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続編2 北支部の戦い
鬼市の世界
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二人が戻る姿を見ながら、
向井は鬼市の石塀に寄りかかった。
牧野君は良くも悪くも優しすぎる。
寿尊さん家族がどのように育ててきたのかよく分かる。
時には正義は邪魔をする。
輪鬼さんの言う通り、
今の日本では牧野君はどちらにしても生き残れなかった。
どの位経っただろう。
牧野は袖で涙をぬぐうと立ち上がった。
怒りの目で向井を睨むと近づき、思いっきり拳を向けた。
バキッッッ!!!
向井の横の石がへこみ穴が開く。
「気がすみましたか? 」
向井はそう言うと霊玉を取り出し、牧野の割れた拳を修復した。
「俺だって、俺だって分かってんだよ!
だけど我慢できないんだよ。
何でいつも子供が汚い大人の犠牲になんだよ」
捨てられた自分の事も重なるのだろう。
怒りに震えた押し殺すような声に、
「その為に俺達はいるんですよ。
そんな子供を作らない為にね。
牧野君は輪鬼さん達の住む世界のルールを、
自分の押し付けで破ったんです。
鬼市はあの世の市場です。
俺達が好き勝手にできる場所ではありません」
と向井は静かに言った。
「!! 」
牧野が唇を噛んだ。
「輪鬼さんが大人で、クロが冥王の名を出したことで、
牧野君は地獄に落とされることなく、ここに戻ってこれました。
俺が牧野君を鬼市に入れたくなかったのは、
彼らにも譲れない世界がそこにあり、
それは牧野君には受け入れられない現実だと分かっていたからです。
冥王を思い出してください。
本来なら冥界が下界に口をはさむことは処罰の対象になります。
無法者のそしりを受けても日本の為に、
冥王は盾になってくれています。
この世界がどんなに汚い大人達の集まりでも、
少なくとも冥王は尊敬できるでしょう? 」
「………」
黙り込む牧野に笑うと、
「自分達で悪霊を呼び込んで騒ぐんです。
俺の生まれた国であっても嫌になるくらいですよ。
冥王は史上空前の悪評高い神になっています。
子供を守りたかったら、
俺達が国を取り戻さなくては。
牧野君も黒谷君に言ってたじゃないですか」
黙り込んでいた牧野が口を開いた。
「………オヤジに感謝しろってか? 」
「イヤですか? 牧野君を何より守ってくれる頼れる親ですよ」
「………ふん、感謝するくらいタダだからな」
ムスッと話す牧野の肩を抱くと、
「ハンバーグを食べるんでしょ」
と言って一緒に歩き出した。
坂下がクロと休憩所に入ると、
黒谷達が驚いたように名前を呼んだ。
「クロ? どうしたの? 」
アンが言うと、
「ちょっと知り合いに会いに来たら、
坂下達を見つけたんでな」
「向井君達は? 」
早紀が二人を見た。
「ちょっと除去の方が手間取ってて、
もうすぐ来るよ。
僕達だけ先に戻ってきたんだ」
「そうなんだ」
新田が頷き、坂下がテーブルに近づき皆の食事をのぞいた。
向井は鬼市の石塀に寄りかかった。
牧野君は良くも悪くも優しすぎる。
寿尊さん家族がどのように育ててきたのかよく分かる。
時には正義は邪魔をする。
輪鬼さんの言う通り、
今の日本では牧野君はどちらにしても生き残れなかった。
どの位経っただろう。
牧野は袖で涙をぬぐうと立ち上がった。
怒りの目で向井を睨むと近づき、思いっきり拳を向けた。
バキッッッ!!!
向井の横の石がへこみ穴が開く。
「気がすみましたか? 」
向井はそう言うと霊玉を取り出し、牧野の割れた拳を修復した。
「俺だって、俺だって分かってんだよ!
だけど我慢できないんだよ。
何でいつも子供が汚い大人の犠牲になんだよ」
捨てられた自分の事も重なるのだろう。
怒りに震えた押し殺すような声に、
「その為に俺達はいるんですよ。
そんな子供を作らない為にね。
牧野君は輪鬼さん達の住む世界のルールを、
自分の押し付けで破ったんです。
鬼市はあの世の市場です。
俺達が好き勝手にできる場所ではありません」
と向井は静かに言った。
「!! 」
牧野が唇を噛んだ。
「輪鬼さんが大人で、クロが冥王の名を出したことで、
牧野君は地獄に落とされることなく、ここに戻ってこれました。
俺が牧野君を鬼市に入れたくなかったのは、
彼らにも譲れない世界がそこにあり、
それは牧野君には受け入れられない現実だと分かっていたからです。
冥王を思い出してください。
本来なら冥界が下界に口をはさむことは処罰の対象になります。
無法者のそしりを受けても日本の為に、
冥王は盾になってくれています。
この世界がどんなに汚い大人達の集まりでも、
少なくとも冥王は尊敬できるでしょう? 」
「………」
黙り込む牧野に笑うと、
「自分達で悪霊を呼び込んで騒ぐんです。
俺の生まれた国であっても嫌になるくらいですよ。
冥王は史上空前の悪評高い神になっています。
子供を守りたかったら、
俺達が国を取り戻さなくては。
牧野君も黒谷君に言ってたじゃないですか」
黙り込んでいた牧野が口を開いた。
「………オヤジに感謝しろってか? 」
「イヤですか? 牧野君を何より守ってくれる頼れる親ですよ」
「………ふん、感謝するくらいタダだからな」
ムスッと話す牧野の肩を抱くと、
「ハンバーグを食べるんでしょ」
と言って一緒に歩き出した。
坂下がクロと休憩所に入ると、
黒谷達が驚いたように名前を呼んだ。
「クロ? どうしたの? 」
アンが言うと、
「ちょっと知り合いに会いに来たら、
坂下達を見つけたんでな」
「向井君達は? 」
早紀が二人を見た。
「ちょっと除去の方が手間取ってて、
もうすぐ来るよ。
僕達だけ先に戻ってきたんだ」
「そうなんだ」
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