上 下
118 / 352
第四部

冥界食堂

しおりを挟む
食堂に入ると、

今日は珍しく人数が多かった。

ランチという事もあるのだが、

配膳アニマルロボットと一緒に、

ドセとセーズが動き回っていた。

牧野はすでにランチとスイーツを並べて、

交互に食べている。

「凄い食べ合わせですね」

佐久間が笑いながら言った。

ここにきて派遣霊の優香が、

パティシエとして入ったので、

甘党の牧野と安達が一番喜んでいるのかもしれない。

暇があれば食堂で優香にリクエストしていた。

向井達が空いている席に座ると、

ドセが注文を取りに来た。

「今日は混んでますね」

「そうなんですよ。でもね、

お目当てはスイーツみたいで、

忙しいのは優香さんかな」

「そうなの? 」

佐久間が周囲を見回した。

「冥王も優香さんが来て喜んでるし、

僕たちはお菓子作りは得意じゃないから」

ドセはそう説明して笑った。

「で、今日は炒飯と餃子のセットか、

ペペロンチーノのパスタになります。

どちらにします? 」

「俺はご飯が食べたいから、

炒飯のセットにします」

向井が言うと、

「俺も」

「私も」

と佐久間達も同じものを注文した。

「このところ悪霊が大きくなってる気がするよね」

ドセが厨房に戻るのを見てエルフが言った。

「街の移り変わりが激しくなると、

気の流れが変わるから、

仕方がないのかもしれないね」

オクトが椅子の背にもたれかかった。

「向井さん」

食事を終えたディッセが近づいてきた。

「どうでした? 」

「悪霊ね………」

向井はタブレットを開くと、

霊の出没ポイントに印をつけた画面を見せた。

ディッセは隣のテーブルから椅子を持ってくると、

腰かけた。

「ふぅ~ん………この場所を調査してみるか。

じゃないと詳細は分からないな………」

口に指をあてて考え込むと、

画面をじっと見つめた。

「霊が増えている理由って、

もう分かってるの? 」

オクトが聞く。

「いや………ただね………

ちょっと気になることがあってさ」

「どっちにしても、

このまま悪霊の数が増え続けると、

この状態はきついよ。

原因が分かれば対処できるけど」

「そうですよね。

あの新しい悪霊玉の数が増えれば、

牧野君の負担も少なくなると思うから、

俺達もヘルプに入りやすくなりますけどね」

向井がそういったところで、

ランチが運ばれてきた。

セーズが並べている間、

ディッセはタブレットを見て考え込んでいたが、

「とりあえずこの報告書は、

冥王のデスクに転送しておいてくれる? 」

と向井を見て言った。

「分かりました」

その返事に、ディッセは食堂を出て行った。

「なんか………悪霊の動きを見てると…

嫌な流れなんだよね」

オクトはそういいながらランチを食べ始めた。

「二年前の災害が続いていた時も、

こんな感じの空気で、

暫くしておさまったんだけど………

あの時と似てるよな」

そんな話を聞きながら、向井もレンゲを持った。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

小説家として生きる

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:49pt お気に入り:1

オトコの娘にはオトコの娘をぶつけるんだよぉぉ!!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:320pt お気に入り:2

勇者と3人の英雄

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:0

大学生の義姉さん達ともう遅い

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:0

【短編完結】魔法の花は婚約破棄と共に新しく咲き乱れる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7,259pt お気に入り:47

撃ち落とせ、花火

青春 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:0

異世界バーテンダー。冒険者が副業で、バーテンダーが本業ですので、お間違いなく。

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,315pt お気に入り:377

処理中です...