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続編 怨霊塚
「黒谷の年末年始」
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「えっ? 妖怪も結婚するの? 」
黒谷が目を見開いた。
「するわよ。生きてるものはみんな同じ。
家庭を持つ妖怪もいれば独身もいる。
チビの場合は分からないけどね。
妖怪は長生きだから、
子供時代も長いし百年以上先だろうけど。
同じ種族で好きな人が現れれば、
そういう事もあるかもしれない。
でも、冥界暮らしだから虎獅狼達みたいに、
ずっと居座るかもしれないし」
「大丈夫だよ。今の所パパのお嫁さんになるらしいから」
新田が言い、みんなが笑う姿に向井は苦笑いした。
「冥界は時がないから、
魂が消えるまでいられるけど、
住む以上は何かしらお仕事しないとね。
虎獅狼達も作品作ってるでしょ。
まぁ、趣味が仕事になってるんだから羨ましい限りよ」
「そうそう。この前さ。
クロ君と安達君が二人で作品の納品に来てね。
その時にクロ君が作った、
立体の羊毛フェルトの人形を買ってくれたお客さんがいて、
その人に紹介したら恥ずかしがって安達君の後ろに隠れて、
ペコッと頭を下げてた。
何か意外過ぎて笑っちゃったんだけどね」
黒谷がケーキを食べながら話した。
「それね。相当嬉しかったんだと思いますよ。
工房で教わっている作家の堤さんに報告してましたから」
向井も珈琲を一口飲んで言った。
「ああやって見てると、
普通の高校生くらいにしか見えないんだけどね」
「そうよね。うちにいる妖怪は穏やかだから、
自然と人間に溶け込めちゃうのよ。
でも全部の妖怪が彼らと同じじゃないから、
気を付けなさいよ」
トリアが注意した。
「この辺は捨て地なので間引かれてしまうので、
虎獅狼達のような妖怪しか住めませんけど、
人間ではないですから」
「分かった」
黒谷は頷くと向井を見た。
「黒谷君は年末年始どうするの? 」
坂下が聞いた。
「休むよ。俺も年だからね」
「何言ってんのよ。まだ三十代でしょ」
「そうなんだけど、もう半ばだからね。
疲れが取れなくなってきたんだよ。
捨て地の平均寿命でいったらあと二十年もないよ」
「玲子さん達が聞いたら怒りますよ」
「ハハハ」
黒谷は笑うと、
「明日はこの団地の集会所で年越しそばを作って、
食べたい人には集まってもらうことになってるの」
「そうなんですね」
「昔はさ~年末年始と言えば、
おせちとか日本の風習が普通だったでしょう。
今はないからさ」
「あ~そうですね。
松やお飾りもしないお家が増えてますからね。
これも数年前にメディアが余るおせちの問題を取り上げて、
ある議員がおせちの食品ロスだって、
日本食はいらない問題がでたんですよ。覚えていませんか? 」
向井が皆の顔を見た。
「………あ~あったね」
新田が思い出したように頷いた。
「まぁね。日本人も少なくなってたし、
日本食も本来の和食は消えてるからね。
だから捨て地では日本文化を残す活動をしてるのよ」
トリアが口を開いた。
「そっか。捨て地は日本の伝統は残してるから、
年越しそばやおせちを楽しみにしている外国人もいるな。
ここはひとり者も多いし、えっと、どこの国だったかな。
ヨーロッパから書道を習いに来て、
この団地に越してきた男性がいるの」
「へえ~」
新田が驚いたように頷いた。
「俺と年は変わらないんだけど、
年越しそばを食べたことないって言うんで、
だったらみんなで食べようかって話になったの」
「じゃあ、今年は賑やかだね」
坂下が微笑んだ。
「そうだね」
黒谷も笑顔になるとケーキを食べた。
黒谷が目を見開いた。
「するわよ。生きてるものはみんな同じ。
家庭を持つ妖怪もいれば独身もいる。
チビの場合は分からないけどね。
妖怪は長生きだから、
子供時代も長いし百年以上先だろうけど。
同じ種族で好きな人が現れれば、
そういう事もあるかもしれない。
でも、冥界暮らしだから虎獅狼達みたいに、
ずっと居座るかもしれないし」
「大丈夫だよ。今の所パパのお嫁さんになるらしいから」
新田が言い、みんなが笑う姿に向井は苦笑いした。
「冥界は時がないから、
魂が消えるまでいられるけど、
住む以上は何かしらお仕事しないとね。
虎獅狼達も作品作ってるでしょ。
まぁ、趣味が仕事になってるんだから羨ましい限りよ」
「そうそう。この前さ。
クロ君と安達君が二人で作品の納品に来てね。
その時にクロ君が作った、
立体の羊毛フェルトの人形を買ってくれたお客さんがいて、
その人に紹介したら恥ずかしがって安達君の後ろに隠れて、
ペコッと頭を下げてた。
何か意外過ぎて笑っちゃったんだけどね」
黒谷がケーキを食べながら話した。
「それね。相当嬉しかったんだと思いますよ。
工房で教わっている作家の堤さんに報告してましたから」
向井も珈琲を一口飲んで言った。
「ああやって見てると、
普通の高校生くらいにしか見えないんだけどね」
「そうよね。うちにいる妖怪は穏やかだから、
自然と人間に溶け込めちゃうのよ。
でも全部の妖怪が彼らと同じじゃないから、
気を付けなさいよ」
トリアが注意した。
「この辺は捨て地なので間引かれてしまうので、
虎獅狼達のような妖怪しか住めませんけど、
人間ではないですから」
「分かった」
黒谷は頷くと向井を見た。
「黒谷君は年末年始どうするの? 」
坂下が聞いた。
「休むよ。俺も年だからね」
「何言ってんのよ。まだ三十代でしょ」
「そうなんだけど、もう半ばだからね。
疲れが取れなくなってきたんだよ。
捨て地の平均寿命でいったらあと二十年もないよ」
「玲子さん達が聞いたら怒りますよ」
「ハハハ」
黒谷は笑うと、
「明日はこの団地の集会所で年越しそばを作って、
食べたい人には集まってもらうことになってるの」
「そうなんですね」
「昔はさ~年末年始と言えば、
おせちとか日本の風習が普通だったでしょう。
今はないからさ」
「あ~そうですね。
松やお飾りもしないお家が増えてますからね。
これも数年前にメディアが余るおせちの問題を取り上げて、
ある議員がおせちの食品ロスだって、
日本食はいらない問題がでたんですよ。覚えていませんか? 」
向井が皆の顔を見た。
「………あ~あったね」
新田が思い出したように頷いた。
「まぁね。日本人も少なくなってたし、
日本食も本来の和食は消えてるからね。
だから捨て地では日本文化を残す活動をしてるのよ」
トリアが口を開いた。
「そっか。捨て地は日本の伝統は残してるから、
年越しそばやおせちを楽しみにしている外国人もいるな。
ここはひとり者も多いし、えっと、どこの国だったかな。
ヨーロッパから書道を習いに来て、
この団地に越してきた男性がいるの」
「へえ~」
新田が驚いたように頷いた。
「俺と年は変わらないんだけど、
年越しそばを食べたことないって言うんで、
だったらみんなで食べようかって話になったの」
「じゃあ、今年は賑やかだね」
坂下が微笑んだ。
「そうだね」
黒谷も笑顔になるとケーキを食べた。
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