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第一部

悪霊退治にも申請書?

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「今夜はこれで終了~

札が無くなった~」

冥界札は除去課のスタッフのみ、

死神課から配布される。

「これって面倒なんだよな。

書類書いて申請出してからじゃないと、

もらえないんだもん」

「えっ? そうなの? 」

田所が聞いた。

「札と鬼籍は繋がってて、

札が消えると霊も消滅されるから、

鬼籍の名前も消滅されるわけ。

だから一体で一札? 

しかもその数で給料が決まる歩合制よ。

田所さんたちは固定給だからいいけどさ。

俺たちは下界にいる時間も長いから、

お金は必要なわけ。

なのに経費は下りないしさ」

牧野は銜えていた菓子パンを口に放り込んだ。

「特例って、今十二人しかいないじゃん。

こんだけ悪霊だらけなのにさ、

除去課のスタッフは俺を入れてたった三人。

しかも残りの二人は、北と西。

これってブラックよ」

それでも除去課は最大スタッフ数になっている。

田所の消去課もスタッフがもう一人いるだけ。

これも配達課から受け取った霊魂を、

消去する事務仕事なので、

スタッフが少なくても何とかなっている。

なのに、派遣課に至っては向井のみ。

派遣霊が増えているのに、

中央から動けないのは、

ここに理由がある。

心残りの強い霊魂は、

向井の霊的波動に引き寄せられて、

自分から移動してくるものもいる。

反対に順番待ちでサロンにいる間に、

再生への道を選ぶものもいる。

霊魂もそれぞれである。


「そういや、焼却課は二人で焼いてるんだよね。

あそこはシニアの部署だから、

源じいと真紀子さんだっけ? 」

田所が聞いた。

源太郎さんは八十六歳で亡くなったのだが、

残りの寿命が十年あるので、

焼却課にいる。

真紀子さんも五十八歳で死亡したが、

残り寿命が二十年ある。


「源じいは今が楽しいんだってさ。

死んだ後の体は痛みも取ってもらえるし、

食事もうまいって。いいよなぁ」

「老人に悪霊に向かって走れって言えるか? 

言えないだろ? 適材適所」

田所が言った。

「それにしても、牧野君はさすがですよ。

あの素早さ。俺には無理です」

向井の言葉に、

「そ、そうかなぁ~」

牧野が照れたように言う。

「さあ、仕事が終わったんなら酒飲もう」

田所が両手を上げて伸びをした。

「あのふらついてる霊魂はどうするんだよ」

「今ので危険な悪霊は大方いなくなったし、

明日でいいでしょう。

働きすぎは体に毒」

向井は牧野の肩をたたいて、

飲み屋に向かった。
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