ヴェスパラスト大陸記

揚惇命

文字の大きさ
62 / 71
最終章 真実をその手に掴み悪を討て

時間稼ぎ

しおりを挟む
 カイルがイーリスの元に向かう頃、屍王プリンスの率いる屍軍団とスパーダ・オックス率いるオーク・蜘蛛軍団。
「全ての魔物は我らが王デモンズ様に平伏せるがいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ」
「オックス、来るぞ。やることはわかっておるな?」
「時間稼ぎですな」
「うむ。スパイダーたちは、できるだけゾンビを惹きつけよ。決して、噛み付かれてはならんぞ」
「我が親愛なるオークたちよ。武器を槍から長槍へと変えよ。ゾンビどもを決して近づけさせるな」
「アヒャヒャヒャヒャヒャ、みんなみんな殺してやる殺してやるよ。俺がデモンズ様と共に魔物の世界を作るんだ。アヒャヒャヒャヒャヒャ。キマリ、マミ・ユミ・アカリの護衛は任せるぞ」
「仰せのままに」
 攻め寄せるゾンビの頭を狙って長槍を突き刺していくオーク。抜き差しが容易な間は、それで何回も突き刺し、数を減らすが、ゾンビの血によって錆びて抜けなくなる。そんな時のために大量の長槍を用意していた。ゾンビといえど頭蓋骨という致命傷を貫かれれば、もう動くことはできない。魔物同士、相手の弱点など熟知している。オックスの指揮によりオークたちの士気も高い。
「何をやっている馬鹿どもめ。これだから話せぬゾンビは邪魔なのだ。我らが王、プリンス様。あのゾンビどもの不甲斐なさ、甚だ申し訳ない。我らスケルトン隊にお任せくだされ」
「スケイル、失敗したらわかっているな?」
「はっ、豚オークどもを弓にて殲滅するのだ」
「我らの天敵スケルトンか。流石に弓相手に長槍では武が悪い。ゾンビを捨て駒の歩兵として使い。後ろからスケルトンが弓を射るとは、ここにきて連携を取ってきたか」
「オックス様、何か手を打たないと。スケルトンの弓が厄介です」
「わかっている」
「退いてなさい。スライムシールド」
「うおっ。突然目の前に盾が。これでは弓が通らぬではないか。何者だ?」
「誰だとは失礼ね。私こそが魔王国、四天王が1人。怠惰のミューラ、種族はヒューマンスライムよ」
「まさか、かつては敵だったお前に助けられるとはな」
「こっちもアンタを助ける側になるとは思わなかったわよ。カイルちゃんも厄介なこと押し付けてくれるんだから。オックスもスパーダも魔王国に必要な人材って、頭を下げられたら助けるしかないじゃない。あの鬱陶しい弓は私が防いであげるからアンタたちは、引き続き攻め寄せるゾンビを殲滅しなさい」
「うむ。心得た。弓はお任せする」
「クソが何が四天王だ。我らが王、プリンス様は大将軍様なのだ。我は負けるわけには行かんのだ。身体の一部を使った防御の脆弱さ。身をもって知るが良いわ。ありったけの電撃矢を打ち込んでやれ」
「まぁ、そう来るわよね。スライムは水が中に通ってるから電気は弱点だもの。でも、そんなこと四天王の私が対策してないと思ってるのかしら。舐められたものね。スライムシールド」
「馬鹿め。電撃で身を焦がすが良い。なっ何!?」
「電気を通さないようにしてるに決まってるじゃない。このゴムでコーティングしてるのよ。私の服もゴム製なのよ~。残念でした」
「ククク。なら燃やせば良いだけではないか火矢を打ち込め」
「馬鹿はどちらなのかしら」
「足元が疎かやね~」
「糸が絡まって、引っ張られる。なんだこれは?」
「四天王が1人、強欲のマモーネ。カイル様に頼まれて、こっちにきたわ。あらっスパーダ、ゾンビに苦戦するなんてらしくないじゃない?」
「苦戦してるように見えたなら目が曇っているんじゃないか。時間稼ぎをしているのがわからぬとは。お前らが来て計画が台無しだ」
「あらっ時間稼ぎの前に露払いするのが普通ではなくて」
「ああいえばこういう屁理屈の多い女じゃ。だから男が寄り付かんのだ」
「良いもん良いもんカイル様さえ居れば良いもん」
「こんな欲の塊みたいな女まで堕とすとは、アイツ結構すごいんだな」
「貴様らだけで盛り上がりおって、離せ離さぬか」
「ジタバタしてもダメよ。特別製の糸だから。逃げられないし、後は私の餌になるだけだよ」
「貴様、同じ魔物を喰らうと言うのか?全ての魔物は、魔王に従わねばならんのだぞ。魔王は今も昔もデモンズ様1人だ」
「あらあら、あなたの王は、プリンスなんじゃなかったかしら?我らが王とか言ってとわよね。コロコロと自分の中の王を変えるなんて、それが世渡り上手とでも思っているのかしら?それはね。八方美人って言うのよ。なんなら私に命乞いでもしてみる」
「お願いします。助けてください。死にたくないです。我らが王はマリアナ様です」
「アッハッハッハっ、聞いたスパーダ?」
「あぁ、ここまで口から嘘が出てくる魔物は久々だ」
「何を言ってるんでやす。アッシは、マモーネ様とスパーダ様の方も舐めますぜ。兎に角、助けてくだせぇ」
「軽薄な男は信じないことにしてるの。ごめんね~」
「ぎいゃぁーーーーーーーーーーー。パリポリ食べないでーーーーーーーー」
「ご馳走様でしたと」
「あんなのよく食うな」
「あら、意外とスケルトンの骨って美味しいのよ。カルシウムは豊富だし、乳の出も良くなるし、胸も大きくなるしで、一石三鳥なのよ」
「へぇ。それは良いことを聞いた。今度アラクミーに食べさせて、にゅふふ」
「スパーダ、変な顔になってるわよ。怖いんだけど」
「ゴホン。まぁ、計画は狂わされたが救援には感謝する」
 こうして、時間稼ぎには成功するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...