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第17話
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翌日、俺は色々と準備をしていた。
というのも、これから涼子の両親と会うのだ。
昨日別れたあと、涼子は早速例のお土産を両親に食べて貰ったらしい。
そして俺のことを話した結果、すぐにでも会って話がしたいとのことだった。
俺は年がら年中ある意味暇なので、いつでも良いと返事をしたところ、昨日の今日ということになった。
それぐらい切羽詰まっているのかもしれないな。
場所はここーー俺の実家である。
俺が出向こうかと言ったのだが、あっちから来ると強く言われた。
どうやら農場も見てみたいとのことだ。
まぁそれならそれで別に構わないので、来客の準備をせっせとしているというわけだ。
俺の両親にもそのことを伝えていて、目的もきちんと話した。
特に反対されることも無く、むしろこれできちんとした収入を得られることを喜んでくれている。
ちなみに探索者資格を取ったことも話してある。
この件も何か止められるようなことはなかった。
これが高校卒業したばかりとかならともかく、32のいい歳した大人だからな。
そうこうしているうちに、そろそろ約束の時間になる。
すると「神谷青果店」とロゴの入った車が近づいて来るのが見える。
「龍一さん!お待たせしました!」
「いらっしゃい。涼子さんのご両親も御足労いただき申し訳ありません」
「いやいやいや!僕たちが来るのは当然ですよ!」
「その通りです。うちの涼子がご迷惑をおかけしたみたいでごめんなさい」
「迷惑だなんて思っていませんよ。立ち話もあれなんでこちらへどうぞ」
リビングのソファーに3人を座らせて、自己紹介をする。
涼子の父親が「正さん」、母親が「唯さん」
どちらも物腰の柔らかく、良い人そうだ。
そのあと、タイミングを見てうちの両親も挨拶に来た。
その容姿の若々しさに当然のように驚く。
涼子から俺の年齢なんかは聞いているだろうから、どう考えても若すぎるように見えるのだろう。
この辺の事情は涼子は知っているので今更リアクションは起こさない。
「お互い紹介も済んだところで今回の件の話をしたいと思いますが、その前に正さんと唯さん、それと親父とお袋にも聞いて貰いたいことがあります」
「ん?どうした龍一。そんな改まって」
「どうしたの?」
「実は俺は重大な秘密を抱えている」
「「?」」
「考えようによっては大したことでもないんだが.......そうだな。まずはダンジョンについてだがどれぐらい知っている?」
「ダンジョンか?中に化け物がいて、放っておくと溢れてくるから自衛隊とか探索者の人達が駆除してるんだろ?それでたまに肉とかが出てきてそれが話題になってることぐらいか」
「私もそれぐらいかしら」
「正さんと唯さんはどうですか?」
「僕も同じくらいの認識ですね」
「私もです」
ダンジョンに特に興味もない人達の認識は概ね似たようなものだ。
魔物肉のことを知っているのは助かるな。
「その肉なんだけど、食べるとどうなるかって知ってるよな?」
「なんか美容や健康にえらく良いって聞くな」
親父がそう答える。
他の3人も同じようだ。
「それなんだが、親父とお袋には心当たりがあるんじゃないかな?」
「「え?」」
「俺がこっちに帰ってきてちょっとした頃を思い出して欲しい」
「「あっ!」」
どうやらピンと来たようだ。
「もしかしてあの時龍一が持ってきた肉がその肉だってことか?」
「そうだな」
「でもそれっておかしいわよ。ダンジョンって今年出来たものじゃない」
「それが今から話す内容はそれに関係している」
俺は親父とお袋、そして涼子の両親にもこの3年間のことを話した。
うちの両親には正直遅いぐらいだ。
涼子の両親にも詳細を明かさずに魔野菜を売るのは生産者としてできない。
それなら俺の事情を理解してもらっている方がやりやすいし、涼子とダンジョンアタックすることを考えても黙っている訳にはいかなかった。
以前の達郎や涼子と同様に、俺が話している間は誰も声を出さない。
その顔は困惑と驚愕に溢れていたが。
ある程度話終えて一息つくと、お袋が口を開いた。
「そういう事だったのね。たまに龍一がふらっといなくなる時があったから」
「こっちの時間だと山に行って帰ってきただけだけど」
「俺達が若返ったのもそういう理由か」
「そうだな」
親父とお袋は全てに納得したようだ。
普通は信じられないことだがダンジョンという現実にある存在がその疑いの気持ちを消す。
正さんと唯さんはどうだろうか。
「龍一君。君のことはわかったよ。気になるのは、あの魔野菜というのは食べ続けても大丈夫なのかな?」
正さんはそっちにいくのか。
確かにここに来た理由でもあるからな。
