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第四部
底無しの獅子
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グワァァァ~~~~
うぎゃぁぁぁ~~~~~~
冥界中に響き渡る獅子の叫びと霊の悲鳴に、
冥界にいる者たちは瞬間、恐怖に体が震えた。
冥王室にいた向井とアートンは、
その声に部屋を出た。
「底無しの獅子か………馬鹿が」
後から出てきた冥王はそう呟くと、
手のひらから光の矢を放ち、
冥界を包んだ。
その光は瞬時に広がり、
何事もなかったかのように、
全ての空間を穏やかな空気に戻した。
「何だったんだ? 」
牧野も休憩室から出てきてあたりを見渡す。
「今の何? 」
早紀も食堂から顔を出し、
サロンや工房からも霊達が顔をのぞかせた。
その時、
「わあぁぁぁ~」
悲鳴のような泣き声が聞こえ、
妖鬼とディッセがチビ達を抱きながら、
あやすように歩いてきた。
子供にはあの断末魔のような悲鳴は、
恐怖以外の何ものでもなかったのだろう。
癇癪を起したような泣き声に、
向井達も飛んできた。
「あの声は私たち以上に、
子供の耳にはおぞましかったと思いますよ。
モスキート音のように、
頭の中に飛び込んできたんでしょう」
冥王も急ぎ足でやってくると、
暴れて泣くチビ達の頭に光を当て眠らせた。
するとクタ~ッと力が抜けたようになり、
妖鬼とディッセの腕の中で眠りについた。
「暫く医務室で眠らせておいてあげてください。
それとアートンは子供霊のいるホームの方を、
一応確認してください。
あそこはここの結界とは別なので、
大丈夫だとは思いますけど、
分かりませんから」
「はい」
アートンが別棟のホームの方へ向かった。
「安達君が下界で助かりました。
いたら恐らく、
子供達と同じで倒れてたでしょうからね」
「じゃあ、俺達はチビを寝かせてくるから」
妖鬼はそういって、
ディッセと一緒に医務室に向かった。
「安達君は仕事ですか? 」
「いえ、弥生ちゃんとイベントの買い出しです。
黒谷君のコラボ弁当も、
皆に味見して欲しいそうで、
それも持って帰ってきますよ」
「ねえ~今のなんだったの? 」
早紀と牧野が走ってきた。
「大丈夫ですよ。霊電も集めてるでしょう。
悪霊が暴れたんだと思います」
「俺、背筋に冷たいもんが走ったぞ。
ガキが怖がるの無理ねえよ」
「えっ? そう? 」
「お前が鈍いんだよ。俺なんか、
いつもあんなの相手にしてんだぞ」
そういうと、
「もう少し寝てこよう」
牧野は伸びをしながら休憩室に戻っていった。
「じゃあ、向井君は、
今起こったことで少し話があるから」
冥王はそういうと、
向井を連れて執務室へと歩いて行った。
「ふう~」
早紀がため息をついたところで、
「今、凄い音がしたけどあれ何? 」
真紀子が焼却室の方から走ってきた。
「源じいはやはり耳が遠いのかしらね。
あまり感じなかったみたい」
「何でもないんだって。ほら、
ここって悪霊集めてたりするじゃん」
「ああ、そういうこと。
すぐに戻ったから、
大丈夫かなとは思ったんだけど安心した。
はあ~
私も少し疲れたから休憩しよう」
「あっ、私も珈琲飲みかけ」
早紀は思い出したように言うと、
真紀子と笑いながら食堂に歩き出した。
冥王は特別室の通路に向うと、
扉の前で立ち止まった。
向井はドアの前に立つ獅子の姿に、
思わず後ずさった。
「大丈夫ですよ。この子は門番です。
見張りとして空間を移動しています。
私の部下には何もしません」
冥王が獅子に触れると、
獅子は透明になり消えていった。
扉の前が黒い負の塊で覆われている。
冥王は手のひらから光の杖を出すと、
塊を消滅させ、
新たに結界をはった。
「今のはなんですか? 」
向井が聞くと、
「おそらくルール違反を犯したものが、
獅子に食われたのです。
ここは冥界だという事を忘れてはいけません」
