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拝啓、15の君へ
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「私、あなたのことが──」
いつものように目が覚めた。
昼過ぎ。
空いたカップラーメンのゴミ、ペットボトル、捨ててないゴミ袋。
荒れ果てた部屋。
またあの夢か。
くだらない夢。
一ヶ月前、衝動的に仕事を辞めた。
貯金もないのに。
仕事って言っても、フリーターだったけど。
なんとなく、行くのが嫌になって辞めた。
だから、今は無職。
とりあえず、コンビニに行こう。
家に食糧が何もない。
ジーパンにTシャツ。
後ろで一つに結んだだけの髪。
色気も何もあったもんじゃない格好で、外に出た。
まだまだ日差しは厳しい。
アイスでも買おう。
イヤホンを付けて音楽を聴きながら歩いていると、ふわっと良い香りがした。
思わず振り返ると、私と同じ年くらいだろうか、若い女性がいた。
ツヤツヤの黒いロングヘアー。
ピンクのスカートが、柔らかく膨らんでいる。
いいなぁ。
これから彼氏とデートでも行くのだろうか。
思わず、目を細めてしまった。
そして、「あの子」が脳裏に浮かぶ。
馬鹿みたい。
頭を振って、その女性とは反対方向に歩いた。
彼氏はいない。
それどころか、友達もいない。
一人でいるのはもうとっくに慣れた。
彼氏がいたこともあったが、上手くいかなかった。
もう、私はずっと一人だ。
そんな気がしていた。
中学の頃、美術部だった。
他のクラスメイトは、もう彼氏がいる子もいて、みんな恋バナに夢中。
でも私たちは違った。
クラスの隅っこで、絵を描いて、好きなアニメや漫画の話をした。
あの子は親友だった。
黒いロングヘアーを二つ結びにして、制服のスカートは膝下の丈だった。
パンツが見えそうなくらいスカートが短いクラスのギャルとは対照的だった。
お互いに、お互いしか友達がいなかった。
毎日一緒に登下校して、学校が終わった後はその子の家に入り浸った。
私は、その子がいればそれでよかった。
いつからだろう。
その子を意識するようになったのは。
相手は女の子だ。
同性だ。
あれはきっと、初恋だった。
あの子のサラサラの髪。
透き通るような白い肌。
女の子を、好きになってしまった。
よく言われるように、よくある思春期の気の迷い、と言ってしまえばそれまでかもしれない。
でも、確かにあの子が好きだった。
中学三年生になって、お互いに受験生になった。
私は、隣町の公立高校を志望していた。
あの子は、少し遠くの私立高校に行くことになった。
中学の卒業式のあと。
高校に行っても、一緒に遊ぼうね。
そう言うあの子の笑顔が愛しかった。眩しかった。
そして、私は。
やってはいけないことをしてしまった。
「私、あなたのことが、好き」
あの子は困ってた。
でも、
「ありがとう」
そう言ってくれた。
高校に進んでから、自然と会わなくなった。
大学進学を機に、私は引っ越した。
あの子は、今どうしているんだろう。
もう会えない。
「あんた、仕事どうすんの」
口うるさい親からの電話。
「うるさいな、また探すよ」
ブチっと切った。
今は、考えられない。
考えたくない。
もう少し、休んでいたい。
夜中までゲームしたりSNSをぼーっと見て、昼過ぎに起きる生活。
こんな生活、いつまでも続けられない。
でも、今は。
今は、こうしていたい。
甘えかもしれない。
怠けかもしれない。
でも、こうさせてほしい。
わがままだよね。
笑ってよ。
私のこと。
いつものコンビニに向かう途中、またあの女性がいた。
今日は、黒髪を二つ結びにしていた。
「ねえ」
つい、呼び止めそうになった。
あの子なわけ、ないのにな。
「ははは」
乾いた笑いが出た。
でも、なぜだか泣きそうになった。
いつのまにか、雨が降り出していた。
あなたはどこにいるの。
どうしているの。
また笑ってよ。
私のこと馬鹿だなぁって笑ってよ。
ねえ。
また夢を見た。
「ねえ、私、あなたのことが好きだよ」
好きなんだよ。
夢の中で、あの子が笑う。
少しずつ、離れていく。
行かないで。
思わず手を伸ばす。
でも、届かない。
目が覚めると、頬を一筋の涙が伝っていた。
私はずっと、恋している。
あの子の面影に。
今あの子に会えたら、なんて言おう。
きっと素敵な女性になっているだろう。
私とは違って。
私はきっと、ずっとあの頃のまま。
私の時間は止まったまま。
実家に置いてきた卒業アルバム。
捨てちゃおうかな。
ねえ。
元気でやってるかな。
きっと、元気だよね。
まだ中学の頃にとらわれてるなんて、気持ち悪いね。
忘れたいよ。
あなたはきっと、とっくに新しい道へ踏み出していることだろう。
私はずっと、足踏みしたままだよ。
彼氏はできた?
もうすぐ結婚するの?