「何か健康に悪影響があるということは今のところありませんね。既に魔物肉そのものは出回っていますし、そういったことは聞いたことがないです。どちらかといえば元気になるというか.......目の前の2人がその結果ではあるんですが。それに、俺が出会ったテトラという自称神様からいくら食べても全く問題ないというお墨付きを貰っています」
テトラと最後に会った時にこの辺のことは聞いておいた。
タイミング的にはかなり今更ではあったのだが。
「そうなのか.......なら、お受けさせて貰っても良いかなーーこの話」
「良いんですか?」
「構わないよ。他に何か手段もないし、元はと言えば僕の責任だ。それに、あの野菜や果物は本当に美味しかった。それこそ今まで食べてきたものはなんだったんのかというくらいに。だから、僕は賭けてみようと思う」
「そうですか。わかりました。これから宜しくお願いします」
「こちらこそお世話になるよ。僕達と.......涼子のことを宜しくお願いします」
「はい。任されました」
お互いに硬い握手を交わす。
涼子はその様子を見てニコニコしている。
「それでは、ここからは仕事の話となる訳ですが.......俺としてはタダで卸しても良いと思ってます」
「そうですよね.......あれだけのって、ただぁ?それは不味いよ!」
「ははは、冗談ですよ。まぁ俺は本当にタダでもいいとは思っていたのですが、正さんはそれで納得はしないでしょう」
「そ、そうだね」
「そこでご相談なんですがーー」
俺が提案したのはまず、実際に店頭で販売する価格だ。
そのどれもが同品種のものに比べて数十倍の値段だった。
法外な価格かと思われるかもしれないが、俺は魔野菜の品質には絶対の自信を持っている。
魔石を肥料に混ぜることはできても所詮そこ止まり。
俺の真似をすることができるのは皆無だし、今後現れるかどうかもわからない。
例えば涼子が貪り食っていた苺だが、ものによっては1粒数万円というのが実際に存在する。
俺は食べたことないが、それと遜色ないレベルのはものだと思うし、副次効果を考えれば価値はもっと高いのではないかと思っている。
そして、俺の利益はその売上の数パーセントを貰うというものだ。
「ものは良いので買う人は絶対にいると思います。例えば松茸なんてあれだけで数万円するでしょう?それでも買う人は買うわけです。噂が広がれば星付きのレストランなんかも来るかもしれません。あ、もし俺のところに直接連絡が来ても神谷青果店以外には卸すつもりがないので安心していください」
「そう.......だね。下手な値段で出してしまえば値上げはし辛くなるし。もし上手くいかない時は相談することにするよ」
「お願いします」
こうして、神谷青果店繁盛計画はスタートしたのだった。
というのも、これから涼子の両親と会うのだ。
昨日別れたあと、涼子は早速例のお土産を両親に食べて貰ったらしい。
そして俺のことを話した結果、すぐにでも会って話がしたいとのことだった。
俺は年がら年中ある意味暇なので、いつでも良いと返事をしたところ、昨日の今日ということになった。
それぐらい切羽詰まっているのかもしれないな。
場所はここーー俺の実家である。
俺が出向こうかと言ったのだが、あっちから来ると強く言われた。
どうやら農場も見てみたいとのことだ。
まぁそれならそれで別に構わないので、来客の準備をせっせとしているというわけだ。
俺の両親にもそのことを伝えていて、目的もきちんと話した。
特に反対されることも無く、むしろこれできちんとした収入を得られることを喜んでくれている。
ちなみに探索者資格を取ったことも話してある。
この件も何か止められるようなことはなかった。
これが高校卒業したばかりとかならともかく、32のいい歳した大人だからな。
そうこうしているうちに、そろそろ約束の時間になる。
すると「神谷青果店」とロゴの入った車が近づいて来るのが見える。
「龍一さん!お待たせしました!」
「いらっしゃい。涼子さんのご両親も御足労いただき申し訳ありません」
「いやいやいや!僕たちが来るのは当然ですよ!」
「その通りです。うちの涼子がご迷惑をおかけしたみたいでごめんなさい」
「迷惑だなんて思っていませんよ。立ち話もあれなんでこちらへどうぞ」
リビングのソファーに3人を座らせて、自己紹介をする。
涼子の父親が「正さん」、母親が「唯さん」
どちらも物腰の柔らかく、良い人そうだ。
そのあと、タイミングを見てうちの両親も挨拶に来た。
その容姿の若々しさに当然のように驚く。
涼子から俺の年齢なんかは聞いているだろうから、どう考えても若すぎるように見えるのだろう。
この辺の事情は涼子は知っているので今更リアクションは起こさない。
「お互い紹介も済んだところで今回の件の話をしたいと思いますが、その前に正さんと唯さん、それと親父とお袋にも聞いて貰いたいことがあります」
「ん?どうした龍一。そんな改まって」
「どうしたの?」
「実は俺は重大な秘密を抱えている」
「「?」」
「考えようによっては大したことでもないんだが.......そうだな。まずはダンジョンについてだがどれぐらい知っている?」