向井はこの時、
佐々木は獅子に食われたことを確信した。
うぎゃぁぁぁ~~~~~~
冥界中に響き渡る獅子の叫びと霊の悲鳴に、
冥界にいる者たちは瞬間、恐怖に体が震えた。
冥王室にいた向井とアートンは、
その声に部屋を出た。
「底無しの獅子か………馬鹿が」
後から出てきた冥王はそう呟くと、
手のひらから光の矢を放ち、
冥界を包んだ。
その光は瞬時に広がり、
何事もなかったかのように、
全ての空間を穏やかな空気に戻した。
「何だったんだ? 」
牧野も休憩室から出てきてあたりを見渡す。
「今の何? 」
早紀も食堂から顔を出し、
サロンや工房からも霊達が顔をのぞかせた。
その時、
「わあぁぁぁ~」
悲鳴のような泣き声が聞こえ、
妖鬼とディッセがチビ達を抱きながら、
あやすように歩いてきた。
子供にはあの断末魔のような悲鳴は、
恐怖以外の何ものでもなかったのだろう。
癇癪を起したような泣き声に、
向井達も飛んできた。
「あの声は私たち以上に、
子供の耳にはおぞましかったと思いますよ。
モスキート音のように、
頭の中に飛び込んできたんでしょう」
冥王も急ぎ足でやってくると、
暴れて泣くチビ達の頭に光を当て眠らせた。
するとクタ~ッと力が抜けたようになり、
妖鬼とディッセの腕の中で眠りについた。
「暫く医務室で眠らせておいてあげてください。
それとアートンは子供霊のいるホームの方を、
一応確認してください。
あそこはここの結界とは別なので、
大丈夫だとは思いますけど、
分かりませんから」
「はい」
アートンが別棟のホームの方へ向かった。
「安達君が下界で助かりました。
いたら恐らく、
子供達と同じで倒れてたでしょうからね」
「じゃあ、俺達はチビを寝かせてくるから」
妖鬼はそういって、
ディッセと一緒に医務室に向かった。
「安達君は仕事ですか? 」
「いえ、弥生ちゃんとイベントの買い出しです。
黒谷君のコラボ弁当も、
皆に味見して欲しいそうで、
それも持って帰ってきますよ」
「ねえ~今のなんだったの? 」
早紀と牧野が走ってきた。
「大丈夫ですよ。霊電も集めてるでしょう。
悪霊が暴れたんだと思います」
「俺、背筋に冷たいもんが走ったぞ。
ガキが怖がるの無理ねえよ」
「えっ? そう? 」
「お前が鈍いんだよ。俺なんか、
いつもあんなの相手にしてんだぞ」
そういうと、
「もう少し寝てこよう」
牧野は伸びをしながら休憩室に戻っていった。
「じゃあ、向井君は、
今起こったことで少し話があるから」
冥王はそういうと、
向井を連れて執務室へと歩いて行った。
「ふう~」
早紀がため息をついたところで、
「今、凄い音がしたけどあれ何? 」
真紀子が焼却室の方から走ってきた。
「源じいはやはり耳が遠いのかしらね。
あまり感じなかったみたい」
「何でもないんだって。ほら、
ここって悪霊集めてたりするじゃん」
「ああ、そういうこと。
すぐに戻ったから、
大丈夫かなとは思ったんだけど安心した。
はあ~
私も少し疲れたから休憩しよう」
「あっ、私も珈琲飲みかけ」
早紀は思い出したように言うと、
真紀子と笑いながら食堂に歩き出した。
冥王は特別室の通路に向うと、
扉の前で立ち止まった。
向井はドアの前に立つ獅子の姿に、
思わず後ずさった。
「大丈夫ですよ。この子は門番です。
見張りとして空間を移動しています。
私の部下には何もしません」
冥王が獅子に触れると、
獅子は透明になり消えていった。
扉の前が黒い負の塊で覆われている。
冥王は手のひらから光の杖を出すと、
塊を消滅させ、
新たに結界をはった。
「今のはなんですか? 」
向井が聞くと、
「おそらくルール違反を犯したものが、
獅子に食われたのです。
ここは冥界だという事を忘れてはいけません」
向井はこの時、
佐々木は獅子に食われたことを確信した。
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