地元のAちゃんは、今度子供が産まれるらしいよ。
いいよね。
ねえ。
ねえ。
またあの笑顔を見せて。
あの髪に触れたい。
綺麗な肌に触れたい。
それができたら、もうなんにもいらないのに。
神様って残酷。
地元に戻って、あの子の実家に行ってみようかな。
いや、そんなことはできない。
できるわけがないよ。
こんなに会いたいのに。
地元に戻るのが怖い。
同窓会なんて誘われたことないけど、怖くて行けない。
でも、もしもう一度会えたら。
一度だけ、抱きしめさせて。
そして、もう一度伝えたい。
「私、あなたのことが好きだよ」
いつものように目が覚めた。
昼過ぎ。
空いたカップラーメンのゴミ、ペットボトル、捨ててないゴミ袋。
荒れ果てた部屋。
またあの夢か。
くだらない夢。
一ヶ月前、衝動的に仕事を辞めた。
貯金もないのに。
仕事って言っても、フリーターだったけど。
なんとなく、行くのが嫌になって辞めた。
だから、今は無職。
とりあえず、コンビニに行こう。
家に食糧が何もない。
ジーパンにTシャツ。
後ろで一つに結んだだけの髪。
色気も何もあったもんじゃない格好で、外に出た。
まだまだ日差しは厳しい。
アイスでも買おう。
イヤホンを付けて音楽を聴きながら歩いていると、ふわっと良い香りがした。
思わず振り返ると、私と同じ年くらいだろうか、若い女性がいた。
ツヤツヤの黒いロングヘアー。
ピンクのスカートが、柔らかく膨らんでいる。
いいなぁ。
これから彼氏とデートでも行くのだろうか。
思わず、目を細めてしまった。
そして、「あの子」が脳裏に浮かぶ。
馬鹿みたい。
頭を振って、その女性とは反対方向に歩いた。
彼氏はいない。
それどころか、友達もいない。
一人でいるのはもうとっくに慣れた。
彼氏がいたこともあったが、上手くいかなかった。
もう、私はずっと一人だ。
そんな気がしていた。
中学の頃、美術部だった。
他のクラスメイトは、もう彼氏がいる子もいて、みんな恋バナに夢中。
でも私たちは違った。
クラスの隅っこで、絵を描いて、好きなアニメや漫画の話をした。
あの子は親友だった。
黒いロングヘアーを二つ結びにして、制服のスカートは膝下の丈だった。
パンツが見えそうなくらいスカートが短いクラスのギャルとは対照的だった。
お互いに、お互いしか友達がいなかった。
毎日一緒に登下校して、学校が終わった後はその子の家に入り浸った。
私は、その子がいればそれでよかった。
いつからだろう。
その子を意識するようになったのは。
相手は女の子だ。
同性だ。
あれはきっと、初恋だった。
あの子のサラサラの髪。
透き通るような白い肌。
女の子を、好きになってしまった。
よく言われるように、よくある思春期の気の迷い、と言ってしまえばそれまでかもしれない。
でも、確かにあの子が好きだった。
中学三年生になって、お互いに受験生になった。
私は、隣町の公立高校を志望していた。
あの子は、少し遠くの私立高校に行くことになった。
中学の卒業式のあと。
高校に行っても、一緒に遊ぼうね。
そう言うあの子の笑顔が愛しかった。眩しかった。
そして、私は。
やってはいけないことをしてしまった。
「私、あなたのことが、好き」
あの子は困ってた。
でも、
「ありがとう」
そう言ってくれた。
高校に進んでから、自然と会わなくなった。
大学進学を機に、私は引っ越した。
あの子は、今どうしているんだろう。
もう会えない。
「あんた、仕事どうすんの」
口うるさい親からの電話。
「うるさいな、また探すよ」
ブチっと切った。
今は、考えられない。
考えたくない。
もう少し、休んでいたい。
夜中までゲームしたりSNSをぼーっと見て、昼過ぎに起きる生活。
こんな生活、いつまでも続けられない。
でも、今は。
今は、こうしていたい。
甘えかもしれない。
怠けかもしれない。
でも、こうさせてほしい。
わがままだよね。
笑ってよ。
私のこと。
いつものコンビニに向かう途中、またあの女性がいた。
今日は、黒髪を二つ結びにしていた。
「ねえ」
つい、呼び止めそうになった。
あの子なわけ、ないのにな。
「ははは」
乾いた笑いが出た。
でも、なぜだか泣きそうになった。
いつのまにか、雨が降り出していた。
あなたはどこにいるの。
どうしているの。
また笑ってよ。
私のこと馬鹿だなぁって笑ってよ。
ねえ。
また夢を見た。
「ねえ、私、あなたのことが好きだよ」
好きなんだよ。
夢の中で、あの子が笑う。
少しずつ、離れていく。
行かないで。
思わず手を伸ばす。
でも、届かない。
目が覚めると、頬を一筋の涙が伝っていた。
私はずっと、恋している。
あの子の面影に。
今あの子に会えたら、なんて言おう。
きっと素敵な女性になっているだろう。
私とは違って。
私はきっと、ずっとあの頃のまま。
私の時間は止まったまま。
実家に置いてきた卒業アルバム。
捨てちゃおうかな。
ねえ。
元気でやってるかな。
きっと、元気だよね。
まだ中学の頃にとらわれてるなんて、気持ち悪いね。
忘れたいよ。
あなたはきっと、とっくに新しい道へ踏み出していることだろう。
私はずっと、足踏みしたままだよ。
彼氏はできた?
もうすぐ結婚するの?
地元のAちゃんは、今度子供が産まれるらしいよ。
いいよね。
ねえ。
ねえ。
またあの笑顔を見せて。
あの髪に触れたい。
綺麗な肌に触れたい。
それができたら、もうなんにもいらないのに。
神様って残酷。
地元に戻って、あの子の実家に行ってみようかな。
いや、そんなことはできない。
できるわけがないよ。
こんなに会いたいのに。
地元に戻るのが怖い。
同窓会なんて誘われたことないけど、怖くて行けない。
でも、もしもう一度会えたら。
一度だけ、抱きしめさせて。
そして、もう一度伝えたい。
「私、あなたのことが好きだよ」
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