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第五部

安達の青い鳥

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「いきなりプールって言われてびっくりしたけど、

ゴムプール用意してたら、

セイ達も入りたいって言いだして」

笑いながら言った。

「でさ、結局超特大型プールを、

用意する羽目になったよ」

「あっ、妖鬼さん」

その声に三人が振り返った。

「あの様子じゃ、

いずれは大きなプールを作らないと、

ダメかもね~」

妖鬼はため息まじりに笑った。

チビと冥王と牧野、セイが楽しそうに泳いでいる。

「チビにオシッコされないといいけどね」

妖鬼の言葉に、

「えっ? 」

三人もプールを見て大笑いした。


――――――――


向井はトレーニングルームを出て、

図書室に入ると、

ハンモックに揺られて眠る佐久間と、

夢中になって本を読んでいる安達がいた。

最近童話にハマっているようだ。

読み終わったのか本を閉じて、

ボ~ッと遠くを見る安達に、

向井は近づいて行った。

本を見て、

「青い鳥を読んでいたんですか? 」

向井の声に気づくと振り返った。

「うん。ここにも青い鳥はいる? 」

「安達君はどう思う? 」

向井の問いにしばらく考えていたが、

ゆっくり話し出した。

「う~ん………俺、幸せって何かわかんない。

お父さんとお母さんは………俺の事、

怖いから要らない子って言った………

お母さんは俺がいなければ幸せになれるって。

だから、お父さんが一人で暮らせって、

マンションをくれた」

向井は安達のハンモックの横に座ると、

話を黙って聞いていた。

「幸せって………俺がいなければいいのかな。

俺が欲しいと思うから、お父さんとお母さんは、

逃げたの? 」

安達が向井を見た。

「安達君には少し人と違う、

だけど人を守れる力がある。

でもね、

人は理解できないことに直面すると、

見えなくなっちゃうんです。

ご両親と安達君の幸せは、

ちょっと方向が違っちゃったのかな。

安達君はここにいてどうですか? 

楽しいですか? 」

「うん」

「だったら、

青い鳥はここにいると思いますよ。

安達君が自分で見つけてごらん」

「青い鳥って鳥? 」

「どうだろう。どんな形をしているんだろうね」

「う~~ん」

安達の考える姿に微笑むと、

「そうだ。トレーニングルームに行ってごらん。

牧野君達がプールで遊んでいますよ」

「プール? 」

安達の顔が輝いた。

「でも、水着ない………」

「トレーニングルームにあるから、

着替えて遊んでおいでよ」

向井の言葉に、

安達は嬉しそうに図書室を駆けだしていった。

「向井さんは一人一人相手をよく見ていますよね。

私は苦手なので、見えなくなっちゃうタイプです」

佐久間がハンモックに揺られながら笑った。

「起きてたんですか? 」

「安達君が自分のことを話すなんて、

珍しいから邪魔してはいけないと思って。

考えながら一生懸命話してましたね」

「俺も冥王から簡単な説明を受けてはいたんですけど、

親から拒否されてしまった子は、

愛情も幸せも知らないから、

与え方も分からないんだと、

安達君を見て感じました」

「でも、今の安達君はそこにいるだけで、

皆を幸せにしていると私は思います」

「そうですね」

二人はそんな話をしながら、

安達が去っていった方向を見ていた。
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