「ダンジョンか?中に化け物がいて、放っておくと溢れてくるから自衛隊とか探索者の人達が駆除してるんだろ?それでたまに肉とかが出てきてそれが話題になってることぐらいか」
「私もそれぐらいかしら」
「正さんと唯さんはどうですか?」
「僕も同じくらいの認識ですね」
「私もです」
ダンジョンに特に興味もない人達の認識は概ね似たようなものだ。
魔物肉のことを知っているのは助かるな。
「その肉なんだけど、食べるとどうなるかって知ってるよな?」
「なんか美容や健康にえらく良いって聞くな」
親父がそう答える。
他の3人も同じようだ。
「それなんだが、親父とお袋には心当たりがあるんじゃないかな?」
「「え?」」
「俺がこっちに帰ってきてちょっとした頃を思い出して欲しい」
「「あっ!」」
どうやらピンと来たようだ。
「もしかしてあの時龍一が持ってきた肉がその肉だってことか?」
「そうだな」
「でもそれっておかしいわよ。ダンジョンって今年出来たものじゃない」
「それが今から話す内容はそれに関係している」
俺は親父とお袋、そして涼子の両親にもこの3年間のことを話した。
うちの両親には正直遅いぐらいだ。
涼子の両親にも詳細を明かさずに魔野菜を売るのは生産者としてできない。
それなら俺の事情を理解してもらっている方がやりやすいし、涼子とダンジョンアタックすることを考えても黙っている訳にはいかなかった。
以前の達郎や涼子と同様に、俺が話している間は誰も声を出さない。
その顔は困惑と驚愕に溢れていたが。
ある程度話終えて一息つくと、お袋が口を開いた。
「そういう事だったのね。たまに龍一がふらっといなくなる時があったから」
「こっちの時間だと山に行って帰ってきただけだけど」
「俺達が若返ったのもそういう理由か」
「そうだな」
親父とお袋は全てに納得したようだ。
普通は信じられないことだがダンジョンという現実にある存在がその疑いの気持ちを消す。
正さんと唯さんはどうだろうか。
「龍一君。君のことはわかったよ。気になるのは、あの魔野菜というのは食べ続けても大丈夫なのかな?」
正さんはそっちにいくのか。
確かにここに来た理由でもあるからな。
「何か健康に悪影響があるということは今のところありませんね。既に魔物肉そのものは出回っていますし、そういったことは聞いたことがないです。どちらかといえば元気になるというか.......目の前の2人がその結果ではあるんですが。それに、俺が出会ったテトラという自称神様からいくら食べても全く問題ないというお墨付きを貰っています」
テトラと最後に会った時にこの辺のことは聞いておいた。
タイミング的にはかなり今更ではあったのだが。
「そうなのか.......なら、お受けさせて貰っても良いかなーーこの話」
「良いんですか?」
「構わないよ。他に何か手段もないし、元はと言えば僕の責任だ。それに、あの野菜や果物は本当に美味しかった。それこそ今まで食べてきたものはなんだったんのかというくらいに。だから、僕は賭けてみようと思う」
「そうですか。わかりました。これから宜しくお願いします」
「こちらこそお世話になるよ。僕達と.......涼子のことを宜しくお願いします」
「はい。任されました」
お互いに硬い握手を交わす。
涼子はその様子を見てニコニコしている。
「それでは、ここからは仕事の話となる訳ですが.......俺としてはタダで卸しても良いと思ってます」
「そうですよね.......あれだけのって、ただぁ?それは不味いよ!」
「ははは、冗談ですよ。まぁ俺は本当にタダでもいいとは思っていたのですが、正さんはそれで納得はしないでしょう」
「そ、そうだね」
「そこでご相談なんですがーー」
俺が提案したのはまず、実際に店頭で販売する価格だ。
そのどれもが同品種のものに比べて数十倍の値段だった。
法外な価格かと思われるかもしれないが、俺は魔野菜の品質には絶対の自信を持っている。
魔石を肥料に混ぜることはできても所詮そこ止まり。
俺の真似をすることができるのは皆無だし、今後現れるかどうかもわからない。
例えば涼子が貪り食っていた苺だが、ものによっては1粒数万円というのが実際に存在する。
俺は食べたことないが、それと遜色ないレベルのはものだと思うし、副次効果を考えれば価値はもっと高いのではないかと思っている。
そして、俺の利益はその売上の数パーセントを貰うというものだ。
「ものは良いので買う人は絶対にいると思います。例えば松茸なんてあれだけで数万円するでしょう?それでも買う人は買うわけです。噂が広がれば星付きのレストランなんかも来るかもしれません。あ、もし俺のところに直接連絡が来ても神谷青果店以外には卸すつもりがないので安心していください」
「そう.......だね。下手な値段で出してしまえば値上げはし辛くなるし。もし上手くいかない時は相談することにするよ」
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