8 / 349
第一部
悪霊退治にも申請書?
しおりを挟む
「今夜はこれで終了~
札が無くなった~」
冥界札は除去課のスタッフのみ、
死神課から配布される。
「これって面倒なんだよな。
書類書いて申請出してからじゃないと、
もらえないんだもん」
「えっ? そうなの? 」
田所が聞いた。
「札と鬼籍は繋がってて、
札が消えると霊も消滅されるから、
鬼籍の名前も消滅されるわけ。
だから一体で一札?
しかもその数で給料が決まる歩合制よ。
田所さんたちは固定給だからいいけどさ。
俺たちは下界にいる時間も長いから、
お金は必要なわけ。
なのに経費は下りないしさ」
牧野は銜えていた菓子パンを口に放り込んだ。
「特例って、今十二人しかいないじゃん。
こんだけ悪霊だらけなのにさ、
除去課のスタッフは俺を入れてたった三人。
しかも残りの二人は、北と西。
これってブラックよ」
それでも除去課は最大スタッフ数になっている。
田所の消去課もスタッフがもう一人いるだけ。
これも配達課から受け取った霊魂を、
消去する事務仕事なので、
スタッフが少なくても何とかなっている。
なのに、派遣課に至っては向井のみ。
派遣霊が増えているのに、
中央から動けないのは、
ここに理由がある。
心残りの強い霊魂は、
向井の霊的波動に引き寄せられて、
自分から移動してくるものもいる。
反対に順番待ちでサロンにいる間に、
再生への道を選ぶものもいる。
霊魂もそれぞれである。
「そういや、焼却課は二人で焼いてるんだよね。
あそこはシニアの部署だから、
源じいと真紀子さんだっけ? 」
田所が聞いた。
源太郎さんは八十六歳で亡くなったのだが、
残りの寿命が十年あるので、
焼却課にいる。
真紀子さんも五十八歳で死亡したが、
残り寿命が二十年ある。
「源じいは今が楽しいんだってさ。
死んだ後の体は痛みも取ってもらえるし、
食事もうまいって。いいよなぁ」
「老人に悪霊に向かって走れって言えるか?
言えないだろ? 適材適所」
田所が言った。
「それにしても、牧野君はさすがですよ。
あの素早さ。俺には無理です」
向井の言葉に、
「そ、そうかなぁ~」
牧野が照れたように言う。
「さあ、仕事が終わったんなら酒飲もう」
田所が両手を上げて伸びをした。
「あのふらついてる霊魂はどうするんだよ」
「今ので危険な悪霊は大方いなくなったし、
明日でいいでしょう。
働きすぎは体に毒」
向井は牧野の肩をたたいて、
飲み屋に向かった。
札が無くなった~」
冥界札は除去課のスタッフのみ、
死神課から配布される。
「これって面倒なんだよな。
書類書いて申請出してからじゃないと、
もらえないんだもん」
「えっ? そうなの? 」
田所が聞いた。
「札と鬼籍は繋がってて、
札が消えると霊も消滅されるから、
鬼籍の名前も消滅されるわけ。
だから一体で一札?
しかもその数で給料が決まる歩合制よ。
田所さんたちは固定給だからいいけどさ。
俺たちは下界にいる時間も長いから、
お金は必要なわけ。
なのに経費は下りないしさ」
牧野は銜えていた菓子パンを口に放り込んだ。
「特例って、今十二人しかいないじゃん。
こんだけ悪霊だらけなのにさ、
除去課のスタッフは俺を入れてたった三人。
しかも残りの二人は、北と西。
これってブラックよ」
それでも除去課は最大スタッフ数になっている。
田所の消去課もスタッフがもう一人いるだけ。
これも配達課から受け取った霊魂を、
消去する事務仕事なので、
スタッフが少なくても何とかなっている。
なのに、派遣課に至っては向井のみ。
派遣霊が増えているのに、
中央から動けないのは、
ここに理由がある。
心残りの強い霊魂は、
向井の霊的波動に引き寄せられて、
自分から移動してくるものもいる。
反対に順番待ちでサロンにいる間に、
再生への道を選ぶものもいる。
霊魂もそれぞれである。
「そういや、焼却課は二人で焼いてるんだよね。
あそこはシニアの部署だから、
源じいと真紀子さんだっけ? 」
田所が聞いた。
源太郎さんは八十六歳で亡くなったのだが、
残りの寿命が十年あるので、
焼却課にいる。
真紀子さんも五十八歳で死亡したが、
残り寿命が二十年ある。
「源じいは今が楽しいんだってさ。
死んだ後の体は痛みも取ってもらえるし、
食事もうまいって。いいよなぁ」
「老人に悪霊に向かって走れって言えるか?
言えないだろ? 適材適所」
田所が言った。
「それにしても、牧野君はさすがですよ。
あの素早さ。俺には無理です」
向井の言葉に、
「そ、そうかなぁ~」
牧野が照れたように言う。
「さあ、仕事が終わったんなら酒飲もう」
田所が両手を上げて伸びをした。
「あのふらついてる霊魂はどうするんだよ」
「今ので危険な悪霊は大方いなくなったし、
明日でいいでしょう。
働きすぎは体に毒」
向井は牧野の肩をたたいて、
飲み屋に向かった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる