合軍

しおりを挟む
 ナバルとチャルチとマリーカの連合軍とマッサカー・ゲスターは、揉めていた。
 ナバルの代表として、兵を率いているサム・ライが先ず、口を開く。

「今のは何だと聞いている!」

「ゲババババババ。そんなの抜け駆けに決まっているだろう」

 抜け駆けと聞きチャルチの代表として、兵を率いるライアン・プリストという若者が糾弾する。

「ゲスター辺境伯、これは君たちの戦だってことは、わかっているよな?こちらはあくまでも援軍という立ち位置。抜け駆けなんかしなくても、こちらはもう既に、ベア卿とガロリング卿との間で、こちらが被ることについてのやり取りは成立してるのだが、ここに来る時にこの説明はしたよな?聞いてたのか?」

「ゲババババババ。そんなもんは知らん。戦とならば武功をあげるのが武人の務めじゃ」

 今まで黙っていたマリーカの代表として、当主のリチャード・パルケスが口を開く。

「それは、そうだね。で、君は大事な兵士をどれだけ殺して、敵を葬ったんだい?」

「ゲババババババ。見てたのならわかっていよう。0じゃ。してやられたわ。じゃが、次はお前たちと突撃すれば、あんな兵数など踏み潰せるわ」

「はぁ。呆れて物が言えないよ。これは、僕の落ち度だね。犠牲が減るならそれに越したことはないと顔見知りの彼なら降伏を呼びかければと考えたんだからさ。こんな馬鹿だとは思わなかったよ」

「ゲババババババ。口には気をつけるんじゃな。その首、刎ねてやろうか」

 ガキーンと簡単に吹き飛ばされるマッサカー・ゲスター。

「君こそ口に気をつけた方が良い。僕は、かなり怒っている。あのような無駄なことで、兵を失わせた君に対してね。彼らにも守るべき家族がいたということを忘れないことだね」

「フン。偽善者が吠えよって」

 この連合軍は、考えで常に揉めていた。
 セイントクロス教の敬虔な信徒であるリチャード・パルケスは、無駄に流れる血を嫌うあまり、先ずは対話からという姿勢を貫き。
 リチャード・パルケスの甥であり、キチョウ・プリストの兄であるライアン・プリストは、野心が高いが慎重派で何を考えているかわからない。
 サム・ライは、この戦の援軍で手に入れることとなったマーガレット・ハインリッヒのことをデイル・マルの追及で、話してしまった手前、先に確保してしまおうと焦っていて、イライラしている。
 マッサカー・ゲスターは、部下の損害など考えず血に飢えていて。
 こんな奴らの集まりで纏まるはずがない。

「だから、さっきはこんな話の出来ない。ゴホン。作戦の理解できていない男を使者に立てたから失敗したのであって、まだ対話する可能性は残されているはずだよ」

「馬鹿を言うな!これ以上、遅れれば、マーガレットをデイルに取られるだろうが!ここは、対話は無理だったということにして全軍での突撃ということで良いな?」

「ゲババババババ。その方が俺はシンプルで好きだぜ」

「俺は、叔父上の作戦も一理あるし、サム殿の言も一理あるかと。それにこの場では、叔父上が1番位が高いのですから従うべきかと」

 そうこの中では、公爵の位を賜っているリチャード・パルケスが1番貴族の中では偉い。
 だが。

「そんなんじゃダメだよライアン。戦においては、貴族の位なんて、全く意味はない。自分の意見を言わないとね」

 とこのようにリチャード・パルケスは、貴族にしては珍しく位にも囚われない男である。
 だからこそ、惜しい人材である。
 彼が現在敵であることが。

「しかし、貴族は爵位によって、厳格に。何も申すことは、ありません」

「はぁ。サム殿、全軍突撃するとして、あの柵はどうするんです?あのようなものを地面に埋め込んで、気付かれないようにしてるなんて、相当な知恵者が向こうにいるのは明らかですが」

「リチャードよ。そんなものは、一つ一つ斧で壊せば良い!」

「その間にどれだけの兵が死ぬと考えて」

「くどい!貴様らは、ドレッド様に従っておけば良い。そうすれば、デイルの事、どうにかするように説得してやろう」

「はぁ。そんなことこそ今はどうでも良い。それにそうすることで今度はドレッド殿がチャルチと我が郡を利用しようと考えているのは見え見えだ」

「フン!だとしてもお前たちは、もう俺たちに協力したのだ。運命共同体であることは、忘れるなよ?」

「そんなことは、君なんかよりも百も承知さ」

「ゲババババババ。話は一斉攻撃で纏まったようじゃな。では、参るとしようぞ」

「いや、今のでどう纏まったと?マッサカー殿。はぁ。どうして、あんな自分勝手な人間が貴族の位に付けてるのか不思議でならないよ」

「フン!飛び出したあの男を見殺しにできるのかなお優しいリチャードは」

「ぐっ」

 あの融通の効かない男が向かったのは北門の方か。
 良いように向こうの軍師の掌で転がされている気がするよ。
 でも、あんなのでも家族がいるかもしれないし、セイントクロス教の教えは、隣人を愛せよです。
 はぁ。
 全く、若きハインリッヒ卿といい、どうしてオダ郡にはこれほどの人材が埋もれていたんでしょうね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元公務員、辺境ギルドの受付になる 〜『受理』と『却下』スキルで無自覚に無双していたら、伝説の職員と勘違いされて俺の定時退勤が危うい件〜

☆ほしい
ファンタジー
市役所で働く安定志向の公務員、志摩恭平(しまきょうへい)は、ある日突然、勇者召喚に巻き込まれて異世界へ。 しかし、与えられたスキルは『受理』と『却下』という、戦闘には全く役立ちそうにない地味なものだった。 「使えない」と判断された恭平は、国から追放され、流れ着いた辺境の街で冒険者ギルドの受付職員という天職を見つける。 書類仕事と定時退勤。前世と変わらぬ平穏な日々が続くはずだった。 だが、彼のスキルはとんでもない隠れた効果を持っていた。 高難易度依頼の書類に『却下』の判を押せば依頼自体が消滅し、新米冒険者のパーティ登録を『受理』すれば一時的に能力が向上する。 本人は事務処理をしているだけのつもりが、いつしか「彼の受付を通った者は必ず成功する」「彼に睨まれたモンスターは消滅する」という噂が広まっていく。 その結果、静かだった辺境ギルドには腕利きの冒険者が集い始め、恭平の定時退勤は日々脅かされていくのだった。

処理中です...