ヴェスパラスト大陸記

揚惇命

文字の大きさ
60 / 71
最終章 真実をその手に掴み悪を討て

圧倒的な力

しおりを挟む
 スパーダがケルベガーとモスキトを相手に殴り合いを始めた。
「どうしたどうした。捕らえられて腕が鈍ったか?ガハハ」
「言ってくれるなスパーダ」
「ケルベガー、援護するよ」
「良い良い2対1じゃないとな」
 伝説級の魔物であるケルベロスとベルゼブブを相手に神様に近い存在の土蜘蛛が殴りつけている。その様子に目が点になるカイル。大興奮しているオックス。
「アイツがあの時、本気出してたら俺きっと死んでたよな」
「流石、伝説のスパーダ殿。凄すぎるといわざるおえん」
「どうしたどうした。2人がかりでこの程度か。そろそろウォーミングアップは終わったであろう。本気で来い。その女たちを助けたいのならな」
「ぐっ仕方がない。数を増やすぞモスキト」
「あぁ、スパーダ相手に出し惜しみは無理そうだ」
 ケルベガーの頭が3つに分裂。モスキトは身体から蝿を呼び出す。
「ほほぅ。さらに楽しませてくれるか。久々に血が肉が体を震わせて、踊っておるわ」
「これを見ても尚楽しめるお前は本当に化け物だな」
「ケルベガー、援護は任せて」
 ケルベガーの三位一体の噛みつき攻撃をそれぞれの腕で殴りつけ、ケルベガーの援護で突撃してくるモスキトの蝿を叩き落とす。
「アイツ、こんなに強かったのか」
「あれが、かつて伝説と呼ばれし魔人。伝承だと思ってにわかには信じられなかったが実際目にして、真実だと理解した」
 フラワーリーフ王国の元姫たちが大きく伸びをして起きる。
「うーん、ここは、昨晩、ケルが激しくするから気絶しちゃった。ケルーケルー。って、ここ何処よ!」
「あれっお姉ちゃん。モスったら私だけじゃなくてお姉ちゃんにまで手を出したのね。何年経ってもヤンチャさんなんだから。あれっここ何処?」
 2人の目には大きな怪物に殴りつけられているケルベガーとモスキトの姿であった。
「どうしたどうした。蝿女王などと呼ばれている女と契約した魔物!犬母であったか。弱い弱すぎる。野生であった時のお前たちはもっと強かった。そろそろ終わりにしてやろう」
「スパーダのやつ。急に口調を変えてどうした?」
「わからない」
 スパーダの大きな手がケルベガーとモスキトに直撃すると思われたが、2人の前に人間という見た目とは言えなくなった2人が立ち塞がっていた。
「ダイアン、何してるんだ!」
「エスト、どうして?」
「ケルをこれ以上傷付けることは許さない。大事な存在なの。彼が死ぬ時は私も死ぬ時よ」
「モス、もう大丈夫よ。後は私が守ってあげるから」
「ガーハッハッハッ。良い良い。もう良い。俺の友人をここまで愛してくれているのがよもや人間の女とは。実に楽しい余興であった」
「どういうこと?」
「名乗るのが遅くなったな。魔王国で大将軍を務めているスパーダと申す」
「えっ?いつのまにか私たち最前線にいるってこと?どっどっどっどういうことよ!モス、説明しなさいよ」
「ごめん。エストにもうこれ以上、心を殺してほしくなくて、勝手をしてことは謝るよ」
「ケル、貴方。魔王国の大将軍と友人ってどういうことよ!私のことを騙していたの?貴方も他の奴らと一緒だったのね」
「違うダイアン、お前を守るためだ。これ以上、身体を魔物に近づける必要はないんだ。お前は人に戻って良いのだ」
「今更、無理よ。そもそも人に戻れば貴方ともう愛し合えなくなるじゃない。そんなの私耐えられない」
「私も無理よ。ここはみんなでこの危機を切り抜けましょう。そうすればデイモン様が援軍を」
「あの男はお前を利用しているのだ。我々のことなぞ。魔物の王に返り咲くための道具としか思っていない」
「残念だけどケルベガーの言う通りだよ。エスト」
「そんなことない。義父さんがそんな」
 カイルが話に割って入る。
「女なんて道具としか思ってない男のためにどうしてそんなに頑張る?」
「アンタ、誰よ?」
「元レインクラウズクリア王国の王子、カイル・レインだ」
「私にそんな嘘は通用しないわ。残念だったわね。レインクラウズクリア王国に王子なんて居ない。私は元フラワーリーフ王国の姫、ウエストリンギアよ」
「知らないのも無理はない。俺はオズモンド・ピース。いやデイモンと呼べば良いのか。その男の怪しさに気付いた父が母と共に各国への存在をひた隠しにして、育てられたからな」
「いかにも怪しい君の話を鵜呑みにすると思う?」
「本当ですよ」
「母さん!どうしてここに?」
 やってきた女性に驚く2人。
「貴方はレインクラウズクリア王国の元王妃イーリス・レイン。デイモン様に捨てられ豚小屋に落とされたはずの女がどうしてここに?」
「あらあら、口の書き方には気をつけた方が宜しくてよ」
「その耳、その特徴はエルフ?魔物でしたのね!」
「人聞き悪い事言わないでちょうだい。人を愛してしまって、人になりたいと願って、エルフの力を制御した一途な麗しい女性と呼びなさい」
「人と魔物の子がカイルとかいうこの子?そんなことが可能なの?」
「何を言ってるのかしら、貴方たちは自分が魔物化してるなんて思いたいようだけど、ケルベガーやモスキトが貴方たちの心を保つようにそうしてくれてるだけよ。そうよね」
「イーリス様には敵いませんな。認識解除」
「イーリス様にこうしてもう一度会えるとは思いませんでした。御推察の通りです。認識解除」
 魔物化していた2人の姿が人間の姿に戻る。
「どういうこと?」
「ダイアン、騙していて、すまない。俺を救ってくれたお前を守るため。それとデイモンを油断させるため認識魔法をかけて、魔物化しているように見えるようにしていたのだ」
「エスト、ごめん。君が愛おしいからこそ。どうにかして逃げ出せる機会を作りたかったんだ。本当にごめん」
「姉さん」
「どうしたのよエスト。急に甘えちゃって」
「ごめんなさい。ごめんなさい。私が虫を苦手なの知ってて、矢面に立ってくれたんだよね」
「妹を守るのは姉としての務めよ。それに私は今幸せだもの。出会い方はどうであれモスのことが大好きだし。人として魔物の子を埋めてたってことにもなんだが嬉しいし」
「いや、そのことについては、本当に言いづらいんだけど。これ、僕の分身体だから子供じゃないよ。そもそも、着床しないように注意してたからね。ケルベガーはどうだか知らないけどさ」
「俺かて、勿論そうしていた。当然であろう。魔物と人では母体にかかる影響が段違いなのだ。そもそも、あんなところでそんなことをしていたらあの研究クソ野郎に何をされていたかわからんからな」
「大丈夫よ。お互いの愛を認識した今ならね。それより、貴方たちはどうしますか?デイモンの元に戻りますか?それとも、私たちと共に来ますか?」
「ケルと姉さんのいるところが私の居場所」
「ダイアン、その言い方はずるいわ。私もモスやダイアンと一緒に穏やかに暮らせるのでしたら、投降しましょう」
「ありがと。じゃあ、スパーダ。ここは任せるわね」
「御意」
 こうして、人魔三将軍などと呼ばれていた。蝿女王ウエストリンギア・犬母ダイアンサスの2人を降伏させることに成功するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...