『アンダーワールド・続編』冥王VS人間~魑魅魍魎の戦が今始まる~

八雲翔

文字の大きさ
202 / 642
番外編 新たな動き

虎獅狼のお買い物

しおりを挟む
暫くして冥界に戻ると、

「お帰り~」

セイがカウンターからフェムトンと一緒に、

顔を出した。

「ただいま戻りました」

向井が言うと、

「あれ? 二人だけ? 牧野君達は? 」

とセイが新田の顔を見ながら聞いた。

「お昼食べたらまた寝ちゃったんで、

黒谷君にお願いしといた」

「全く………チビじゃあるまいし」

新田の説明にフェムトンがため息をついた。

「俺も仮眠取ってきたから頭はすっきり~

仕事しないとね」

新田が伸びをしながら言うと、

「明日の分までエナトが仕分けしたから、

新田君はお休みよ」

「えっ? ほんとう? 」

フェムトンの言葉に新田が嬉しそうに笑った。

「チビ達は? 向井さんが帰ってきたのに、

迎えに来ないね」

新田が廊下を見回した。

「今、プールに入ってるよ。

朝起きたらパパがいないって、

向井さんの部屋まで覗きに行って、

大騒ぎだったんだけどね。

源じいがプールに入ろうって、

冥王とドセと一緒に遊んでる」

セイがそんな話をしてると、

早紀がこんを連れてやってきた。

「ほら、帰って来たじゃない」

こんが走ってくると向井に抱きついた。

「遅くなってごめんね」

向井が抱き上げると、

こんは何も言わずに首に抱きついた。

「プールに入ってるんじゃないの? 」

向井が聞くと、こんは首を振っただけで何も言わなかった。

「じゃあ、みんなに内緒でおやつ食べちゃおうか」

向井が笑いかけると、

こんが顔をあげて笑顔になった。

「何買ってきたの? 」

セイが向井の持つ袋を覗きながら、

一緒に休憩室に向かった。

早紀がそんな後姿を見ながら、

新田達に説明する。

「こんは親とはぐれたって言ったでしょう。

あれね、母親が目の前から突然消えたらしいのよ」

「えっ? 」

新田とフェムトンが驚いた。

「こんが保護された時って、地震が増えてきて、

冥界ここでも………今の黒地に結界張って、

悪霊除去してた時があったでしょう。

その時に運が悪く消去された妖怪もいるらしいの。

向井君が冥王から言われて、

私もこんの様子を見るようにしてたんだけどね。

三鬼も未だにうなされてるし」

早紀の話にフェムトンも考え込むように話し出した。

「そうよね。こんが来た時は三鬼がいたから、

二人でいつも寄り添って寝てたものね。

呉葉が来て明るくなったし、

自分というものも出てきて、

よくなったかなとは思ってたんだけど、

やっぱり難しいわね」

「こんにとって向井さんは安心できる存在ってわけか。

安達君もそうだし、向井さんは大変だ」

新田も腕を組むとため息をついた。

「まぁね~考えてても仕方がないし、

私達もおやつにしようか。

うるさいチビがいない間に~」

フェムトンはおどけて笑うと、三人も休憩室に歩いて行った。


休憩室ではトリアと虎獅狼、クロが何やら話していた。

こんは向井の膝に座って、

お土産のマフィンを食べて落ち着いていた。

「何見てるの? 」

新田がトリア達が見ているタブレットに視線を落とした。

「ん? これからちょっと画材を買いに行くことになって。

向井君もシーリングスタンプが欲しいから、

一緒に行こうって話してたの」

「新田君も珈琲でいい? 」

早紀が聞くと、

「いいよ~悪いね」

と言って、向井の横に座った。

「こんもいくよ~」

「えっ? そうなの? パパとお出かけしたのがばれたら、

皆に文句言われちゃうよ」

トリアがお菓子を食べながら話す嬉しそうなこんを見た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

恋人が聖女のものになりました

キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」 聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。 それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。 聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。 多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。 ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……? 慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。 従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。 完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。 菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。 小説家になろうさんでも投稿します。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

美人な姉と『じゃない方』の私

LIN
恋愛
私には美人な姉がいる。優しくて自慢の姉だ。 そんな姉の事は大好きなのに、偶に嫌になってしまう時がある。 みんな姉を好きになる… どうして私は『じゃない方』って呼ばれるの…? 私なんか、姉には遠く及ばない…

勝手にしろと言われたので、勝手にさせていただきます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
子爵家の私は自分よりも身分の高い婚約者に、いつもいいように顎でこき使われていた。ある日、突然婚約者に呼び出されて一方的に婚約破棄を告げられてしまう。二人の婚約は家同士が決めたこと。当然受け入れられるはずもないので拒絶すると「婚約破棄は絶対する。後のことなどしるものか。お前の方で勝手にしろ」と言い切られてしまう。 いいでしょう……そこまで言うのなら、勝手にさせていただきます。 ただし、後のことはどうなっても知りませんよ? * 他サイトでも投稿 * ショートショートです。あっさり終わります

名もなき民の戦国時代

のらしろ
ファンタジー
 徹夜で作った卒論を持って大学に向かう途中で、定番の異世界転生。  異世界特急便のトラックにはねられて戦国時代に飛ばされた。  しかも、よくある有名人の代わりや、戦国武将とは全く縁もゆかりもない庶民、しかも子供の姿で桑名傍の浜に打ち上げられる。  幸いなことに通りかかった修行僧の玄奘様に助けられて異世界生活が始まる。  でも、庶民、それも孤児の身分からの出発で、大学生までの生活で培った現代知識だけを持ってどこまで戦国の世でやっていけるか。  とにかく、主人公の孫空は生き残ることだけ考えて、周りを巻き込み無双していくお話です。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...